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鶏から!鶏から!鶏から!
――本を三冊買う、という楽しみかたの方針を、現在の僕は確定されたものとして持っている。
これは、最近読んだエッセイの冒頭部分を抜き出したものである。書き手は、作家の片岡義男。その独特の言い回しに、あるいはピンときたひともいるかもしれない。
この文章のツボは、ひとことで言うと「本を買う」ことにではなく、本を「三冊」買うということに目をつけたところにある。じっさい、片岡義男のエッセイというと、こう
変なおじさんが遅刻の危機から少年を救った話
毎朝バスを待ちながら、見るとはなしに向かい側の停留所を観察するのが日課のようになっている。
そのバス停から発車するのは、特別支援学校の方面に行く路線である。ちょうど通学時間帯にあたるため、いつも7、8人の生徒たちがこのバスを利用する。
毎朝のことだから、最近ではすっかり彼らの顔を覚えてしまった。顔ばかりか、この頃はそれぞれのキャラクターまでなんとなくわかってきた気がする。
この子は好奇心が旺
離れた土地での災害と自分にできること
夢は毎晩かならず見るのに、初夢のけさにかぎって憶えていない。
ゆうべは、いつになく遅くまでニュースを見たりSNSをチェックしたりしていた。
寝付けないからそうしていたのか、そうしていたら寝付けなくなったのか、どちらかはよくわからないが軽い興奮状態に陥っていたのだろう。
大きな地震が発生するほんの数分前、新年さいしょの短い記事を投稿した。のんきにもほどがある、いまとなってはそう思わずにはいられ
パンがなければケーキを食べればいいじゃん
新宿まで眼鏡を作りにいって、家に財布を忘れてきたことに気づいたのだった。
そこそこ長く生きてきたけれど、財布を忘れて出かけるのはこれが初めて。気づいたとき、慌てるよりも先にまず驚いてしまったのは、財布を忘れるということにかんしてはなぜか自分は大丈夫という変な確信があったからだ。
それにしても、恐ろしいのは「刷り込み」である。
そのとき、よりによって頭の中に流れたのはサザエさんのテーマソングだ
夜の散歩と祖父母のこと
親類のあつまりで、九十になる叔母から話を聞いた。
叔母がまだ若かったころの思い出話だが、記憶に残る事柄というのは人により異なるもので、折に触れて母から聞く話とはまたちがった新鮮な気持ちで聞くことができた。
なかでも、とりわけ印象に残ったのは祖父母、つまり叔母の両親にまつわるエピソードだ。
娘の目から見ても仲睦まじい夫婦だった祖父母は、夕食後、近所の麻布十番まで散歩にゆくのを日課にしていたのだ