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湯気の陽だまり(癒しのデッサン)
グァテマラの煎豆をミルで挽くと小気味よく破砕しさらさらとした中挽きの仕上がりになった。指先で、つまむ。
すでに、いい香り。
沸騰させて火を止め落ち着かせたヤカンから挽き粉の収まったドリップペーパーに湯を注ぐと
ジュアーっと
ふくらみながら吸い込んでいく
控え目な音を立てながらポツポツと染みて泡立つ湯気がほころびはじめた。
この待つ時間が、愉しみだ。
マグカップから
香りに、口をつけてみ
【PCR検査という通貨儀礼】(コロナ禍の演劇2021) 第10話
2月も末日、自宅にPCR検査キッドが届いた。
「演劇は、罪なのか」
小型の段ボール箱のソレは厳重に仰々しく包まれていたが、開けると小学生の時に見た学研の知育玩具キッドみたいに拍子抜けした検査回収具が、一式揃って入っていた。
不謹慎にも
「免罪符」という言葉が浮かんだ。
ルネサンスも末期の頃、神からの罪を許される護魔符みたいなものを教会が売ったらバズって大儲けしちゃってルターの宗教改革のキッ
山口さんの、プロンプ。 (コロナ禍の稽古風景)第9話
劇場の最上階にある
屋根裏の稽古場に来た。
窓を開けると
桜の枝々に公園を見下ろす
中野から遠くかすむ街が並び
家々の屋根が西日に眩しい
花は、まだ咲かぬ
(この裏は公園だったのか、知らなかった)
【前回の話し】
二月下旬の小春日和。
稽古場を目白の風姿花伝という地下スタジオから
僕たちは公演を行う中野に拠点を移した。
夕方メインだった稽古が、昼から開始になった。
もう緊急事態宣言で苦
春の白い羽根(モクレン)
はる、もくれん
ツルリとした枝の先
真白の鳥たち
背伸ばし
まあるく
ふくらませ
梅はとなりで
紅を落として
小枝に若葉の
支度をしている
風が吹く
鳥たちは
飛び立つ前に
花ひらく
やどり木の群れは
白い蕾(つぼみ)
ずいぶん咲いた
ひろげると
ともされる
白い灯(ひ)の鳥
春の漁(いさ)り火
てんてんと
ひとに聞いたら
木蓮という花だった
あたたかい
風と光に
ほむ
マスク姿でモノを云う術(コロナ禍の稽古風景2021)第8話
稽古中のマスクの着用について。
このご時世、例えば電車の中では必要不可欠なことを必要最小限に小さな声で言葉も少なに伝えること、なるべく喋らないことは社会人の嗜みとして身につけるべきものであるが、
芝居の台詞は如何(どう)だろう、そうはいかない。
マスクをしながら相手を怒鳴りつけ、嗚咽するような時に
大きく声を出して息を吸おうとすると不織布はすでに湿り気を帯びた水分が繊維の空気を遮断し吸おうと
コロナ禍の稽古場にて。 (「シバイハ戦ウ」第6話)
おそらく世界中、多くの人たちがキャパオーバーで過ごした、この一年。
僕に、何ができるだろう。
次週からの場所を探している2月の杉並区の稽古場も残り数日となった。3月までの非常事態宣言によって稽古場をジプシーしている僕らは今日、会議室を稽古に使っている。来週からの稽古場が未だ決まらずにいた。
「ごっこ遊び」
演技の根っこは遊び心だ。
芝居は台詞で創られる。
俳優は台本より言葉を編んで世界を創