仏都伊勢を行く ~神と仏の伊勢神宮~

一般の観光案内や参拝ガイドではめったに語られない伊勢神宮、そして宇治山田(現在の伊勢市…

仏都伊勢を行く ~神と仏の伊勢神宮~

一般の観光案内や参拝ガイドではめったに語られない伊勢神宮、そして宇治山田(現在の伊勢市)のことを、やや斜め上からつづっていきたいと思います。

記事一覧

伊勢参宮犬シロの「犬塚」を参ってきた

元々は荒ぶる神であり、天皇さえも制御できない天照大神を、都から遠く離れた伊勢(宇治山田)の地に祀ることになったのが伊勢神宮の沿革ですが、時代が下って江戸時代にな…

伊勢神宮と熊野古道(その2)

今年で指定20周年となるユネスコ世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」に関しては、熊野三山と伊勢神宮がセットで語られる場面を多く見ます。しかし両者の関係は良好だっ…

伊勢神宮と熊野古道(その1)

平成16年(2004年)7月、ユネスコが「紀伊山地の霊場と参詣道」を世界遺産に登録しました。紀伊山地には、熊野三山、高野山、吉野・大峯という、神道、仏教と、この2つが…

伊勢神宮 式年遷宮 の準備始まる・・・しかし費用は?

4月9日、三重県内の各マスコミが一斉に、伊勢神宮で令和15年(2033年)に斎行予定の第63回式年遷宮の準備が始まったとのニュースを報じました。 式年遷宮は伊勢…

伊勢の隠れた桜の名所・旧豊宮崎文庫

伊勢神宮・外宮からぶらぶら歩いて10分ほどの旧豊宮崎文庫(とよみやざきぶんこ)に行ってきました。伊勢(宇治山田)で春の桜の名所と言えば、地元の方なら宮川堤、観光客…

二見浦にあった謎の伊勢神宮寺(廃寺を行く4)

伊勢神宮は長い歴史を有しており、仏教と深く融合していた時代もありました。その嚆矢となったのが、平安時代末期に東大寺の大仏殿再建祈願のため伊勢神宮で法楽を行った、…

内宮 春のスナップ

今日、4月1日から新年度を迎える方も多いでしょう。職場や学校など新しい環境での皆さんの生活が素晴らしいものであることをお祈りしつつ、春を迎えた伊勢神宮の様子を共…

伊勢神宮にあった国宝級大仏(廃寺を行く3)

伊勢神宮が成立したのは、神話は別として、史実としては5世紀から7世紀ごろという見方が多いようです。「続日本記」によれば、天平神護2年(766)に朝廷が伊勢大神宮寺…

斎宮跡発掘説明会に行ってみた

伊勢神宮に詳しい方なら、斎宮(さいくう)についてもよくご存じかも知れません。 現在の伊勢神宮は「日本の総氏神」として一般大衆が多く参拝に押し寄せる観光地のような…

犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その3/了)

伊勢神宮は明治時代に国家神道化してから、それまでの伝統ではあったものの、やや呪術的とも思えるような禁忌は多くが廃止されました。ペットが家族の一員のように扱われる…

犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その2)

江戸時代を通じて全国からの参詣者が伊勢神宮に来るようになり、その中には犬や牛も参宮に来たことが記録に残っています。第1回目では18世紀末の記録に残る参宮犬(おか…

犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その1)

伊勢神宮は内宮、外宮とも、犬や猫を連れて参拝することはできません。伊勢神宮公式ウエブサイトの「よくあるご質問」にあるように、ペットは入り口近くにある衛士見張所で…

南朝の拠点だった宇治山田(石水博物館「結城神社の至宝」展を見る)

今ちょうど、石水博物館(せきすいはくぶつかん)で開催されている「結城神社の至宝」展に行ってきました。ただし、全国の多くの方は、石水博物館も、結城神社も、よくご存…

伊勢神宮の寺 常明寺(廃寺を行く2)

前回、日蓮宗の開祖である日蓮が伊勢神宮を参拝して三大発願のために参篭し、神からの啓示を得たことを書きました。 しかし、古来から伊勢神宮は「神仏隔離」を貫いており…

日蓮と伊勢神宮(廃寺を行く1)

日蓮宗の開祖である日蓮上人は、言わずと知れた日本仏教界の偉人ですが、伊勢神宮とも深い関係があります。 鎌倉や比叡山などで修業した日蓮は、法華経の教えこそ釈迦の教…

Buddhists should come to Ise Jingu

"Shinto" is an ancient, traditional religion of Japan, and "Ise Jingu" (Ise Grand Shrine)is the center of the Shinto world. Amaterasu Omikami, the sun deity …

伊勢参宮犬シロの「犬塚」を参ってきた

伊勢参宮犬シロの「犬塚」を参ってきた

元々は荒ぶる神であり、天皇さえも制御できない天照大神を、都から遠く離れた伊勢(宇治山田)の地に祀ることになったのが伊勢神宮の沿革ですが、時代が下って江戸時代になると、庶民の守り神として、家内安全、子孫繁栄、万年豊作を祈願するために全国から多くの参宮客がお参りに押し寄せるようになります。
江戸時代の人口は末期でも約3000万人。その時に年間数十万人が伊勢参宮に来ていたのですから、中には数々の不思議な

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伊勢神宮と熊野古道(その2)

伊勢神宮と熊野古道(その2)

今年で指定20周年となるユネスコ世界遺産の「紀伊山地の霊場と参詣道」に関しては、熊野三山と伊勢神宮がセットで語られる場面を多く見ます。しかし両者の関係は良好だったわけではありません。

今回はその続きで、まず伊勢神宮(宇治山田)と熊野衆の武力衝突事例です。治承5年(養和元年、1181年)、熊野三山の社僧・湛増が率いる僧兵団が志摩国菜切島(三重県志摩市波切)を襲撃しました。これは、全国的な戦乱となっ

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伊勢神宮と熊野古道(その1)

伊勢神宮と熊野古道(その1)

平成16年(2004年)7月、ユネスコが「紀伊山地の霊場と参詣道」を世界遺産に登録しました。紀伊山地には、熊野三山、高野山、吉野・大峯という、神道、仏教と、この2つが習合した修験道の霊場があって、日本独特の信仰が根付いています。これらの霊場と、道者(修行者や参拝者)が歩く参詣道が世界的に価値のある文化資産と認められたのです。
これは誇るべきことですし、今年は指定から20周年にあたることから、地元や

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伊勢神宮 式年遷宮 の準備始まる・・・しかし費用は?

伊勢神宮 式年遷宮 の準備始まる・・・しかし費用は?

4月9日、三重県内の各マスコミが一斉に、伊勢神宮で令和15年(2033年)に斎行予定の第63回式年遷宮の準備が始まったとのニュースを報じました。
式年遷宮は伊勢神宮にとって最も重要な、20年に一度、社殿や鳥居、神宝などをすべて新しく作り替える神事であり、約1300年も昔から営々と続けられている、まさしく日本の誇るべき行事と言えると思います。

創設当時の伊勢神宮は皇室の宗廟であったので、当然ながら

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伊勢の隠れた桜の名所・旧豊宮崎文庫

伊勢の隠れた桜の名所・旧豊宮崎文庫

伊勢神宮・外宮からぶらぶら歩いて10分ほどの旧豊宮崎文庫(とよみやざきぶんこ)に行ってきました。伊勢(宇治山田)で春の桜の名所と言えば、地元の方なら宮川堤、観光客なら五十鈴川沿い、などを思い浮かべられることでしょう。しかし、かつてもっとも有名だった場所は、ここ豊宮崎文庫でした。

豊宮崎文庫とは、江戸時代の慶安元年(1648)に外宮に設立された、いわば図書館のような施設です。外宮に伝えられた書籍や

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二見浦にあった謎の伊勢神宮寺(廃寺を行く4)

二見浦にあった謎の伊勢神宮寺(廃寺を行く4)

伊勢神宮は長い歴史を有しており、仏教と深く融合していた時代もありました。その嚆矢となったのが、平安時代末期に東大寺の大仏殿再建祈願のため伊勢神宮で法楽を行った、東大寺大勧進の重源(ちょうげん)です。
源平合戦による平家焼き討ちにより、東大寺の大仏は大仏殿もろとも灰燼に帰しました。それを憂いた朝廷は、唐への留学経験があり、そこで得た建築知識で全国の寺院を再興した実績があった重源に再建を命じたのです。

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内宮 春のスナップ

内宮 春のスナップ

今日、4月1日から新年度を迎える方も多いでしょう。職場や学校など新しい環境での皆さんの生活が素晴らしいものであることをお祈りしつつ、春を迎えた伊勢神宮の様子を共有したいと思います。
毎月、1日、11日、21日は、伊勢神宮の内宮と外宮で「神馬牽参」(しんめ・けんさん)という儀式が行われます。朝8時ごろに神馬が正宮(本殿)前で参拝を行うもので、厩舎から神職に導かれて参道を歩き、神前できちんとお祈りする

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伊勢神宮にあった国宝級大仏(廃寺を行く3)

伊勢神宮にあった国宝級大仏(廃寺を行く3)

伊勢神宮が成立したのは、神話は別として、史実としては5世紀から7世紀ごろという見方が多いようです。「続日本記」によれば、天平神護2年(766)に朝廷が伊勢大神宮寺のために丈六仏像を造立させたという記述があり、「太神宮諸雑事記」によればその翌年の神護景雲1年(767)に称徳天皇が”逢鹿瀬寺(おうかせでら)を大神宮寺とする”宣旨を下されたという記述も見えます。
この話は、奈良時代の皇室の仏教への崇敬は

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斎宮跡発掘説明会に行ってみた

斎宮跡発掘説明会に行ってみた

伊勢神宮に詳しい方なら、斎宮(さいくう)についてもよくご存じかも知れません。
現在の伊勢神宮は「日本の総氏神」として一般大衆が多く参拝に押し寄せる観光地のようなイメージですが、飛鳥時代の7世紀から鎌倉時代の14世紀ごろまでは全くそうではありませんでした。天照大神の神威を恐れた崇神天皇が、皇居から遠ざけるために伊勢(宇治山田)の地に祀ったのが伊勢神宮・内宮なのですから、天照大神の御霊を鎮め、この世に

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犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その3/了)

犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その3/了)

伊勢神宮は明治時代に国家神道化してから、それまでの伝統ではあったものの、やや呪術的とも思えるような禁忌は多くが廃止されました。ペットが家族の一員のように扱われる21世紀の今から見れば、伊勢神宮の犬に対する強い禁忌の伝統はやや理解しがたいほどです。
三重大学の塚本明先生による「近世伊勢神宮における動物の穢れと生類憐み」という論文を参考に読み解いてみたいと思います。

そもそも伊勢神宮で動物、特に犬を

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犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その2)

犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その2)

江戸時代を通じて全国からの参詣者が伊勢神宮に来るようになり、その中には犬や牛も参宮に来たことが記録に残っています。第1回目では18世紀末の記録に残る参宮犬(おかげ犬)について書きましたが、その約60年後、文政13年に(1830年)に出版された御陰参宮文政神異記に書かれた参宮犬を紹介します。

前年に伊勢神宮の式年遷宮があった文政13年は、前回の明和8年(1771年)のお蔭参りからほぼ60年後に当た

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犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その1)

犬がお伊勢参りに来た(伊勢神宮と犬 その1)

伊勢神宮は内宮、外宮とも、犬や猫を連れて参拝することはできません。伊勢神宮公式ウエブサイトの「よくあるご質問」にあるように、ペットは入り口近くにある衛士見張所で預かってもらう必要があります。衛士見張所での預かり料は無料ですが、内宮の近くには有料のペットホテルもあります。
なぜペットがダメなのか、明確な説明は書かれていませんが、歴史的に、特に犬の場合、境内でオシッコをしたりと神聖を汚す動物であるため

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南朝の拠点だった宇治山田(石水博物館「結城神社の至宝」展を見る)

南朝の拠点だった宇治山田(石水博物館「結城神社の至宝」展を見る)

今ちょうど、石水博物館(せきすいはくぶつかん)で開催されている「結城神社の至宝」展に行ってきました。ただし、全国の多くの方は、石水博物館も、結城神社も、よくご存じないかもしれません。

これら2つは三重県津市にあります。かつては安濃津(あのつ)と呼ばれ、伊勢湾の海上交通の要衝であり、また、全国から伊勢神宮を目指す伊勢街道の結節点に位置する土地。江戸時代には藤堂藩32万石の城下町として、明治期以降は

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伊勢神宮の寺 常明寺(廃寺を行く2)

伊勢神宮の寺 常明寺(廃寺を行く2)

前回、日蓮宗の開祖である日蓮が伊勢神宮を参拝して三大発願のために参篭し、神からの啓示を得たことを書きました。

しかし、古来から伊勢神宮は「神仏隔離」を貫いており、直接その神前で僧尼が参拝したり読経したりすることは認められていませんでした、このことは、神仏習合が進んでいた京都や奈良を始めとする全国の神社と伊勢神宮との大きな違いの一つと言われています。

ただ、仏教思想は伊勢神宮にも急速に浸透し、末

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日蓮と伊勢神宮(廃寺を行く1)

日蓮と伊勢神宮(廃寺を行く1)

日蓮宗の開祖である日蓮上人は、言わずと知れた日本仏教界の偉人ですが、伊勢神宮とも深い関係があります。
鎌倉や比叡山などで修業した日蓮は、法華経の教えこそ釈迦の教えの神髄であることを悟り、建長2年(1250年)に伊勢神宮を訪れ、外宮の度会神官の氏寺であり法楽寺院でもあった常明寺に100日間参籠しました。
このとき、
 我 日本の柱とならん
 我 日本の眼目とならん
 我 日本の大船とならん
という三

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Buddhists should come to Ise Jingu

Buddhists should come to Ise Jingu

"Shinto" is an ancient, traditional religion of Japan, and "Ise Jingu" (Ise Grand Shrine)is the center of the Shinto world.
Amaterasu Omikami, the sun deity and the ancestor of Japan's imperial family

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