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#文学

水平線

水平線

潮騒を五月蝿く感じたら
私が私じゃない合図

可憐で繊細な波粒の欠片が
私の傷口に刺さっているの

カモメに笑われたら
私の胸中にある海の水量が
溢れてしまう合図

気高いカモメの群れさえも
敵だと認識してるみたい

そんな私は私じゃないから
ここでのお話は内緒にしてね

海はいつでも無垢で綺麗に問いかけてくる

あどけない水平線からこちらへ

狼煙

狼煙

怖気付いた狼は

煙を焚いた

孤独感は産まれた時からあったから

風の色が変わろうと

揺れゆく葉の曲調が変わろうと

自身にはなんの変化もない

ただひたすらに荒野の始まりにいる

折りたたみ式のコンパクトな狼

小さく包まって

目を瞑って

ひたすらにじっと

震えていた

やっとこ疲れたもんで

狼煙を焚いた

爪で葉や石っころ引っ掻きまわし

二度目の満月の頃

ようやく火がついた

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エウレカ

エウレカ

あなたの好きなものは何
君の得意なものは何
わたしの愛するものは何

お前の心は震えるか

それを見つけた
あなただけの
感動

エヴリカ!

君だけの感動

ユリーカ!

お前の心は震えるか

ヘウレーカ!

高鳴る昂る

それは虹色か
それは漆黒か
それは純白か
透明な

なんでもない

何か

心の奥のあなただけのあれを
日常に隠れた君だけのそれを

わたしは見つけた!
と宣言せよ

高鳴れ

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遠炎

遠炎

遠くで誰かが想うのは

遠くに暮らす私の心情

庭に咲いた小さな花に水を垂らす様に

窺い知れない遠里の花に
水を差すのは

巨人の長腕が必要物資

残念ながらに巨人は幽霊 夢の化身
触れられないから当てにはしちゃ駄目

屈強な花は雨を啜り
泥だらけの花弁でも
背骨の茎は曲がらないのだろう

そんな花だとしても尚
たまの便箋一通なんかじゃ
不安の球はハートのなかで静かに跳ねる

病と契約してないも

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菊に空

菊に空

鷹が翔ぶ
水気の無いダム湖を上を

鷹が翔ぶ
水気の無い水脈の上を

鷹が呼ばれる
大盤振る舞いの恰幅な太陽に

鷹は鳴く
私とあなたは無関係

鷹は翔ぶ
遥か遠くの野を目掛け

太陽は言う
鷹よ伝えてくれないか

太陽は言う
彼等に教えてくれないか

太陽は思う
ここは私より大きな星が牛耳るこの地

太陽は叫ぶ
私だってもう休みたい

太陽が怒る
彼等は私を憎んでいるから

鷹は思う
豆粒の様に

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詩:眼、イメージ、メッセージ

詩:眼、イメージ、メッセージ

ある歌手は歌った

「目に映る全てのことは、メッセージ」

眼は道具を演じ、右を向けと念じ、

右を向けば、同時、わたしが向いたのと同じ

眼は意志を隠し、可視光線が通じ、

脳がそれを見たと申します

眼は、メッセージを映している

わたしはそれを理解できない

理解できる、誤解してる

誤解、理解、解、壊、塊、貝、会、悔、開、乖、回

回転して、眼がぐるっと回って、出会う

回転して、眼がぐる

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青春木

青春木

誰にもすれ違わない様に

一本はぐれた枝を行く

言葉が拙い思春期は

恥じらいを跳ね返す表情も知らない

あなたと隠れて話しましょう

長い廊下に子供達

秘密を厚らい着込んでいたから

あの夏はより暑かった

新しい屋根の隣には

古いトタンの錆びた屋根

大通りでは無い私達の

帰る場所がここならと言っては

あなたが小さく微笑んだ

あの瞬間が私のはじまり

駅まで歩く裏の枝

細くて短く

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旧木街

旧木街

余白を飛ばして訪れた

若葉の頃に暮らした街は

涙と汗を噛むほどに色気を増し

老艶に象った古い木窓の群列体

錫色に並ぶ扉の奥では

宵に酔った赤らめ頬のおじちゃんが

酒樽に腰掛け流暢に笑いをばら撒いている

無我に飛び込む社会の油で

べたべたになった私の心は

赤らむ街を抜け歩くだけで

ポッと安心

ポッととぬくい

この場所一帯消えるんだ

次の冬には消えるんだ

老いた飲み屋や食堂

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仕舞う

仕舞う

マボロシの中で夢を見ておりました

わたしはそういう人にはなれません
そういうふうに叫ぶのを
私は幾度も無視をして

マボロシの中で夢を見ておりました

「そうあるべき」にはなれません
取り繕った笑顔は嘘でありました
自分でも気が付かぬ
巧妙で精巧な笑顔でありました

ほんとうは
ほんとうの
ほんものの
わたし



ある日ぽとりと堕ちたのは
黒い軀になりかけの
小さなわたしでありました

本当

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BORN CRY

BORN CRY

そこで笑い暮らす盆暗は

日がな一日幸せに
幸せなだけの妄想を

そこで寝転ぶ盆暗は

日がな一日幸せに
どこのどなたの毒にもならず

そこで息する盆暗は

日がな一日幸せに
ただ生きる事に感謝する

四肢を投げ出し
地の球を
力の限り抱きしめる

いつかあなたのお役に立てる
その日のことを夢に見ながら

昼堕落

あの鉄柱よりも遥かに高い

水彩の様な快晴

雀が近くで鳴いてるが

どこに居るかはわからない

流れる1秒が織りなせば

騒めく杉も

雀の羽ばたきも

流線系の実態となる

それくらい大事な重なりの秒間を

私はただ小高いだけの細道から

街の外れの住宅の群れを

反神妙な顔持ちで

緩くてぬるい表情筋を携え

眺め下ろしているだけの昼堕落

それを悪人と罵られては

擦り減った私の思の動く部

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赤と黄金

赤と黄金

僅かな晴れ間の梅雨の午後

憶えたばかりの自転車ならし

まだランドセルの残感が背にあまるなか

日頃は縁遠い駅の裏側まで

私は両足を回していた

緑広がる田の間

立っているのは畦角に地蔵

表情無くても私に対し

友の様に朗らかにはにかむ

地蔵の立つ畦道の角っこを

私は軽快に曲がっては

地蔵にまたねとはにかみ返す

緑広がる田の間

瞬き終わると黄金色

摩訶不思議に逢う田んぼの変身

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侭

無いものを欲しがり
大切なものを放り出し

放っておいて
放っておかないで

時に雑草のようになりたいの
時にショウケースの花になりたいの

人が好きで
人が嫌いで
人に嫌われるのが怖くて

どうでもよくなった

裸になりたいの
虚栄心が邪魔をする

そのあたりで野垂れ死ぬ夢を見る

そよげ胎海

そよげ胎海

無の荒野を泳ぐ宇宙船のなかじゃ

おそらく私は心が虚震して潰されるのであろう

海面を遠くに見上げる潜水艇のなか

それは私ひとりの操縦席で

無駄なものなど何もない

引っ越したての狭い部屋の様に

簡素な布団でうたた寝中

操縦桿は存在しないから

ずっとこの場所で停泊している

たまにカモメが海面の上で

騒ぎたてている様が好きだ

ぴゅー

ぴゅー

ららら

私は身体を揺らし潜水艇を少し

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