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2020年10月の記事一覧

裸の賢者は夢のなか

裸の賢者は夢のなか

こんな時間に目が覚めてしまった

夜とは違う

眼が眩むほどにまぶしい世界

太陽の暑さに羽毛が邪魔だと初めて感じた

鹿やキツツキがハツラツと生を全うしている

私は知識だけは誰にも負けないと

世の理の傍観者だと自負してきた

しかし

それは夜の世界の小さな森の中だけの話

私はとんだ世間知らずと自分を恥じた

逃げも隠れもできない

見通しのいい白昼の木の上

ホー

ホー

私は仲間を起

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新しい朝

目を閉じたまま
張りつめた空気を 
頬で感じ始める季節

西向きの小窓にさえ
働き者の秋の精たちが
控えていると見え

遮光カーテンの隙間から
採れたての朝の光を
射し入れてくれる

夢の余韻
重厚なまでの静けさ

ようやく重い瞼を開けば
今日も わたしの「生きる」を作る
さまざまなものが、動き出す

玄関の脇に植えられた オリーブの木
物言わぬものたちとの出逢い
呼吸の音……

ああ、まだ歩き慣

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真実

真実

彼は、
深々とした暗がりにいて
いつまでも弱々しく
傷つきやすく
ありのままだった
しかし、真実だった

「誰かに I LOVE YOU と言える力」

「誰かに I LOVE YOU と言える力」

言葉のない時代は
人間も鳴き声で伝えていたのでしょう
限りなく歌に近い鳴き声で

今まで会えた人と
会えなくなって
人生の景色が変わってゆくなら

ポエトリーしてゆく
未来の予感を
新しい成分を散りばめるように

今まであった街並みのひとつ
もう見られなくなって
記憶の景色が変わってゆくなら

ポエトリーしてゆく
新しい景色をポエトリーしてゆく
世の中の始まりのように

空が出現したように
大地が

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「ピュアの調律を覚えるころ」

「ピュアの調律を覚えるころ」

ピュアの調律を覚えるころ
君のコンチェルトはFinできる

信念は転がっているものではない
信念は拾えば所有できるものではない

小さな あの場所で あの場所に
悔し涙があって

ピュアの調律の方法がわからなくなって
どんな自分でいればいいのか

あのころの君は

毎日のように

違う自分になりすましていた

ひたむきに 生真面目に

違和感の正体を突き止めたがっていた

そう思える 自分であり

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瞬間の黄金世界は謎のまま|セレスチャルエクスタシー

瞬間の黄金世界は謎のまま|セレスチャルエクスタシー

  黄金色の成す
  あの一瞬のために
  存在するかのような

  全てが吹き飛ばされ
  黄色に覆われて輝く
  永遠の
  瞬間

  この一瞬が
  全ての性の源であり
  全ての聖の証明

  あなたと出会うとき
  わたしは全ての人と出会い

  あなたに愛を感じるとき
  全ての人に愛を感じ

  あなたを抱擁するとき
  あらゆるものを抱擁する

  あなたと溶けあうとき
  わた

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土の海に張る氷

土の海に張る氷

いくら爪を立てても

地面は硬く

アスファルトの下まではどうしても帰れない

少し前までは見渡せば柔らかい土が広がり

掘っても

掘っても

私の世界が待っていた

土の中で産まれ

暗闇で育った私は

地底で暮らす家族に

この先ずっと逢えないのだろうか

地上に来てからは

美しい絵画と珈琲

ジャズにシネマと

時間を忘れて酔いしれた

もぐらの私は知らなくてよかった世界

地底には無い

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ひとつの優しさで歩き出し

ふたつの優しさで走り出す

みっつの優しさで

僕は空だって飛べるよ。

その優しさを

やさしい光に変えて

君の明日を照らしてゆくよ。





Photo by あきらさん
https://twitter.com/akira_k0423

【詩】スナフキン

【詩】スナフキン

訪れたのは君に会うためじゃない
そもそも君は此処にはいない
谷の翌檜が風邪を引いたので
薬を届けに行くところだ

足のない風が五線譜をくすぐり
君はひと振りの枯れ枝
弦に乗せた指が踊り始めると
歌は胞子となって宙へと立ち昇る
それは現人をも奮い立たせ
朽ちた根さえも蘇らせる
剣を眠らせ精霊たちは聞き耳を立てる
苔むした礎、絡まる蔦の行く先に
昔話の続きが停泊している

君は今しがた、あっちの山にい

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自由

自由

宇宙のどこかで
鳥が生まれた

鳥はか細い翼で
大空を飛んだ

どこまでも高く
どこまでも遠く

ひとり飛んだ

美しい夢の中で
鳥は死んだ

彼の見てきた世界を
誰も知らない

彼が死んだという事実だけが

夜霧のように 
かすかに広がり

やがてそれも
朝の光に消えていった

星のいたずら

星のいたずら

お祭りランタンの正体は

そうっと空から降りてきた
星のいたずら

そうっとランタンへ忍び込み
星たちがおかしそうに笑うたび
あたたかな灯りが揺らめいた

星の素敵ないたずらで
しばしの間の夢の国

子供らの笑顔が灯の下で輝く

https://www.instagram.com/p/CGSbop4gpbK/?igshid=1vwfg9jtbuohq

生きる

生きる

あなたはあなたとして生まれてきた
わたしはわたしとして生まれてきた
最初はみんな、生まれてきたんだ

自分は一体どこから来たのか
どこからが自分の「本当の始まり」なのか
誰もが一度は直面する不思議

思えばこんなに重大な疑問を
深い記憶の淵に置き去りにしたまま
今の今まで生きてきた
自分が何者であるか問いもせず
自分が自分であることを疑いもせず

最初はみんな「生まれて」きたのに
生まれた瞬間から

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秋は蜜柑

秋は蜜柑

そうだよ。

秋は蜜柑、おちたところ
香るは金木犀の若葉だった

狼は地面を土を
いや、香りを舐めては
気づいた

駆け廻るは
牙の如く光り
比べぬ憎悪こそ
呼べもしない悦びだと

奥から続いた日々
雨に打たれる夜は白蔭
美しさの畏れは散った

忘れるものか。

メモ

メモ

空虚の中に漂う確たる美しさを見出しては
美しさの理を彫りだしたのである。
現存する其れが在らずとも現れるだろう。
彼は儚くともやってのけたのダ。狂わしい喜びに円舞することも、
歴史に悲鳴をあげることも、全てを捨て、前に進むのである。

                ———新雪散る金閣寺にて