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【読書感想文】岸政彦「断片的なものの社会学」

こんばんは!
人から借りた本は発見に満ちている。小栗義樹です。

本日は水曜日ですので「読書感想文」を書こうと思います。

題材はコチラです!

岸政彦「断片的なものの社会学」

日本の社会学者:岸政彦先生が書いた3冊目の本で、紀伊國屋じんぶん大賞2016の大賞作品です。

沖縄や大阪などの質的調査を行い、生活と社会調査を研究している岸先生が、取材や生活の中で遭遇した事象を、社会学的アプローチで言語化しています。詩的、あるいはポエミーな感じに仕上がっている、または自然とそうなっているため、非常に読みやすい作品です。

普段の僕なら、手に取らない本だと思います。こちらは弟が友人から借りてきた本で、本をほとんど読まない弟が僕に貸してくれました。

少し前にも書いたような気がするのですが、人から借りた本はリコメンドの外にある事が多く、新発見やまだ見ぬ感動要素が多かったりします。

この断片的なものの社会学という本も、僕が普段何気なく選別している本の外側にあり、それは意識して読んでみようと思わない限り発生しない巡り合わせです。おかげさまで非常に楽しく・興味を持って読むことが出来ました。

ちなみに僕は、社会学そのものには強い関心を持っています。というか、ビジネスをする・音楽をやる・文章を書くという行動の裏には、必ず社会学が流れていると言えると思います。

社会学とは人と人との関係がどのようなコト・モノを生み、それが世界(地球上の自然や生物や他者)などにどのような影響をもたらしていくのかを考えることです。

この場合のコト・モノというのは、例えば、組織や制度のことを指します。これらをデータや統計などを用いて分析し、メカニズムを解明するのが社会学という学問です。

だから、小説や音楽など、社会の中の問題や歪みを提起する創作物は、社会学をベースにしていると言えます。ビジネスも同じです。社会の問題・課題を解決し、役に立った分だけ価値基準であるお金と交換する、それがビジネスです。お金の前には必ず「問題・課題の解決」があるわけで、それはやっぱり社会学と言えます。

僕は人のためというよりも「自分が書きたい・作りたいと思うもの」を形にします。でもそれは、僕が個人的に感じている「社会にはびこる問題や歪み」または「社会の中の素晴らしい一面」だったりするわけです。結局、創作の起因となるのは「社会と自分の位置づけ」や「社会と自分の接点」だったりするわけで、社会学とは、この社会で生きていく上で切っても切り離せない学問だと言えるわけです。

では、どうして「断片的なものの社会学」という本が、僕の選別の外にあったかのか?

それは、社会学は「学ぶ」ものではないと思っていたからです。

社会というものは、見ている人ごとに写る景色が違います。置かれている環境に応じて、社会の捉え方が変わるわけです。だからこそ社会学という学問は、自分の目で見た景色の中から、気づき・定義し、対処するべきで、誰かに学ぶべきものではないという風に思っていたわけです。

しかし今回、断片的なものの社会学という本を読んでみたことで、その印象は若干変わりました。

この本は「意図した行動」の中に生じた「意図しない(予想できない)行動」や「意識の内側にある事象」の中にある「意識外(突発的)の事象」がエピソードとして語られています。それは人に対して強い印象を残す現象です。この本は、そこにこそ社会の本質が詰まっているのではないか?という事を訴えていて、それは実はとても大切な事なのに、多くの人が見落としてしまっている事なのではないか?というメッセージが綴られているのだと僕は感じ取りました。

社会とは定義の仕方によって見え方が変わってきます。また捉え方にも様々な方法があります。こうした定義や捉え方は、自分で発見するよりも学んだほうが早いです。そしてこうした部分は、小説や音楽では補うことが出来ない部分で、こうした社会学の本が持つ大きな役割なのではないか?と思っています。

この本は、そんな社会学本の入門として最適だと思います。なぜかと言えば、良い意味で読みごたえがありません。つまり、情報的ではないという風に言えます。1つ1つの話が取っつきやすい、まるで簡単な短編物語を読んでいるように感じます。その上で、この本が訴えたいメッセージの性質上、1つ1つの話がポエミーで詩的な感じになっています。読んでいると、不思議な居心地の良い世界に誘われているような気分になり、読み終わったときには自然と考えさせられるような気分になっています。

勉強しろと強制されるのではなく、好きなように自由にしていたら、いつのまにか勉強になっていたという、奇跡のバランスで構成された本だと思います。

売れ続けている理由はここでしょう。8年間で17刷りなんて、なかなか達成できるものではありません。

お話自体も興味深いものが多いです。これを1冊の本にまとめた編集者さんも凄いなと思います。

今でも本屋さんに売っているはずです。社会の一端を見てみたいという方がいれば、普通に社会学を勉強する本よりもこちらの本の方がおすすめです。ぜひ一度、読んでみてほしいなと思います。

というわけで、本日はこの辺で失礼いたします。
また明日の記事でお会いしましょう!
さようなら~


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