蓮水桜子

本の話をしたりしなかったり。

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    あまり明るくはない日記です。

記事一覧

日記 親友と死について

昨日のことを思い出すとき、凄く時間が経ったように感じる。あの本を読んだのはもう三日も前なのか、と思ってしまう。そんな風に毎日は終わっていくから、遥か遠くにあるよ…

蓮水桜子
2日前
14

『バリ山行』松永K三蔵

わたしにしては珍しく、芥川賞作品を早めに読むことができた。とか言ってもう8月も終わるので、早いかどうかは微妙なところだけど。 『バリ山行』は山岳小説だ。山登りの…

蓮水桜子
5日前
18

『夏の裁断』島本理生

島本理生は『ファーストラヴ』で直木賞を受賞した作家だが、芥川賞の候補にも何度か選ばれていて、この『夏の裁断』は芥川賞の候補だった。 候補になったのは『夏の裁断』…

蓮水桜子
2週間前
14

『背高泡立草』古川真人

いやあ、久しぶりに時間がかかった読書だった。そして久しぶりに芥川賞作品を読んだ。やっぱり分かりやすい面白さではないけれど、噛み砕いて噛み砕いて味が出るみたいな、…

蓮水桜子
1か月前
11

わたしのためのヘアドネーション

高校二年生の修学旅行(2022年10月頃)からずっと伸ばし続けていた髪の毛を切った。伸ばした髪は31センチに達していたので、それをヘアドネーションすることにした。 髪の毛…

蓮水桜子
1か月前
20

『もういちど生まれる』朝井リョウ

小学四年生のとき、突然児童文庫に飽きてしまった。そんなときに図書館で借りたのが朝井リョウの『世界地図の下書き』だった。挿絵のない本を読んだのは多分あれが初めてだ…

蓮水桜子
1か月前
17

『生のみ生のままで』綿矢りさ

『インストール』『蹴りたい背中』『ひらいて』。わたしが読んできた綿矢りさの作品の舞台は全て学校だった。もっと言えば高校。これまでの綿矢りさの印象は、「高校生の女…

蓮水桜子
1か月前
21

ふと出会う文章 文芸誌の魅力

わたしが初めて文芸誌を買ったのは高校一年生のころだったと思う。河出書房新社が出している「文藝」が文芸誌との出会いだった。特集が「金原ひとみ責任編集・私小説」の回…

蓮水桜子
1か月前
57

小市民たるもの、決して

小市民シリーズ最終巻である『冬期限定ボンボンショコラ事件』を読み終え、数日が経った。夏からはアニメも始まる小市民。動く小鳩くんと小佐内さんが待ち遠しい。 作者の…

蓮水桜子
1か月前
23

『先生と僕』坂木司

双葉文庫が40周年ということで、記念カバーになったものが本屋にずらりと並んでいた。その中で私は坂木司『先生と僕』が気になったので読んでみた。 ところで記念カバーっ…

蓮水桜子
2か月前
15

『ぼくの短歌ノート』穂村弘

昨年初めて歌集というものに出会った。そのときは短歌の楽しみ方をよく知らなかった。音が楽しいとか、視点が面白いとかそれくらいで、他は自分の感覚で読んでいた。 それ…

蓮水桜子
2か月前
26

『麦ふみクーツェ』いしいしんじ

いしいしんじの『麦ふみクーツェ』を読んだ。私はいしいさんの作品を読むのは初めてで、最初はその不思議な世界観に戸惑った。やがて吹奏楽の話が出てきて、自分も吹奏楽を…

蓮水桜子
3か月前
18

大河ドラマ「光る君へ」の話

今まで大河ドラマを見たことがなかったのですが、吉高由里子さんが主演すると聞いて、初めて大河ドラマに触れました。今では毎週日曜日を心待ちにするくらい見入っています…

蓮水桜子
3か月前
48

『生きる演技』町屋良平

俳優はカメラの前で「カット」の一声がかかるまで別の人格を演じる。では、普通に過ごしているわれわれは?生きるとき、誰だって無意識に自分を演じているのではないだろう…

蓮水桜子
4か月前
11

『八月の御所グラウンド』万城目学

どうでもいいけれど、高校に入るまで彼のことを「まんじょうめがく」と読んでいたことをここで告白する。なんですか、まんじょうめって。あと、がくでもなかった。 『八月…

蓮水桜子
4か月前
22

日記 04/06

2024/04/06 カーテンを開けていないから本当の天気は分からないけれど、今日は多分晴れだ。朝の光がいつもよりも眩しい、凄く明るい。でもこの明るさは雪の白かもしれない…

蓮水桜子
4か月前
15
日記 親友と死について

日記 親友と死について

昨日のことを思い出すとき、凄く時間が経ったように感じる。あの本を読んだのはもう三日も前なのか、と思ってしまう。そんな風に毎日は終わっていくから、遥か遠くにあるような死ってやつは、案外近くにいるのかもしれないね。

わたしはまだ身近な人の死を経験したことがない。たばこの匂いのする祖父が死んだとき、わたしは生まれていたけれど、まだ自意識が芽生えていなかった。葬式のときにおもちゃ付きのお菓子を母に買って

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『バリ山行』松永K三蔵

『バリ山行』松永K三蔵

わたしにしては珍しく、芥川賞作品を早めに読むことができた。とか言ってもう8月も終わるので、早いかどうかは微妙なところだけど。

『バリ山行』は山岳小説だ。山登りの描写はくどいと感じるほど細かく、用具などの専門用語も飛び交う。内容は全然違うけれど、読んでる感触は『ブラックボックス』に似ていると思った。

最近の芥川賞の中では珍しい直球な純文学だと感じた。人称をいじったり、現代を風刺したり、当事者性を

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『夏の裁断』島本理生

『夏の裁断』島本理生

島本理生は『ファーストラヴ』で直木賞を受賞した作家だが、芥川賞の候補にも何度か選ばれていて、この『夏の裁断』は芥川賞の候補だった。
候補になったのは『夏の裁断』のみだが、文庫になるときに続編と言える「秋の通り道」「冬の沈黙」そして「春の結論」が収録された。

正直、「夏の裁断」はよく分からなかった。分からなかったというのは内容のことではなくて、主人公の感情の部分だ。どうしてこんな煮え切らない態度を

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『背高泡立草』古川真人

『背高泡立草』古川真人

いやあ、久しぶりに時間がかかった読書だった。そして久しぶりに芥川賞作品を読んだ。やっぱり分かりやすい面白さではないけれど、噛み砕いて噛み砕いて味が出るみたいな、そういう旨みのある小説が選ばれるなと思った。

『背高泡立草』について書くとき、構成については触れざるを得ないだろう。全部で九章あるうちの四章分は、本筋の草刈りとは違う話が挟まれる。スピンオフみたいな。
最初、知らずに読んでいたので戸惑った

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わたしのためのヘアドネーション

わたしのためのヘアドネーション

高校二年生の修学旅行(2022年10月頃)からずっと伸ばし続けていた髪の毛を切った。伸ばした髪は31センチに達していたので、それをヘアドネーションすることにした。

髪の毛はわたしにとって「どうでもいいもの」だった。友達が髪の毛のケアだったり、アイロンで巻いていたりする横で、本当にぼっさぼさの頭のまま学校に通っていた。

そんなわたしも修学旅行のときくらいは綺麗な格好をして写真に写りたいと思って、

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『もういちど生まれる』朝井リョウ

『もういちど生まれる』朝井リョウ

小学四年生のとき、突然児童文庫に飽きてしまった。そんなときに図書館で借りたのが朝井リョウの『世界地図の下書き』だった。挿絵のない本を読んだのは多分あれが初めてだと思う。読み切った達成感でわたしはレベルアップした、と思った。読書は幼い頃から続いている趣味だけど、朝井リョウがいなかったら、ここまで本を好きにならなかったかもしれない。

すっかり純文学好きになったわたしは、所謂エンタメ小説を読む機会が減

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『生のみ生のままで』綿矢りさ

『生のみ生のままで』綿矢りさ

『インストール』『蹴りたい背中』『ひらいて』。わたしが読んできた綿矢りさの作品の舞台は全て学校だった。もっと言えば高校。これまでの綿矢りさの印象は、「高校生の女の子が抱く"名称のない気持ち"を描くのが上手い作家」だった。

今回読んだ『生のみ生のままで』は上下巻になった長編作品だ。しかも主題は恋愛。今まで読んできた綿矢作品にはなかった、ドが付くストレートな主題である。登場人物たちも、学生から抜け出

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ふと出会う文章 文芸誌の魅力

ふと出会う文章 文芸誌の魅力

わたしが初めて文芸誌を買ったのは高校一年生のころだったと思う。河出書房新社が出している「文藝」が文芸誌との出会いだった。特集が「金原ひとみ責任編集・私小説」の回だ。

文芸誌とは小説の月刊(季刊)誌のことである。日本で五大文芸誌と言えば、新潮社の「新潮」、文藝春秋の「文學界」、河出書房新社の「文藝」、講談社の「群像」、そして集英社の「すばる」だ。この五つは全て純文学に特化した文芸誌だ。

もちろん

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小市民たるもの、決して

小市民たるもの、決して

小市民シリーズ最終巻である『冬期限定ボンボンショコラ事件』を読み終え、数日が経った。夏からはアニメも始まる小市民。動く小鳩くんと小佐内さんが待ち遠しい。

作者の米澤さんが最終巻が出版された後にこんな投稿をした。

わたしは冬期を読む前にこの投稿を見たので、どんな結末が待っているのだろう、とどきどきしながら読んだ。春期から始まってついに冬期。ずっと作中で誤魔化されていた、二人が「小市民」を目指すこ

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『先生と僕』坂木司

『先生と僕』坂木司

双葉文庫が40周年ということで、記念カバーになったものが本屋にずらりと並んでいた。その中で私は坂木司『先生と僕』が気になったので読んでみた。

ところで記念カバーって楽しい。これから始まるだろう夏の文庫フェアとか、いつもの表紙と違うだけで気になってしまう。文庫なのにタイトルが箔押しされていたりすると、既に持っていても買ってしまうことがある。

さて、坂木さんの作品といえば『和菓子のアン』シリーズだ

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『ぼくの短歌ノート』穂村弘

『ぼくの短歌ノート』穂村弘

昨年初めて歌集というものに出会った。そのときは短歌の楽しみ方をよく知らなかった。音が楽しいとか、視点が面白いとかそれくらいで、他は自分の感覚で読んでいた。

それから自分でも短歌を詠むようになって、短歌のことを更に知りたくなった。何せ自分の出来上がった短歌はとても陳腐でつまらなくて下手くそだったから。たった31音"だからこそ"の難しさを感じていた。

そんなときに見つけたのが『ぼくの短歌ノート』。

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『麦ふみクーツェ』いしいしんじ

『麦ふみクーツェ』いしいしんじ

いしいしんじの『麦ふみクーツェ』を読んだ。私はいしいさんの作品を読むのは初めてで、最初はその不思議な世界観に戸惑った。やがて吹奏楽の話が出てきて、自分も吹奏楽をやっていたので身近な話に思えた。

この小説には作中での言葉を使うと"へんてこ"な登場人物が多い。例えば、
・身長がとびぬけて大きいぼく(主人公)
・音楽に取り憑かれた祖父
・素数に取り憑かれた父
・動作が不自然な用務員
・目が見えないボク

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大河ドラマ「光る君へ」の話

大河ドラマ「光る君へ」の話

今まで大河ドラマを見たことがなかったのですが、吉高由里子さんが主演すると聞いて、初めて大河ドラマに触れました。今では毎週日曜日を心待ちにするくらい見入っています。

自分は世界史専攻で、日本史の知識は中学歴史ほどしかありませんが、全く知識がなくても楽しめます。私は解説してくれる方々の動画を見たり、字幕をつけたり、相関図と照らし合わせたりしています。意外と小ネタ満載で、知ると益々楽しめるドラマ構成に

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『生きる演技』町屋良平

『生きる演技』町屋良平

俳優はカメラの前で「カット」の一声がかかるまで別の人格を演じる。では、普通に過ごしているわれわれは?生きるとき、誰だって無意識に自分を演じているのではないだろうか。で、その演じる自分ってなんだろう。

町屋良平最新長編『生きる演技』を読んだ。町屋さんの作品を読むのは三度目だが、読後いつも文体を奪われるような気分になる。文体というか、言葉が上手く使えなくなる。

読んでいるとき、中学生か高校生か、ど

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『八月の御所グラウンド』万城目学

『八月の御所グラウンド』万城目学

どうでもいいけれど、高校に入るまで彼のことを「まんじょうめがく」と読んでいたことをここで告白する。なんですか、まんじょうめって。あと、がくでもなかった。

『八月の御所グラウンド』は、第170回直木賞を受賞した作品だ。万城目さんはノミネート6回目で賞を勝ち取った。後世にも語り継がれるであろう「直木賞」に作品を書き続ける人の名前が刻まれたことはとても嬉しい。

本作に収録された「十二月の都大路上下ル

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日記 04/06

日記 04/06

2024/04/06

カーテンを開けていないから本当の天気は分からないけれど、今日は多分晴れだ。朝の光がいつもよりも眩しい、凄く明るい。でもこの明るさは雪の白かもしれない。カーテンを開けないから知らない。

部屋が明るいだけで鬱々とした気持ちは随分なくなる。最近発明した絶望した時の対処法は歌を歌うこと。カラオケで歌ったら友達に馬鹿にされるような歌が良い。例えば「アンパンマンのマーチ」とか「おしり

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