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#小説
爆裂愛物語 第十一話 獣の王
「海はいいね。広くて大きい、空と海に囲まれてると、なんか、故郷に帰ってきた気分になるよ。風も気持ちいいね~。波の音も懐かしい……。 あっはっはっはっ! 天を仰ぐぜ……! こりゃいい気分だ!」
風がやみ穏やかな波が押し寄せる海原、小さな船に立ちつくす我路たち
………………(みんな無言になる)
………………(我関せずな静香)
…………………………
(無言無表情のアイ)
……………………(同じく無
爆裂愛物語 第十話 死と永遠と母子の絆
その日は、雨だった。叩きつけるような激しい雨音は、まるでカーテンコールの終わりを報せるベルのようだった。雨はやがて豪雨へと変わり、雷が鳴り響く。まるでこれから起こる物語を先取りしているかのような雷鳴と雨音だった。そう……戦争の予感を……
「きた」
鉤十字を背負った黒い軍用ヘリコプター。その数、十三機。彼等がGMC本社に近づいてくる。まるで、自分たちこそが地獄の使者なのだと主張しているかのように
爆裂愛物語 第九話 BURST LOVE STORY
夏空が眩しい。雲一つない、青々とした空。まばゆい青が視界のすみから隅まで広がっていた。それを焼き付けるような白い日差し、燦々と降り注ぐ陽差しの中を……凪と我路は歩いて行く。
夏風が吹くと、艶やかな黒髪がさらさらと揺れ、たなびく。さらりとした艶のある髪から漂う甘い香りが、我路の鼻腔をくすぐった。
「? どうしたの?」
そんな黒髪の主である彼女は、我路に向かって小首を傾げる。
「いや……よく似合
爆裂愛物語 第八話 心臓に向かう折れた針
大日本翼賛会の寮へ、凪とアイが帰ってきた頃には……もう昼だった。
「何処に行っとったんや! 心配したぞ!!」
フォルクスワーゲンVW38で帰ってきたアイと凪を、一番最初にそう出迎えたのは我路だった。
「つーかなんやねんこのモダンな車は! ってかアイはサングラス着けとるし、なにキメとんねん!」
「私は眼も含め、紫外線に弱いためこのような対策が必要なのです」
「……だからってなんでフォルクスワーゲ
爆裂愛物語 第七話 悪魔の使徒
大日本翼賛会事務所に帰った我路たち。そこでは、普段は静かな事務所が、波のようにざわついている。
「なるほど……大東亜戦争の業か」
並さんが深く頷く。
「しかしお前ら、こっからナチス相手に闘うってエラいもんにオレら巻き込んでくれたなー笑」
宮さんは笑いながら言った。
「まぁ、その通りですけど……でもこれしかなかったんですよ」
そう我路が答えると、隣の園さんも笑いを浮かべる。
「これでオレら死
爆裂愛物語 第六話 頭の中の怪物
夜が訪れる。空には雲がうっすらとかかっており、月は雲に隠されて見えない。
街灯が少なく、田舎町の郊外にあるこの町は暗く静まりかえっている。
「我路ー」
「ん?」
「お腹すいたー。お弁当食べようよー。っていうか、もう食べたーい!」
と凪が舌足らずな声で言った。
「もうすぐ寮なんだからガマンしようぜ。つか、それまでガマンしろ」
「はーい。買い物つきあってくれてありがとう。明日も一緒にお出かけしよ
爆裂愛物語 第四話 家族のぬくもり
「ふぁ〜あ」
ある朝、我路はいつものように大きなあくびをしながら目を覚ました。そして寝ぼけ眼のまま、いつものように寮の扉を開ける。
「おはよーダン」
「おはよーさん」
我路は間の抜けたような声で言った。まだ完全に目覚めてない感じだが、これがいつものことなので特に問題はないだろう……と我路は思った。
「さて……今日も仕事仕事!」
そう言って車の運転席に座り、エンジンをかけよう……としたが、
「