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『先生と僕』坂木司

僕の先生は中学生!
ひょんなことから大学のミス研に入った恐がりな僕は、家庭教師の生徒である隼人くんから古今東西のミステリー作品の講義を受けることに。
出かけた先で遭遇する様々な「日常の謎」を2人で解決していくミステリー連作集。

双葉社

双葉文庫が40周年ということで、記念カバーになったものが本屋にずらりと並んでいた。その中で私は坂木司『先生と僕』が気になったので読んでみた。

ところで記念カバーって楽しい。これから始まるだろう夏の文庫フェアとか、いつもの表紙と違うだけで気になってしまう。文庫なのにタイトルが箔押しされていたりすると、既に持っていても買ってしまうことがある。

さて、坂木さんの作品といえば『和菓子のアン』シリーズだろうか?私は坂木さんの作品を読むのはこれが初めてだった。

中学生の隼人は達観した視点の持ち主で、いつもおどおどしている大学生の双葉にアドバイスをしている。二人は家庭教師の先生と生徒という関係だが、どちらかと言うと「友達」という感覚に近い。歳の差があってもお互いのことを下の名前で呼んでいたり、本を貸したりする関係は少し羨ましい。

文体やトリックに難しいものはなく、話の流れも分かりやすい。謎が起きるまでのストーリーも無駄がなく、ずっと夢中になって読んだ。小学5・6年頃から楽しめる作品だと思う。私はとくに中学一年生に勧めたいと思った。短編だから忙しい学生でも朝読書などの隙間時間で読み切れると思って。

それから『先生と僕』は連作短編集なのだが、一つの短編につき一つのミステリ作品を紹介される。人が死んだり、残酷な目に遭う作風が苦手なのにミステリ研究会に入ってしまった主人公のために、中学生の隼人が勧めてくれる。出てくる作品は実際にあるもので、その上人が死んだりしない。ブックガイドとしても活用できる。次の読書へと続くのでさらに本を好きになってもらえると思う。

夏はやはりミステリを読みたくなる。怖い作風で背筋が凍るようなものも良いが、優しい気持ちになるミステリも好きだと感じた一作だった。日常ミステリ繋がりで古典部シリーズを久しぶりに読みたくなった。

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