蓮水桜子

本の話をします

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    あまり明るくはない日記です。日記を書く日は決まって絶望しているのです。

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純文学はこんなにも面白い

芥川賞は日本の文学賞で一番有名な賞だと思いますが、その実態はあまり世に浸透しておらず、また注目度も他の文学賞に対して低いように感じます。 例えば、エンタメ性の高い直木賞と純文学を取り扱う芥川賞では、作品にもよりますが、大抵売り上げは直木賞の方が高いです。 更に高校生直木賞というものもあり、全国の学生が本を語り合える機会を作っています。 本屋大賞は書店員によって投票される賞で、大賞に関わらずノミネート作も人気が高く、映画化やアニメ化、ドラマ化など注目される場面も多いです。

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    • 大人に読んで欲しい小説30選

      『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅香帆)が話題になっている今、ぜひ大人に読んで欲しい「小説」を18歳の若輩者が選ばせてもらいました。 なんとなくメーターがあると良いかなと思って軽め・普通・重めに分けてみました。 30冊選んだ中から1冊でも読んでもらえると嬉しいです。ぜひGWのお供に! 軽め ワンダー Wonder R.J.パラシオ/ほるぷ出版 元々児童向けの小説ですが、大人の方が読んでも得るものがあると思います。子供のいる方は一緒に読んで意見交換をしてみて

      • 日記 04/23

        2024/04/23 三月とさほど体調に変わりはないが、一つ変わった点は意欲的になったことだ。文字を前よりも読めるようになった。本を読んだり、映画を見たり、それら作品のことについて考えていると一日は過ぎていく。 それから最近は歩く練習をしている。三十分に一度立ち上がるというリハビリ。寝たきりだった私からすると大きな進歩である!これをしている日は午後になると体力切れになるが、「何もしていない」という状態が怖いので、体がしんどくても続けている。 ということだ。私は今この文章の

        • 『生きる演技』町屋良平

          俳優はカメラの前で「カット」の一声がかかるまで別の人格を演じる。では、普通に過ごしているわれわれは?生きるとき、誰だって無意識に自分を演じているのではないだろうか。で、その演じる自分ってなんだろう。 町屋良平最新長編『生きる演技』を読んだ。町屋さんの作品を読むのは三度目だが、読後いつも文体を奪われるような気分になる。文体というか、言葉が上手く使えなくなる。 読んでいるとき、中学生か高校生か、どちらかの国語の授業で扱った、『私とは何かーー「個人」から「分人」へ』(平野啓一郎

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          4本

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          『八月の御所グラウンド』万城目学

          どうでもいいけれど、高校に入るまで彼のことを「まんじょうめがく」と読んでいたことをここで告白する。なんですか、まんじょうめって。あと、がくでもなかった。 『八月の御所グラウンド』は、第170回直木賞を受賞した作品だ。万城目さんはノミネート6回目で賞を勝ち取った。後世にも語り継がれるであろう「直木賞」に作品を書き続ける人の名前が刻まれたことはとても嬉しい。 本作に収録された「十二月の都大路上下ル」、そして「八月の御所グラウンド」の二篇は、どちらとも京都で起こる少し不思議な話

          『八月の御所グラウンド』万城目学

          日記 04/06

          2024/04/06 カーテンを開けていないから本当の天気は分からないけれど、今日は多分晴れだ。朝の光がいつもよりも眩しい、凄く明るい。でもこの明るさは雪の白かもしれない。カーテンを開けないから知らない。 部屋が明るいだけで鬱々とした気持ちは随分なくなる。最近発明した絶望した時の対処法は歌を歌うこと。カラオケで歌ったら友達に馬鹿にされるような歌が良い。例えば「アンパンマンのマーチ」とか「おしりかじり虫」とかが良い。子供の頃に聞いていた曲。それで、馬鹿みたいな大声でにっこに

          日記 03/26

          2024/03/26 8年前の3月26日は北海道新幹線が開通した日だ。その日のことを未だに覚えている。8年が経った今、こうして思い返す人は少ないと思う。鉄道が好きな方か、まあそれくらいだろう。北海道に住んでいてももうニュースにはならないし。 鉄道ファンでも無い私が何故、日付まで合わせて覚えているかと言えば無論、その日は私の初恋が打ち砕けた日だからだ。8年前の昨日、私の初恋は終わった。 私の好きな人はその新幹線に乗って埼玉へ引っ越してしまった。今考えると引っ越しくらいで終

          『インストール』綿矢りさ

          高校を卒業するにあたって、学生時代に影響を受けた本だったり、学生のうちに読んでおきたい本というのを優先的に読むようにしている。 『インストール』はその中でも一番に思いついた作品だった。これは丁度一年前に初めて読んだ。 私は受験戦争から早々にドロップアウトした身だ。理由は互いに違うけれど、その境遇が『インストール』の主人公と重なる。だから今、もう一度読みたくなった。 主人公は何者かになりたいが、何になりたいという具体的な目標/目的が無い。燻っている「高校生」という期間を表現

          『インストール』綿矢りさ

          『海と毒薬』遠藤周作

          残酷なニュースが流れていたらテレビの電源を切れる時代に。情報を取捨選択し、見たく無いものから目を背けることの出来る時代に、わざわざ重々しい小説を読む理由は、痛みを知らないでのうのうと過ごす人間にはなりたくないからである。 『海と毒薬』は戦争末期、実際に起きた事件を元にしたフィクションである。九州の大学附属病院で行われた米軍捕虜生体解剖実験を通して、人間の罪意識について問う小説だ。 タイトルにある「海」は病院の屋上から見える黒々しい海を指し、「毒薬」とは言葉通りの薬(作品中

          『海と毒薬』遠藤周作

          『センセイの鞄』 川上弘美

          いつからか恋愛小説と言われるものを手に取らなくなった。昔は好んで読んでいたけれど、急につまらなくなってしまったのだ。ラブソングとかもあまり好きではなくて、どうしてこんなに世界は恋やら愛やらで満ちてるんだろうなあ、とぼんやり考える日もあった。 『センセイの鞄』は高校時代の"センセイ"と数十年振りに再会した"ツキコ"という女性が恋をする「恋愛小説」である。恋愛小説なのに、とても引き込まれた。そこで私は気づいたのだが、別に恋愛小説と言われるものが嫌いな訳では無かったのだ。 恋愛

          『センセイの鞄』 川上弘美

          日記 02/04

          2024/02/04 日記を投稿するのはとても久しぶりだ。と言っても仮日記なるものを書いては消して書いては消して、と繰り返していた。 最近、今の自分の生活を記録しておこうと文章を書いている。大層なものでは無く、あくまでも練習といった具合で。 本当に書くことは難しい。誰に見せるわけでもない、自分のための記録なのに全然上手く書けない。小説を読んでつまらないと罵倒する人がときたまいるが、いや、一つの作品にするだけでなんて素晴らしいんだろうと思うようになった。自分の書いた文章はと

          2023年ベスト本

          遅ればせながら、2023年に読んだ本の中から好きだった10作を紹介したいと思います。紹介は読了順です。 植物少女 朝比奈秋/朝日新聞出版 第36回三島賞受賞 生と死、命の重み。小説はこれらをテーマにした作品が多い。誰もが生き、そして死にゆくことから避けられないからだ。読者が他人事と放り出さずに自分事と考える。そして実際、考えやすいテーマである。 そんな作品はいくつも読んできたが、中でも『植物少女』は一番「生きる」とは何か、を教えてくれた作品だと感じた。 表紙の花が裏表

          2023年ベスト本

          『アサッテの人』 諏訪哲史

          2024/01/27 『アサッテの人』諏訪哲史 『アサッテの人』は構造が面白い。 ・叔父に関する「私」の記憶 ・叔父をモデルに書いた沢山の小説の草稿 ・大判ノート3冊分の叔父の日記 この3つが行き交う小説だ。起承転結や物語の流れは無いのと同義で、もはや「小説」というよりは引用のコラージュ、または叔父に関するレポートのような具合だ。それを考える時、そもそも「小説」とは何だ、ということに行き着く。 そんな構造を作り出した作者、それから作品に出てくる登場人物たちも含めて『ア

          『アサッテの人』 諏訪哲史

          『うたうおばけ』 くどうれいん

          2024/01/18 『うたうおばけ』 くどうれいん 倒れた日から丁度一年が経った。一年経っても私は寝たきりの状態から解消されていない。病気は全然治らないし、なんなら悪化しているんじゃないか。苛々も底を尽きて、私の中には無力感が生まれつつある。 最近は本を読むパワーも無く、寝転んで脳を使わない単純なゲームをしたり、ぼうっとSNSを見ることで時間が過ぎ去るのをただ待つ生活をしていた。 憂鬱と卑屈を抑えられなかった私が、積読の中からふと手に取ったのは『うたうおばけ』だった。

          『うたうおばけ』 くどうれいん

          あけましておめでとうございます🎍 2024年は沢山本を読んで、より本の魅力が伝わる文章を書けたらと思います。 では、今年もどうぞよろしくお願いします🫶

          あけましておめでとうございます🎍 2024年は沢山本を読んで、より本の魅力が伝わる文章を書けたらと思います。 では、今年もどうぞよろしくお願いします🫶

          『黄色い家』川上未映子

          しっかりと調べたわけでは無いけれど、2023年に一番読んだ作家はおそらく川上未映子だと思う。 そもそも私は川上未映子を読んだことがなかった。ふと思い立って『春のこわいもの』をオーディブルで聴き、芥川賞を取られた『乳と卵』そして続編の『夏物語』、ブッカー賞の候補にもなった『ヘヴン』や『すべて真夜中の恋人たち』を読んだ。今年は川上未映子と共にあったと言っても過言ではない。 読み漁ろうなんていう目標は無かったけれど、無意識に『黄色い家』はラスボスだと思いながら過ごしていた。長さ

          『黄色い家』川上未映子