マガジンのカバー画像

とまどいと偏見2020

31
2020年に劇場で観た映画の感想集です。映画評やレビューというよりは、この映画観てこんなこと考える人いるのか的文集です。
運営しているクリエイター

記事一覧

【映画感想】ソウルフル・ワールド

【映画感想】ソウルフル・ワールド

えー、あけましておめでとうございます。前回の『燃ゆる女の肖像』で2020年劇場鑑賞作品の感想は終わったんですが、じつはもう一本(特に2020年を象徴する様な公開のされ方をした作品が)ありましたので、年は変わってしまいましたが、2020年に観た映画として感想を書こうと思います。ディズニー+で配信されたディズニー / ピクサーの最新作『ソウルフル・ワールド』の感想です(ウチはネトフリとディズニー+にの

もっとみる
【映画感想】燃ゆる女の肖像

【映画感想】燃ゆる女の肖像

えー、2020年最後の劇場鑑賞となりました。2020年は一年を通してバタバタしっ放しでしたが思ったより観れたかなと思っています。とにかく観た人の評判がとても良いセリーヌ・シアマ監督による画家とモデルのラブ・ストーリー『燃ゆる女の肖像』の感想です。

画面の美しさでいったら2020年No.1じゃないですかね(画面の汚さNo.1の『屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ』と続けて観てみたいものです。映画表現

もっとみる
【映画感想】アンダードッグ 前・後編

【映画感想】アンダードッグ 前・後編

前後編合わせて4時間36分。一気観しました。ダメなやつをとことんダメに描くことに関しては世界とは言わずとも、現状、間違いなく日本一だろうなと思っている武正晴監督(そして、脚本は足立紳さんで『百円の恋』のコンビですね。)の最新作『アンダードッグ』(負け犬という意味。)の感想です。

少し前に観た『本気のしるし』も4時間超えでしたし、個人的に映画館に長くいるのは苦ではないのですが、その熱量と登場人物の

もっとみる
【映画感想】佐々木、イン、マイマイン

【映画感想】佐々木、イン、マイマイン

ロックバンド"King Gnu"のMVに『THE HOLE』というのがあって、"男×男×女"の三角関係を描いた内容で、結構際どいラブシーンもあるし、バンドメンバー1秒も出て来ないし攻めてるMVだなと思っていたんです(恋愛というのをシビアに描いてるところがちょっと日本の感覚ではないというか、最近の韓国映画の攻め方に近いなと思いました。)。それを監督してたのが内山拓也監督なんですけど、2016年のPF

もっとみる
Mank / マンク

Mank / マンク

僕はいわゆるシネフィルではないので、自分の人生の中で自然と出会わなかった映画は観てないんですね(キューブリックやスピルバーグは全部観てるけど、ゴダールや小津安二郎は一本も観てないみたいな。)。なので、この映画のかなり重要な部分を担っている『市民ケーン』も未見だったんです(もちろん、これが映画史における傑作と言われてることは知ってました。)が、ただ、あの『セブン』の、『ゾディアック』の、『ソーシャル

もっとみる
JUST ANOTHER

JUST ANOTHER

前作の『MOTHER FUCKER』に続き、日本が世界に誇るアンダーグラウンド・ミュージック・シーンの謎をカメラひとつで解き明かそうとするドキュメンタリー作家・大石規湖監督による長編第2弾。名古屋を拠点に38年の歴史を持ちながら現在も超現役(しかも、ちゃんとカッコイイ!)パンクバンド”原爆オナニーズ”の謎に迫ったドキュメンタリー『JUST ANOTHER』の感想です。

じつは試写会にご招待頂き(

もっとみる
異端の鳥

異端の鳥

自らもホロコーストの生き残りという作家のイェジー・コシンスキさんが1965年に発表した『ペインテッド・バード』を原作に、ホロコーストから逃れる為に田舎に疎開した少年が受ける暴力と差別を、暴力の地獄めぐりアトラクションとして描いた映画『異端の鳥』の感想です。

えー、まぁ、噂通りエグい内容ではあるんですけど、ホロコーストものということでその辺の描写が凄いことになってんのかなと思ったら、いや、もう、ナ

もっとみる
スパイの妻 劇場版

スパイの妻 劇場版

日常に潜む違和感とか狂気みたいなものを独特の視点で描いて来た黒沢清監督がNHK BSのドラマとして制作したものをリメイクした劇場版。第77回ヴェネチア国際映画祭で最優秀監督賞である銀獅子賞を受賞した『スパイの妻 劇場版』の感想です。

太平洋戦争間近の神戸で貿易会社を営む福原優作(高橋一生)が、旅行先の満州で日本政府が秘密裏に行なっていたある計画を知ってしまい、妻の聡子(蒼井優)と共にアメリカに渡

もっとみる
フェアウェル

フェアウェル

なかなか不思議な映画でした。中国(東洋)とアメリカ(西洋)の文化の違いを"祖母の死"というシリアスなテーマを用い(どちらかというと)" 正しくなさ " で描いたヒューマンドラマ(でありコメディ)『フェアウェル』の感想です。

まず、どこが不思議だったかと言いますと、(これもまた)A24配給の映画なので、アメリカのインディペンデント系の映画なんですね。で、内容がN.Yで暮らす(オークワフィナ演じる)

もっとみる
mid90s

mid90s

90年代半ばのL.Aを舞台に13歳のスティーヴィーの日常を、当時のストリート・カルチャーであるスケボーやHIP HOP、オルタナティブ・ミュージックなどと共に描く青春ムービー『mid90s』の感想です。

はい、というわけで、何回か前に感想書いた『はちどり』(テキストでの感想の他に音声ポッドキャスト版でもやりました。)は1994年の韓国の14歳の少女ウニを主人公にした青春映画でしたが、こちらは(恐

もっとみる
僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46

えー、僕は欅坂のファンでありまして、どのくらいのファンかと言われれば、ライターの中山洋平くんのnote(bossston cruizing mania・カシマエスヒロ、欅坂46を語る【前編】+【後編】)において臆面もなく欅愛を語るくらいにはファンなのですが(どうやって興味を持って行ったかなどについてはこちらに書かれてますので気になる方は是非ご一読ください。)、いわゆる確固たる推しメンがいて、ファン

もっとみる
ブルータル・ジャスティス

ブルータル・ジャスティス

こうやって文字にしてみると益々B級スプラッターっぽいタイトルですね。これは監督の過去作が『トマホーク ガンマン vs 食人族』とか『デンジャラス・プリズン ー牢獄の-処刑人ー』だったってところから来てると思うんですけど。この邦題で小劇場のみで公開されていたら絶対観ることはなかったであろう S・クレイグ・ザラー監督、脚本、音楽の犯罪アクション映画『ブルータル・ジャスティス』の感想です(コロナ禍の中で

もっとみる
ディック・ロングはなぜ死んだのか?

ディック・ロングはなぜ死んだのか?

『ハリー・ポッター』のダニエル・ラドクリフの死体が(主に)オナラで大活躍する(全く何を言ってるのか分からないと思いますが観たまま書いてます。)『スイス・アーミー・マン』のダニエル・シャイナート監督の長編第2弾。今回も死体と下ネタがキーワード。『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』の感想です。

はい、ということで、もう僕大好きですこの映画。えー、監督の前作の『スイス・アーミー・マン』は難破して無人

もっとみる
アルプススタンドのはしの方

アルプススタンドのはしの方

長い梅雨が明けてやっと夏が来ました(コロナ禍であっても夏は来るのだ。素晴らしい。)。日本の夏の風物詩のひとつに甲子園というのがありますが、あらかじめ終わりが設定されているドラマとして青春映画の題材としてよく使われます。正しくそれをモチーフにしながら野球の試合シーンを一切描かなかった青春映画『アルプススタンドのはしの方』の感想です。

えー、このところ青春映画ばかり観てますが、なんでしょう、この先が

もっとみる