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ついに先祖の地・隠岐島に向けて出港!【ファミリーヒストリー入門】

~前回までのあらすじ~
いい歳(27歳)して両親と会話をしない四ツ谷氏は、家族の絆を取り戻すため、否、永遠と思われる思春期を終わらせるため、知られざる先祖を探す旅に出るのであった。遠隔地からの調査に限界を感じ始めた我々は、ついにルーツの地・隠岐島へ出航を決めた。
案内人:北山

北山:もう行こう! 隠岐に! 調査は足からだ!

四ツ谷:まあ、GWもあるしねえ。

北山:ということで、隠岐ゆきのフェリーに乗っています。東京からは本当に遠い。まずは米子空港に行って、境港を経由して島根の七類港に行く必要がある。便も少ないから、今回は前乗りして、朝イチの便に乗った。

四ツ谷:説明は大事。ありがとう。

北山:それにしてもはるか彼方だ。七類港から2時間半もかかる。満席で2等客室しか買えなかったけど、見事にぎゅうぎゅうだ。

四ツ谷:陸から離れるとなんだか寂しいね。先祖の気持ちとシンクロしてきた。

2等客室の様子

北山:ネットもつながらないし、なんか話すか。隠岐で死んだら、ちょっとかっこよくない?

高端:わかる。客死ってかっこいいよね。阿倍仲麻呂みたいな。

四ツ谷:君も来てたんだった。じゃあ、どこで客死するのが良い?

高端:トルコ。砂漠がいい。

北山:ハワイじゃダサいもんな。

四ツ谷:ハワイは歳とってたらカッコいい。75歳、ハワイで客死。イカす。

北山:……。この話あんまり面白くないな。やめるか。せっかく調査に行くんだから、ちょっと事前に勉強をするかね。

四ツ谷:そういえば、俺の先祖が武士だった可能性を考えて、藩士録を取り寄せたよ。隠岐を支配していた松江藩の藩士の一覧でしょ? 「四ツ谷」はないけど、同じ読みの「四谷」姓の家が二つあった。これ漢文? まったく読めなかった…。

松江藩の藩士録。図書館で依頼して送ってもらった。

北山:いわゆる「和風漢文」だね。たとえば「如奉願隠居被仰付」は「願い奉るが如く、隠居仰せ付けらる」となる。
ざっと読んでみたけど、四ツ谷の先祖らしき人はいなかったな。こうやって可能性をひとつずつ消していくのが大切。これで、松江藩の上級武士という可能性は低くなった。藩士録には上級武士ばかりが記載されるから、下級武士の可能性は、まだあるけどね。

四ツ谷:除籍からほかに分かることはないの?

北山:ひとつ気になることがある。四ツ谷のひいおじいさんの富次郎さんの奥さんが、結婚直前に他家の養女に入っているんだ。

四ツ谷:どうして、そんな意味がなさそうなことをするの?

北山:結婚するふたりの家格が合わない場合、いっかい身分が釣り合う養子先をみつけて、そこの家族にするんだ。たとえば、富次郎の家が武士で奥さんの生家が百姓の場合、富次郎の家がほどよい武士の家を見つけてきて、婚前に養子入りさせる。こうすることで、きっちり武家からお嫁をとったことになる。
もちろん、奥さんの家格が高くて、「結婚するなら養子に出ろ!」と言われた可能性もある。つまり、富次郎の家格が低かった。
せめて、四ツ谷の親戚が隠岐島に残ってくれていればなあ……。

四ツ谷:隠岐に行く一生に一度かもしれない機会だから、LINEも知らない父親にメールを送ってみた。どうやら、複数の宅地をよくわからない家に譲渡していたらしい。本籍地の近くだから、四ツ谷家のことを知っている人がいるかもしれない。

北山:お父さんとか、おじいさんは隠岐には行ったことあるの?

四ツ谷:おじいさんはあるらしい。でも、50年も前みたいだよ。住居を移した時期に関しては、150年近く前かもしれない。

北山:隠岐の王族・四ツ谷一族の末裔、150年ぶりの凱旋か。噂を聞きつけた島民たちが、港で出迎えてくれるかもしれない……。

高端:こいつが王族って顔に見えるか?

四ツ谷:聞いてないかと思ったわ。

続編はコチラ。


北山:1994年生まれ。ライター/歴史研究者。一橋大学大学院社会学研究科修了。中学時代に先祖調査に夢中になり、そのまま日本家系図学会に入会。その後は大学院で日本近世史・村落史・由緒論を学ぶ。署名は(円)。

四ツ谷:1996年生まれ。学術書編集者。弟と父親のLINEを知らないくらいには、家族と没交渉。署名は(四)。

高端:1994年生まれ。医療系メーカー勤務。何も事情を知らないまま、北山と四ツ谷に隠岐島へと連れて行かれた。署名は(高)。



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