エヌ

アイルランド、スペインを経て奈良暮らし。夫はぽよぽよスペイン人。ふだんは漫画翻訳の周辺…

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アイルランド、スペインを経て奈良暮らし。夫はぽよぽよスペイン人。ふだんは漫画翻訳の周辺をうろうろ。noteではエッセイと妄想の間のようなものを書いています。

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記事一覧

ムーン・パレスのこと

ポール・オースターが4月30日に亡くなったとというニュースが、ゴールデンウィークの真っ只中に流れてきた。 これは私にとって、ちょっとした事件だった。 はじめはみぞ…

エヌ
3週間前
10

コーヒーゼリー

天真爛漫で明るく、いつも持ち前のユーモアで周囲を和ませていた仕事仲間が、無断欠勤で突然解雇になった。上司からその決定を告げられたときは、どうしようもないと理解し…

エヌ
3週間前
8

人差し指の長期休暇

クリックしすぎ?による右手人差し指の腱鞘炎発症からはや数週間。 書きたいこと、描きたいものいろいろあった気がしますが、日常で精いっぱいになっている内に霧散してし…

エヌ
1か月前
8

春の雨

雨の日の本屋さんが好きで、仕事終わりにいそいそと向かった。 19時半の蔦屋書店。 まばらに埋まるスターバックスの座席を眺めて、ほっとする。 平日のこの時間にくるお客…

エヌ
2か月前
6

作文の入り口

先週の土曜日、ほんの入り口さんで開催された「作文の入り口スペシャル」に参加した。初参加なのに、いきなり3時間のスペシャルで大丈夫かという一抹の不安もあったものの…

エヌ
2か月前
7

深夜書店

立春らしい。昨夜、久々に眠ることができなかった。 より正確には、うまく眠りの波に乗ることができず、取り残されてしまった。 不眠はつらい。隣に誰かが寝ていても、この…

エヌ
3か月前
12

おまもり

昨年、おまもりを買った。 正確には、ひいらぎさんのおまもりブレス。 SNSで美しい商品写真を目にして以来、頭の中が深い蒼色の石でいっぱいになってしまい、入荷と同時に…

エヌ
4か月前
9

振り返る間もなく

2023年が終わってしまうらしい。 なんだかそれも悔しいので、振り返りきれないこの年を、振り返る努力をしてみようと思う。 1月、2月→誕生日は京都のちょっと良いホテル…

エヌ
4か月前
6

ホームシックとアウェイシック

先週夫が体調を崩し、めずらしく5日間ほど回復しなかった。 朝2時間半だけパートの仕事をしているので、なんとか仕事には行って、帰ってきてからぼんやり家事をこなし、…

エヌ
5か月前
5

光を求めて

ロンドンのテート・モダンが大好きなこともあり、テート美術館 光展へ行ってきた。有名なターナーの絵画だけでなく、映像や写真、立体作品など、「光」を題材としたさまざ…

エヌ
5か月前
10

言葉の贈りもの

マネジメントというものをするようになってから、3年近くが経過した。 しかしここ最近はチームのメンバー数が10人を超え、気づけば数字の管理に追われ、常に業務過多な状況…

エヌ
5か月前
7

ふたりの言語

スペイン人と結婚していると話すと、「お家では何語で話しているんですか」と質問を受けることがある。 出会いの地はアイルランドで、当時はお互い英語を話していたため、…

エヌ
6か月前
19

奈良よ

「奈良の大仏商法」という言葉は、たしか中学生ぐらいの頃にはじめて聞いた。 当時はあまり意味がわからなかったけれど、大人になり経済活動に参加するようになったり、超…

エヌ
7か月前
5

流れていく

ぽつぽつと、ときどき言葉が「降りてくる」ような瞬間があるものの、やるべきことがあったり疲れていたり、なんだかんだで言葉をキャッチできないまま、過ごしているうちに…

エヌ
7か月前
3

東京でなにしてたの

ふと東京に行こうと思い立って、3泊4日、東京に行ってきた。 田舎に住んでいると、東京でやりたいことが細々と溜まってきて、ふつふつとする瞬間がある。 「ああ、東京へ行…

エヌ
9か月前
20

引っ越しあれこれ

いまの家から引っ越したいと思った理由が3つ。 ひとつは周辺の道が平坦でなく、坂が急すぎること。これが理由で特に炎天下の日など、友だちを呼びづらい。 もうひとつは…

エヌ
9か月前
9
ムーン・パレスのこと

ムーン・パレスのこと

ポール・オースターが4月30日に亡くなったとというニュースが、ゴールデンウィークの真っ只中に流れてきた。
これは私にとって、ちょっとした事件だった。
はじめはみぞおちのあたりがきゅっと縮まり全身が寒くなったような感じがして、状況を飲み込んでしばらく経つと胸がしんとした。

確か高校2年生の頃だったと記憶している。
本好きな友人が「この本すごいよ」と言って貸してくれたのが新潮文庫の『ムーン・パレス』

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コーヒーゼリー

コーヒーゼリー

天真爛漫で明るく、いつも持ち前のユーモアで周囲を和ませていた仕事仲間が、無断欠勤で突然解雇になった。上司からその決定を告げられたときは、どうしようもないと理解しながらも「仕事ぶりは問題なく、期日もしっかり守ってくれるので助かっていた」と勝手に口が喋っていた。

晴天の霹靂、とはこのことだと思った。
リモート環境で周囲も無断欠勤に気づいておらず、退職の理由も不明なまま日常は何事もない顔をして過ぎてい

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人差し指の長期休暇

人差し指の長期休暇

クリックしすぎ?による右手人差し指の腱鞘炎発症からはや数週間。

書きたいこと、描きたいものいろいろあった気がしますが、日常で精いっぱいになっている内に霧散してしまいました。

テーピングしすぎで指が動かなくなりそうなのが怖くて、いまそろそろと書きはじめています。

まだぎこちなく、例えるなら人間の身体を乗っ取ったばかりの宇宙人が手をグーパーするときの感覚。

そんな心許ない状況ではありますが、転

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春の雨

春の雨

雨の日の本屋さんが好きで、仕事終わりにいそいそと向かった。
19時半の蔦屋書店。
まばらに埋まるスターバックスの座席を眺めて、ほっとする。
平日のこの時間にくるお客さんには、なんとなく親近感をおぼえる。

雨宿りをしていなくても、なんとなくみんなで雨宿りしているかのような、連帯感。同じ水槽に閉じ込められた魚の群れのようでもある。気づけばもう受験シーズンも過ぎて、思い思いに過ごしている大人の姿が多い

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作文の入り口

作文の入り口

先週の土曜日、ほんの入り口さんで開催された「作文の入り口スペシャル」に参加した。初参加なのに、いきなり3時間のスペシャルで大丈夫かという一抹の不安もあったものの、はじまってみればあっという間の、濃厚な時間だった。

参加にあたって、事前に宿題を出された。
お題はなく、A4用紙1枚程度という自由度の高さがかえって難しかったが、
しばらく考えていると最近心に留まった出来事が表面にぷかぷかと浮かんできた

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深夜書店

深夜書店

立春らしい。昨夜、久々に眠ることができなかった。
より正確には、うまく眠りの波に乗ることができず、取り残されてしまった。
不眠はつらい。隣に誰かが寝ていても、この世にひとりぼっちのような感覚に陥る。
夫は完全にあちら側の世界にいて、呑気にいびきをかいていた。
私はまんじりともせず2時間ほどベッドの中にいたが、一向に眠れる気がしない。

その状態が苦しく、嫌気が差してきて、仕方がないので諦めて起きた

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おまもり

おまもり

昨年、おまもりを買った。
正確には、ひいらぎさんのおまもりブレス。
SNSで美しい商品写真を目にして以来、頭の中が深い蒼色の石でいっぱいになってしまい、入荷と同時に「ブルータイガーアイxラブラドライト」のブレスレットを注文したのだ。

人生の節目節目で、主に心が弱ったタイミングでおまもりを必要としてきた。
それは物だったり、言葉だったりした。
どちらもそのときの自分にぴったり寄り添ってくれて、役割

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振り返る間もなく

振り返る間もなく

2023年が終わってしまうらしい。
なんだかそれも悔しいので、振り返りきれないこの年を、振り返る努力をしてみようと思う。

1月、2月→誕生日は京都のちょっと良いホテルに泊まって魂の休息。ややこしかった確定申告を無事乗り越える。それ以外は記憶なしw

3月→3年以上遠距離状態だった夫がようやく日本へ。各種手続きでそわそわ。

4月→某大企業から仕事のオファー。オンライン面接など頑張っていた。あわよ

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ホームシックとアウェイシック

ホームシックとアウェイシック

先週夫が体調を崩し、めずらしく5日間ほど回復しなかった。
朝2時間半だけパートの仕事をしているので、なんとか仕事には行って、帰ってきてからぼんやり家事をこなし、昼寝をして、次の朝も体調が悪い…という状態がだらだら続いた。今年の風邪は喉にくるらしく、ずっとのど飴を舐めながらあまり声を発さずに過ごしていた。

声が特徴的な人なので、家の中で声がしないこと、そして小さくずっとスペイン語のラジオをかけてい

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光を求めて

光を求めて

ロンドンのテート・モダンが大好きなこともあり、テート美術館 光展へ行ってきた。有名なターナーの絵画だけでなく、映像や写真、立体作品など、「光」を題材としたさまざまな作品に触れられておもしろかった。

国立美術館が無料のイギリスと比較するとお安くないチケット代かもしれないけれど、内容が実に多彩で「お得感」を感じられる展示内容だったように思う。

自然と足が止まったのはデンマークの作家ハマスホイの絵画

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言葉の贈りもの

言葉の贈りもの

マネジメントというものをするようになってから、3年近くが経過した。
しかしここ最近はチームのメンバー数が10人を超え、気づけば数字の管理に追われ、常に業務過多な状況。ポジティブな気持ちで働くことが難しくなっていた。

メンバーの体調不良や休職も発生し、それでも変わらぬ数字を達成するよう求められる日々。人間というオーガニックな存在をまるで無視しているかのような、無機質なエクセルのグラフと数字たち。会

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ふたりの言語

ふたりの言語

スペイン人と結婚していると話すと、「お家では何語で話しているんですか」と質問を受けることがある。

出会いの地はアイルランドで、当時はお互い英語を話していたため、ベースの言語は英語である。しかし、英語は2人の母国語ではないため、「あれ何て言うんだっけ」という場面では母国語の単語をいったん伝え、Google翻訳などで英語、または相手の母国語に変換する。

このあいだあった例は”persiana”

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奈良よ

奈良よ

「奈良の大仏商法」という言葉は、たしか中学生ぐらいの頃にはじめて聞いた。
当時はあまり意味がわからなかったけれど、大人になり経済活動に参加するようになったり、超観光地のバルセロナに住んだり京都に通ったりするうちに、やはり「奈良はやる気がない」と感じるようになった。

自分の出身地だから、厳しく見てしまう面もあると思う。
そしてそのやる気のなさ、いろんなことがどうでもいいのかな?と思わせる寛容さが、

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流れていく

流れていく

ぽつぽつと、ときどき言葉が「降りてくる」ような瞬間があるものの、やるべきことがあったり疲れていたり、なんだかんだで言葉をキャッチできないまま、過ごしているうちに、流れ星のようにあっという間に流れてしまった。

「ごめんね」と思う。なんとなく罪悪感。

降りてきた言葉を記すこと以上に重要なことなどなにもないと言えるまで振り切って、隠者のように暮らすことができたら、と空想する。

腹が減ったり睡眠が必

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東京でなにしてたの

東京でなにしてたの

ふと東京に行こうと思い立って、3泊4日、東京に行ってきた。
田舎に住んでいると、東京でやりたいことが細々と溜まってきて、ふつふつとする瞬間がある。
「ああ、東京へ行かなければ」と思い、淡々とホテル、新幹線を予約し、勤務先に休暇申請し、リュックに荷物をまとめた。

友人と会う予定はミニマムにしていたけれど、会ってみたらやっぱり楽しかった。
コロナ渦で人となかなか会えない状況だったとき、久々に人に会う

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引っ越しあれこれ

引っ越しあれこれ

いまの家から引っ越したいと思った理由が3つ。

ひとつは周辺の道が平坦でなく、坂が急すぎること。これが理由で特に炎天下の日など、友だちを呼びづらい。

もうひとつは冬が寒すぎること。
家には窓が多いので、明るいし風通しもいいのだけど、冬はその窓を通してひえひえの空気が伝わってきてつらい。寝室にしている部屋は2面が全面ガラス張りで、1面はシャッターを閉め切りにしているけれどそれでも寒い。
断熱シート

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