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スキスキノート

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スキには託しきれないダイスキ!の気持ちを感じたnoteを勝手に追加しています。
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#小説

ねえ、「君」は、実は君のことなんだ

ねえ、「君」は、実は君のことなんだ

noteって知ってますか?

聞かれて一瞬、不自然な間ができた。ああ、聞いたことある、と答えた私の声は少し上擦っていたかもしれないけれど、目の前の後輩は気付いていないようだった。知ってる、私もお茶っていう名前でnoteやってるよ、とは、何故か言えなかった。

仕事が終わった後、喫煙所の横にある自動販売機で缶コーヒーを買おうとしたら、煙草を吸いながら熱心にスマホを覗き込んでいる後輩が目に入った。相変

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風の強い春の日には

風の強い春の日には

電車の窓を流れてゆく風景に、この沿線にはこんなに桜の木が多かったのかと思う。
きっと去年の今頃も、その前も、その前も、私は同じことに驚いていたのだろう。
忘れていたけれど。

駅に貼られたポスターのフレーズに足が止まった。
桜並木の通り抜け。

桜より人混みを見に行くようなものじゃない。
あなたはそう言って、なかなか私の誘いに乗ってくれなかったよね。

違うのに。
桜を見たかったわけじゃない。

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