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小市民たるもの、決して

小市民シリーズ最終巻である『冬期限定ボンボンショコラ事件』を読み終え、数日が経った。夏からはアニメも始まる小市民。動く小鳩くんと小佐内さんが待ち遠しい。

作者の米澤さんが最終巻が出版された後にこんな投稿をした。

なんだかずっと〈小市民〉のことを考えている。思いがけない形で誕生し、悩んだり、悩んでいるふりをしたりしていた、自称小市民志望たち。読者に『冬期』を楽しんで頂けることを願う一方、かれらには、それほど悪くない終章を用意してやれたんじゃないかと思っている。でも少し、さみしいですね。

Xより(2024/05/01)

わたしは冬期を読む前にこの投稿を見たので、どんな結末が待っているのだろう、とどきどきしながら読んだ。春期から始まってついに冬期。ずっと作中で誤魔化されていた、二人が「小市民」を目指すことになる原点がついに明かされ、より人物像が深まったように思う。

米澤さんが言っていた「それほど悪くない終章」の部分に差し掛かったとき、じわじわと終わってしまうんだという実感があった。シリーズが未完で終わる作品もある中、結末を迎えられたのは嬉しいことでもある。しかし二人をずっと追っていたいという気持ちもある。読みたいけど終えたくないという矛盾する気持ちに抗いながら、わたしは最後のページを閉じた。

とにかくとにかく小佐内さんが可愛い。春期の頃から思っていたが、冬期の小佐内さんはとくに可愛らしく感じた。ずっとぼやぼやと想像するしかなかった声質も、アニメのPVが出たタイミングだったので自然とその声で変換された。それが可愛らしく感じた原因なのかもしれない。個人的にはもう少し低い声なのかな、と想像していたが、それは小佐内さんの"本質"が現れたときに登場するのかもしれない。小佐内さんは基本的には可愛いが、とても怖い女性でもあるから。

高校生活でずっと忘れないだろう瞬間を振り返るシーンでは、告白なのか、それ以上のものなのか、わたしはときめいてばかりだった。二人は決して恋愛関係ではない。でも名付けられた"互恵関係"という言葉も、今ではあまりしっくりと来ない。利益関係だった二人の関係が高校生活を通して"かけがえのない存在"になったのだと思う。

冬期を読み終えてから、わたしは春期の冒頭を読み返した。二人が高校入学のシーンからだ。アニメはきっとここから始まるのだろう。日常の謎とは言え、古典部(「氷菓」)とはまた少し違う空気感の小市民。古典部に比べてピリついている小市民をアニメではどう描くのか楽しみだ。アニメを好きになった方にも原作を読んでみて欲しいなあと思う。羨ましいのはシリーズの完結まで一気読みできることだ。

おまけ。好きなシーンを三つほどあげようと思う。ネタバレは避けたいので簡潔に、濁しつつ読んだ人なら分かるように書きます。

🥇「わたしの次善」(『冬期限定ボンボンショコラ事件』)
🥈「痴話喧嘩もできないの」(『夏季限定トロピカルパフェ事件』)
🥉「いい日だったな……」「そうだね。あしたもこうだといいね」(『春期限定いちごタルト事件』)

完結、と言うが短編集がもう一作出るらしい。巴里マカロン〜のように今度は場所の名前で小市民が続いて欲しい。わたしは米澤さんの書く短編も大好きだから。

では最後に。

小市民完結おめでとうございます!
大好きな作品になりました🫶

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