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渡辺 杜太朗
2021年11月16日 10:28
潮騒を五月蝿く感じたら私が私じゃない合図可憐で繊細な波粒の欠片が私の傷口に刺さっているのカモメに笑われたら私の胸中にある海の水量が溢れてしまう合図気高いカモメの群れさえも敵だと認識してるみたいそんな私は私じゃないからここでのお話は内緒にしてね海はいつでも無垢で綺麗に問いかけてくるあどけない水平線からこちらへ
2021年11月8日 03:48
怖気付いた狼は煙を焚いた孤独感は産まれた時からあったから風の色が変わろうと揺れゆく葉の曲調が変わろうと自身にはなんの変化もないただひたすらに荒野の始まりにいる折りたたみ式のコンパクトな狼小さく包まって目を瞑ってひたすらにじっと震えていたやっとこ疲れたもんで狼煙を焚いた爪で葉や石っころ引っ掻きまわし二度目の満月の頃ようやく火がついた
小石川ひさ(写真詩家)HisaKoishikawa
2021年7月3日 21:25
あなたの好きなものは何君の得意なものは何わたしの愛するものは何お前の心は震えるかそれを見つけたあなただけの感動エヴリカ!君だけの感動ユリーカ!お前の心は震えるかヘウレーカ!高鳴る昂るそれは虹色かそれは漆黒かそれは純白か透明ななんでもない何か心の奥のあなただけのあれを日常に隠れた君だけのそれをわたしは見つけた!と宣言せよ高鳴れ
2021年6月25日 22:09
遠くで誰かが想うのは遠くに暮らす私の心情庭に咲いた小さな花に水を垂らす様に窺い知れない遠里の花に水を差すのは巨人の長腕が必要物資残念ながらに巨人は幽霊 夢の化身触れられないから当てにはしちゃ駄目屈強な花は雨を啜り泥だらけの花弁でも背骨の茎は曲がらないのだろうそんな花だとしても尚たまの便箋一通なんかじゃ不安の球はハートのなかで静かに跳ねる病と契約してないも
2021年6月23日 12:27
鷹が翔ぶ水気の無いダム湖を上を鷹が翔ぶ水気の無い水脈の上を鷹が呼ばれる大盤振る舞いの恰幅な太陽に鷹は鳴く私とあなたは無関係鷹は翔ぶ遥か遠くの野を目掛け太陽は言う鷹よ伝えてくれないか太陽は言う彼等に教えてくれないか太陽は思うここは私より大きな星が牛耳るこの地太陽は叫ぶ私だってもう休みたい太陽が怒る彼等は私を憎んでいるから鷹は思う豆粒の様に
接続されたデレラ
2021年6月12日 10:18
ある歌手は歌った「目に映る全てのことは、メッセージ」眼は道具を演じ、右を向けと念じ、右を向けば、同時、わたしが向いたのと同じ眼は意志を隠し、可視光線が通じ、脳がそれを見たと申します眼は、メッセージを映しているわたしはそれを理解できない理解できる、誤解してる誤解、理解、解、壊、塊、貝、会、悔、開、乖、回回転して、眼がぐるっと回って、出会う回転して、眼がぐる
2021年6月11日 16:56
誰にもすれ違わない様に一本はぐれた枝を行く言葉が拙い思春期は恥じらいを跳ね返す表情も知らないあなたと隠れて話しましょう長い廊下に子供達秘密を厚らい着込んでいたからあの夏はより暑かった新しい屋根の隣には古いトタンの錆びた屋根大通りでは無い私達の帰る場所がここならと言ってはあなたが小さく微笑んだあの瞬間が私のはじまり駅まで歩く裏の枝細くて短く
2021年6月7日 15:05
余白を飛ばして訪れた若葉の頃に暮らした街は涙と汗を噛むほどに色気を増し老艶に象った古い木窓の群列体錫色に並ぶ扉の奥では宵に酔った赤らめ頬のおじちゃんが酒樽に腰掛け流暢に笑いをばら撒いている無我に飛び込む社会の油でべたべたになった私の心は赤らむ街を抜け歩くだけでポッと安心ポッととぬくいこの場所一帯消えるんだ次の冬には消えるんだ老いた飲み屋や食堂
2021年6月4日 22:24
マボロシの中で夢を見ておりましたわたしはそういう人にはなれませんそういうふうに叫ぶのを私は幾度も無視をしてマボロシの中で夢を見ておりました「そうあるべき」にはなれません取り繕った笑顔は嘘でありました自分でも気が付かぬ巧妙で精巧な笑顔でありましたほんとうはほんとうのほんもののわたしはある日ぽとりと堕ちたのは黒い軀になりかけの小さなわたしでありました本当
2021年5月31日 21:39
そこで笑い暮らす盆暗は日がな一日幸せに幸せなだけの妄想をそこで寝転ぶ盆暗は日がな一日幸せにどこのどなたの毒にもならずそこで息する盆暗は日がな一日幸せにただ生きる事に感謝する四肢を投げ出し地の球を力の限り抱きしめるいつかあなたのお役に立てるその日のことを夢に見ながら
2021年6月1日 11:28
あの鉄柱よりも遥かに高い水彩の様な快晴雀が近くで鳴いてるがどこに居るかはわからない流れる1秒が織りなせば騒めく杉も雀の羽ばたきも流線系の実態となるそれくらい大事な重なりの秒間を私はただ小高いだけの細道から街の外れの住宅の群れを反神妙な顔持ちで緩くてぬるい表情筋を携え眺め下ろしているだけの昼堕落それを悪人と罵られては擦り減った私の思の動く部
2021年5月27日 17:09
僅かな晴れ間の梅雨の午後憶えたばかりの自転車ならしまだランドセルの残感が背にあまるなか日頃は縁遠い駅の裏側まで私は両足を回していた緑広がる田の間立っているのは畦角に地蔵表情無くても私に対し友の様に朗らかにはにかむ地蔵の立つ畦道の角っこを私は軽快に曲がっては地蔵にまたねとはにかみ返す緑広がる田の間瞬き終わると黄金色摩訶不思議に逢う田んぼの変身
2021年5月22日 21:25
無いものを欲しがり大切なものを放り出し放っておいて放っておかないで時に雑草のようになりたいの時にショウケースの花になりたいの人が好きで人が嫌いで人に嫌われるのが怖くてどうでもよくなった裸になりたいの虚栄心が邪魔をするそのあたりで野垂れ死ぬ夢を見る
2021年5月9日 12:41
無の荒野を泳ぐ宇宙船のなかじゃおそらく私は心が虚震して潰されるのであろう海面を遠くに見上げる潜水艇のなかそれは私ひとりの操縦席で無駄なものなど何もない引っ越したての狭い部屋の様に簡素な布団でうたた寝中操縦桿は存在しないからずっとこの場所で停泊しているたまにカモメが海面の上で騒ぎたてている様が好きだぴゅーぴゅーららら私は身体を揺らし潜水艇を少し