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光を求めて

ロンドンのテート・モダンが大好きなこともあり、テート美術館 光展へ行ってきた。有名なターナーの絵画だけでなく、映像や写真、立体作品など、「光」を題材としたさまざまな作品に触れられておもしろかった。

国立美術館が無料のイギリスと比較するとお安くないチケット代かもしれないけれど、内容が実に多彩で「お得感」を感じられる展示内容だったように思う。

自然と足が止まったのはデンマークの作家ハマスホイの絵画。多くの人が一度は目にしたことがある、女性の後ろ姿が印象的な、室内の微細な光をとらえた作品群。 Interior with Young Woman Seen from the Back

そして今回の展示ではじめて知った、同じくデンマーク出身のオラファー・エリアソンの光のモビール。

照射される光を反射しながら、ゆっくりと時間をかけてまわる多面体のボール。連動する形で、室内に散りばめられる小さなプリズムの光。じっと見つめていると、なんだか吸い込まれてしまいそうな静かな力が漲っていた。素材はメタリックに見えるのに、どこか有機的で生命が宿っていそうな、宇宙の惑星を縮小したらこんな感じかしらと思わせる存在感だった(アーティスト自身が環境意識が高く、おそらく光源がソーラーパワーということは後で知った)。

私は以前スペインに住んでいたけれど、太陽が燦々と降り注ぐ国に住んでいると、
光のよさに気づけない。人々はサングラスをし、日陰のテラス席を取り合うようにして座り、紫外線のせいで洗濯ひもの跡がついた、色褪せたTシャツを着ていた。

一方イギリスやアイルランドでは、サンルームが外付けされた住宅が多く、家主はそこに設置されたロッキングチェアーに深く身を沈め読書や編み物に耽っていた。少しでも多くの時間太陽に身を晒すことで、体内でビタミンDを作る作戦だ。留学生時代間借りしていた屋根裏部屋には天窓があって、朝から日の光が差すとその日が最高にいい日になる気がした。

光の少ない国は光を求め、
光の多い国は光を遮断する。

芸術作品にもそれがよく現れていると思った。
暗い空から海に差し込んだ一筋の光。その光を反射して異界への入り口みたいに部分的に明るくなる海の色。窓辺の微かな光。光のおかげで家具に陰影が生まれ、立体になる世界。仄暗い室内で、どこまでも白い女性の首筋(外の天気はおそらく曇り。空はどこまでも高くて、暗い)。南仏への旅ではじめて目にした、惜しみなく降り注ぐ圧倒的な光。急にカラフルに色づく木々と、川面と、町。まるで別世界。

イギリスやドイツ、デンマークの作家の作品が多かったのも、その土地で生まれ育つことで自然と光に対する感度が高くなるせいかもしれない。彼の国の方々からこれでもかと光に対する愛を提示され、「日」の本の国に住んでいるとつい見逃しがちになる光のありがたみにも気づくことができた。

会期終了前に、できればもう一度行きたい。

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