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アニータ少尉のオキナワ作戦(2)、佐世保へ

 過去アップした「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」は、「エレーナ少佐のサドガシマ作戦、時系列」こちらからどうぞ。

 まだ、サドガシマ作戦、終わっていませんが、アニータ、スヴェトラーナとソーニャの物語でも。台湾侵攻をぜんぜん触れていませんでしたので。単なる輸送任務ということだったですが、それで終わりになるはずもなく・・・

中国の太平洋進出抑止へ 琉球弧、進む要塞化 南西シフト 隊員9430人配置
要塞化すすむ南西諸島(1)/小西 誠(軍事評論家)
中国の「台湾武力統一」最有力ケースをシミュレートする

アニータ少尉のオキナワ作戦(2)、佐世保へ

前回の話(1)
次回の話(3)

★佐世保入港、ペレスヴェート艦上、広瀬二尉の居室

 佐渡から佐世保までは、ホバーを曳航しているため、二日の行程であった、
 
 スヴェトラーナ、アニータ両少尉、ロシア海軍八十名(ポモルニク型エアクッション揚陸艦操艦要員)、陸軍女性兵士四十名、陸自水陸機動団四百名は、オスリャービャとペレスヴェートに二手に別れて乗艦していた。オスリャービャとペレスヴェートの乗員は五十名ずつ。各艦共総員約三百名である。
 
 海自では、毎日の食事を調理する専門の職種である給養員が十数名乗艦している。今回、オスリャービャとペレスヴェートには、数名の給養員が配置されているが、通常の乗員以上を乗せているため、陸軍女性兵士各二十名ずつは、給養員の手助けをしている。
 
 アニータ少尉の乗船しているペレスヴェートでは、水陸機動団二百名は広瀬二尉が率いている。彼らの居室は広く快適とはとても言えない。広瀬は尉官なので、尉官用の個室を割り当てられている。
 
 アニータ少尉が広瀬二尉の居室のドアをノックした。「広瀬二尉、アニータ少尉であります」「お入り下さい」

「広瀬二尉、水陸機動団の食事メニューの相談に参りました。これから、佐世保、オキナワ、イシガキジマと7日程度の行程になりますが、何を隊員の皆様にお出ししたらいいのか、食材の制約もございますが、できるだけ飽きない食事を作りたいと思いまして」
「おお、それは贅沢な。私はてっきりミリメシかと思っておりました」

「我々は、佐渡ヶ島の学校でも食事を作っていたんです。本格的とは参りませんが、私の部下の女性兵士は日本料理ができます。ロシア料理はもちろんなんですけどね」
「ロシア艦で日本料理とは!」
「当ペレスヴェートの乗員三百名の内、水陸機動団は二百名ですので、主な乗員は日本人隊員なんですよ」
「そうですなあ。お世話になります。海自も船舶が不足しておりますからね。こうも戦線が拡大するとは誰も思っていなかったんです。しかし、なんとロシア軍が友軍とは!驚きました」
「東ロシア軍ですわよ」
「そうでしたね。東ロシア共和国軍でしたな」
「今や、欧州ロシアのバカタレ共とは異なる国家ですので・・・」
「バカタレ、ですか。面白い!」

「ええっと、作れるメニューの一覧表ですが、どうでしょうか?隔日で、朝食昼食夕食を、ロシア→日本→ロシアと、日本→ロシア→日本ではいかがですか?」
「ええ、どれどれ。こんなに日本食が作れるんですか?・・・和式カレー、寿司、天ぷら、カツ丼、親子丼、肉じゃが、ハンバーグ・・・サバの味噌煮!焼き鳥!・・・すごいじゃないですか!日本の家庭料理・・・あ!そうか!少尉は、土屋アニータさんになられたんですよね?」
「そうです・・・結婚しちゃいました・・・」

「いやあ、残念だったな。我が水陸機動団は、佐渡北岸に張り付いていたから、ロシア軍の女性兵士のみなさんと交流する機会もなかったですからな」
「北朝鮮人民軍特殊部隊との白兵戦で交流しただけですものね」
「まったく、土屋さんという日本人の方が羨ましい。こんなキレイなナイスバディーの・・・おっと失礼、アニータさんと結婚できたんですから」

「広瀬二尉は独身ですか?こんなこと聞いていいかしら?おいくつ?」
「いやあ、お恥ずかしい話、今、三十一になります。独身です。任地がどんどん変わりまして、付き合う暇がなくって・・・」
「あら!ペレスヴェート乗船の私の部下、二十名の中に、佐渡で日本人のお相手が見つからなかった隊員もおりますのよ。紹介いたしますから、お試しになったら?」
「そのお試しって、佐渡で噂に聞いた、あのお試し?」
「そうですわ。結婚を決める前に、やっぱり、お互いの相性も確認しないといけませんもの」

「・・・あの、アニータさんもお試しを?」
「ハイ、三人の方と」
「それを土屋さんはご存知で?」
「ウチの旦那も、私の部下を三名、お試ししましたよ」
「・・・それって・・・」
「みなさん、最初はそうおっしゃいますが、日本人だって、結婚前まで処女、童貞とかの義務があるわけもなし、複数人との経験は当たり前でしょう?おまけに、ウチの旦那が言うには、日本では風俗というものまであるでしょう?それに比べて、私たちは自由恋愛ですもの」
「・・・確かにそうですな・・・」

「広瀬二尉も躊躇していると、他の隊員に取られちゃいますよ。ロシア人女性は、日本女性よりも数倍肉食ですから」
「土屋さん、紹介して下さい!」
「艦内では性行為はダメですよ。佐世保、オキナワ、イシガキジマに上陸中に、私の部下の非番の人間なら構いませんよ。食事時とかに合図しますから、非番の子と仲良くなっても構いませんよ」
「う~ん、生きる希望がわいてきた!」

「大げさですわ。人生、楽しまなくっちゃ。それで、二尉、お好みは?どういう子が好きなんです?」
「そりゃあ、アニータさんみたいなプロポーションの子が・・・」
「ロシア人にも民族的に色々ありまして、私のようなドイツ系・スラブ系もいれば、中央アジアのトルコ系もいる、極東ロシアのコリアン族もいる、中国系の女の子もいます。だから、品定め、って日本語で言うのかしらね。それをされるといいですわ。国際結婚になりますから、将来のご自分の人生、生まれてくる子供の容姿も考えて、じっくりお試しすることです」
「なるほど・・・」
「ただし、ロシア人女性は軍人、殺傷能力のある軍人ですので。今回も、北朝鮮兵士を殺していますよ」
「それは、我々も同じですよ。むしろ、それが理解できる相手の方がいいですな」
「自衛隊の女性隊員とは違いますわよ?」
「そこも魅力です」

★佐世保入港、ペレスヴェート艦上、食堂

 ペレスヴェートの食堂で一人で広瀬が昼食をとっていた。そこに、トレイを持ったアニータが来て「二尉、ご一緒してもよろしいかしら?」と話しかけた。「少尉、どうぞどうぞ。副官が機材チェックしていて、相手をしてくれる者がいなかったんですよ」「どうです?お食事、お口に合いますかしら?」
 
「うまいです。陸自の食事は塩辛くて、味付けがよくない。汗をかくから仕方ありませんが、塩分が多い。それに比べて、この食事、塩加減がちょうどいい。外国人が作ったとは思えませんよ」「佐渡で、日本人の方に習ったんです。お口にあってよかった」とアニータ。

 急に小声になって広瀬に体を寄せた。「それで、二尉、前に話した私の部下の女の子、あのオープンキッチンで、ほら、今、お味噌汁を鍋に継ぎ足した女の子、見えます?」「見えますよ」「あの子、どうでしょう?」「え?あの子が?私に?」

「何か私、お見合い紹介所のおばさんみたい・・・あの子ね、佐渡でも何もしなかったんです。処女じゃないらしいんですけど、経験はあまりないみたい。名前はソーニャ。ソーニャ准尉。私みたいなスラブ系じゃない、コリアン族、中国で言う朝鮮族ですわ。21才。私やスヴェトラーナみたいな下士官叩き上げじゃなくて、エレーナ少佐、アデルマン大尉、アナスタシア少尉と同じ、アカデミー出身。だから、若いけど准尉なんです。卒業ホヤホヤです」

「21才・・・アニータ少尉、私、31才ですよ?年齢が・・・」
「ロシア人の女性は、男性との年齢差に日本人女性よりもこだわりません。ちょっと、彼女に聞いたの、広瀬二尉のこと・・・」と手をヒラヒラさせてソーニャに合図する。ソーニャは顔を真赤にして下を向いてしまう。「恥ずかしがり屋なの。ロシア人には珍しい草食系なんですよ」
「いやあ、しかし、美人だ!小柄でストレートのロングヘアが似合っている。少尉、こんな私でいいんでしょうかね?」
「それは、本人に直接聞いてみたら?佐世保で、二尉も非番の時間が有るでしょ?その時に、私が彼女も非番にしますから。佐世保市内でデートでもされたらいかが?」
「え~、部下の手前もありますし・・・」
「あら、その広瀬さんの部下の方々、早速、私の部下にアプローチしてましたよ。ソーニャも数名に声をかけられたとか。私が先に広瀬さんを紹介しようとしているんだから、先約優先にしてちょうだい、って、彼女に止めてあります」
「あ、あいつら、俺の知らないうちに・・・」
「だから、遠慮することありません。遠慮していたら部下に取られちゃいますよ」
「わ、わかりました。お願いします」

★佐世保入港、ペレスヴェート艦上、艦橋

 食事の後、ペレスヴェートの艦橋で、アニータは艦の無線を借りて、オスリャービャのスヴェトラーナとお喋りしていた。スヴェトラーナが「こっちも食事は好評よ。エレーナ少佐の言うように『胃袋を掴め』って作戦、良いわよね。水陸機動団との関係も海軍との関係も良好。ロシア人、意外と日本食、好きみたいよ。私は、赤飯が好き!」
 
「問題がなくって良かったわ。ま、たまに船旅もいいわよねえ。陸軍で泥を舐めるよりもずっといい」とアニータ。「旦那がいればもっといいけどね。本間、寂しがってるかなあ?」「ウチのも浮気してないでしょうね?一緒だったら監視できるけど」「大丈夫よ、土屋さんも本間も小心者だから」「良い旦那を捕まえたものよ。大事にしないとね」

「そう言えば、こっちの水陸機動団の広瀬中尉にソーニャ准尉を紹介したわ」とアニータ。
「え?あの奥手のソーニャを?アニータ、結婚紹介所でも開業するつもり?」
「ソーニャ、可愛んだもの。彼女には幸せになって欲しいし、彼女と広瀬さんと結婚したら、日本でワイワイやれる人間が増えるじゃない?」
「彼女は、アナスタシア少尉と同じコリアン族だけど、アニーとはね、まったく違うものね」

★佐世保入港、ペレスヴェート艦上、広瀬二尉の居室

 スヴェトラーナとのお喋りを終えて、アニータ少尉はキッチンを覗いてみた。ソーニャ准尉がいて、食器洗いをしていた。偉いじゃない。尉官が文句も言わず食器洗い。健気っていうのか、何ていうのか、可愛いなあ。
 
 アニータの横を通った曹長に「ソーニャに洗い物させているの?」とソーニャに聞こえないように耳打ちする。「滅相もない、少尉。彼女が率先してやってくださっているんですよ。アカデミーの優秀な卒業生なのに。尉官がそんなことをされては困ります、と言ったんですが、『卒業したての新入りですので、下積み仕事をみなさんとしたく思います』ていうんですわ」
 
「ふ~ん、いい子よねえ」「そりゃあ、もう。そうそう、少尉になる前の卒業したてのアニーも同じでしたよ。性格は全然違いますが、アカデミー卒を鼻にかけないってのは同じです。兵士、下士官で、ソーニャを悪く言う人間はいません」「いいわね、実にいいわ。曹長、彼女、借りてもいいかしら?」「もちろん、結構ですとも」

アニータは、ソーニャが洗い物をしているシンクの側に歩み寄った。「ソーニャ、曹長にことわったから、洗い物はよして、私に付いてきてちょうだい」「ハイ!アニータ少尉!了解であります!」「そうそう、お茶の用意をして。お茶うけも。三人分よ」「ハ!少々お待ちを」
 
 エンジン室の有る後方のキッチンから、狭い通路をアニータが先導して歩いた。ソーニャもお茶のトレイを持って黙ってついていく。どこに行くのか?と疑問に思っていると、居住区画の佐官、尉官の居室区域にアニータは行った。

 アニータ少尉が広瀬二尉の居室のドアをノックした。「広瀬二尉、アニータ少尉であります」「お入り下さい」

「広瀬二尉、お忙しいですか?」とアニータ。
「いいえ、この航海では、水陸機動団としての任務はありませんからね。暇つぶしに書き物をしていたんですよ」
「あら、では、私たちとお喋りしません?」
「私たち?」
「ソーニャ准尉、入って。お茶の支度をしていただける?」

 居室のドアの横で待機していたソーニャがおずおずと入室する。「このソファーでいいかしら?広瀬二尉、お茶をお持ちしました」「あ、ああ、そちらでどうぞ」と広瀬がデスクからソファーセットに移った。「どうぞ、どうぞ、お二人とも、お座り下さい」という。
 
「あの、アニータ少尉、私は失礼させていただいて・・・」とソーニャ。
「ダメよ。たまには気楽にお喋りしましょうよ、ソーニャ」
「あ、あの・・・ソーニャ准尉、お座り下さい」と広瀬はハンカチを出して顔を拭いた。ソーニャも顔が紅い。
「あら、二人共。でも、任務中です。お見合いじゃありませんよ。今回の沖縄、石垣島への私たちの派遣は、ロシア海軍の護衛ということですけど、中国-台湾の紛争にあまり私詳しくないものなので、広瀬二尉に自衛隊尉官として、どういう状況なのか、ご教授してもらいたくて伺いました。予告なしでスミマセン。オフレコですよ。ソーニャも聴いていた方がいいかと思って連れてきました」

「あ!そういうことですね・・・了解です!」
「まあ、焦っちゃって、二尉」
「いやいや、小官の居室に、二人も美人がいるなんて、ありませんでしたからね。むさ苦しい男ばかりの水陸機動団ですので・・・」
「慣れませんとね、二尉」

「いやいや・・・そうですね・・・ハハハ・・・え~、何から話していいのか。まず、自衛隊の方針は、南西諸島の防衛の強化です。中国が台湾に侵攻しようとする時、間違いなく南西諸島を狙います。米国がもしも介入する際には、日本列島から台湾、フィリピンを結ぶ第1列島線を自由に通過できないと致命的だからです」

 台湾国防部のシナリオによると、このような順序で進行すると想定されています。

(1)中国軍は“軍事演習”の名目で台湾の対岸に戦力を集め、海上戦力を台湾周辺の海域に配置、台湾を威嚇する。
(2)フェイクニュースなどで台湾を混乱させる。
(3)「演習」から「実戦」に切り替える指令が下される。
(4)サイバー攻撃で台湾の中枢機関や台湾軍を麻痺させる。
(5)ミサイルを発射し、台湾軍の指揮所やレーダー施設などを攻撃。
(6)周辺海域に配置した海上戦力により外国の介入を阻止し台湾を包囲。
(7)中国軍が台湾に上陸。

 中国は軍事演習を装って万全の態勢を整え、短時間で上陸作戦を完遂する。これが台湾国防部の想定です。
 
 さて、そこで、日本の動きですが、中国は台湾領空、排他的経済水域を認めておりません。独立国として認めていないので当然です。奴らの海上戦力、航空戦力は、我が物顔で台湾の領空、排他的経済水域を侵犯するでしょう。
 
 その時、偶発的に、日本の領空、排他的経済水域に台湾と中国の戦力が交戦して、侵犯する状態もあり得る。その時、日本が台湾を助ける行いをした時、それを口実に南西諸島を攻略する事態も発生する可能性があります。
 
「また、これから向かう石垣島は台湾から240キロ。中国・台湾双方が領有を主張する尖閣諸島まで330キロです。中国は、尖閣諸島を狙う公算が高いと思われます」

★ソーニャの推測、広瀬二尉の居室

 おずおずとソーニャが「あの、広瀬二尉、お聞きしてよろしいでしょうか?」と言った。「ええ、どうぞ」「あの、尖閣諸島への侵攻は可能性が高いとこう思われますか?」「ええ、中国が領有を主張しておりますから、領有権の主張に宣戦布告は不要ですからね」
 
「お言葉を返すようですが、この時点で、尖閣諸島の占拠は、投資コストに見合わないと考えます。つまり、尖閣諸島は何もない岩山、中国は、占領に必要な戦備、備品、消耗材をわざわざ中国本土から搬入する必要があります。飛行場ももちろんありませんから、海上戦力による兵站確保となります。それを、自衛隊・在日米軍の優勢な航空・海上戦力の妨害を受けて維持するという投資コストは無駄だと思います」
「ふむ、一理ありますな。続けて」

「今回のロシア軍の作戦はご存知でしょう?侵攻するぞ、するぞと言っていた北海道は陽動作戦でした。留萌に上陸してちょっとお茶を濁しただけ。待ち構えている陸上自衛隊、旭川連隊の優勢な陸上戦力と航空戦力で、ロシア軍の消耗は明白。尖閣諸島と同様、侵攻に必要な戦備、備品、消耗材は現地調達などほぼ不可能。脆弱なロシア海軍では兵站維持は難しい。だから、留萌ではなく、佐渡ヶ島に標準を合わせました。得られる利益は大きい。自衛隊のガメラレーダーという目を潰せる。逆に、本土の監視に利用できる。自衛隊の戦力は、空自の八十名のみ。投資コストに見合う成果が北海道侵攻よりもはるかに多く得られます」
「確かにそうでしたね。結果は違いましたがね。今や、ロシア軍が日本の友軍」

「ハイ、東ロシアにとっても幸いなことでした。それで、今回の中国の台湾侵攻に伴う日本領土への目標はどこか、というと、私の考えでは、尖閣諸島などではなく、これから向かう石垣島です」

 台湾から240キロ。与那国島はより近く、200キロですが、与那国空港は2千メート級の滑走路だけしかなく、フロンタル・パーキング(ターミナルビルの前面に航空機を並列で駐機)は出来ません。戦闘機の連続離発着は不可能。それに比べて、新石垣空港は、2千メート級の滑走路は同じでも、 タキシーウェイ(誘導路)があります。
 
 空自の戦闘機が常駐しているわけではありません。ミサイル部隊、500~600人が常駐しているだけです。装備も12式地対艦誘導弾と03式中距離地対空誘導弾を配備していますが、台湾のF-16とのドッグファイトを名目にして石垣島にJ-20(殲20)が接近したら、空自はミサイルを撃てません。
 
 おまけに、J-20(殲20)はステルス性を保持しています。12式、03式が探知するのが難しい。それで、新石垣空港の滑走路を攻撃すれば、空自は航空機を沖縄から飛ばすしかない。中国は滑走路の修理など簡単にしてしまうでしょう。
 
 そこで、今回の北朝鮮のように、ホバークラフトで石垣島に侵攻をかけるとしたら?どうなります?簡単に占領できてしまいますよね?
 
 この水陸機動団400名とミサイル部隊500~600人とを合わせても、北朝鮮のしたような数千名の勢力を持って上陸されたら?そして、石垣島の空港他、インフラが中国の手に入ったら?与那国島は自然と立ち枯れ、ほっておいても、尖閣諸島などは将来占領できるので、放置。

「と、こう私は考えるものであります・・・あ!ああ!す、すみません・・・私、出しゃばったことをベラベラと言ってしまって・・・」とソーニャは両手で顔を覆った。

「いやいや、准尉、戦術として、その可能性は高い。確かに、あなたの言われる投資コストに見合います。また、留萌、佐渡ヶ島の教訓が当てはまります。恐れ入りました」

 いいわ、いいわねえ。さすが、アカデミー主席卒業のソーニャちゃん。広瀬二尉も単なる可愛い子ちゃんじゃないというのに気づいたわよね?優秀といえば、アカデミー始まって以来の秀才のエレーナ少佐とタイプは似ているわね。気弱な部分を除いて。

 広瀬二尉も混ぜっ返しもせずちゃんと聴いて理解しているし、この二人、いいかもしれないわ、気弱な分、エレーナ少佐みたいなじゃじゃ馬よりも奥手の広瀬二尉にはちょうどいいかも!とアニータは思った。


★デート、佐世保市内

 アニータ少尉は約束通り、広瀬二尉が非番で上陸許可がある時にソーニャ准尉も非番にしてくれた。ペレスヴェートから海上自衛隊立神岸壁に伸びている長いタラップを降りる。たいした作りのタラップではなかった。多少ぐらつく。広瀬は、ちょっと躊躇したが、ソーニャと手を繋いだ。小さな手でプニュプニュと柔らかい。
 
 視線を感じて上の後部甲板を見上げると、アニータ少尉がニヤニヤして見下ろしていた。彼女だけではない。ロシア軍兵士、水陸機動団隊員、十数名が手を振っている。あ~、プライバシーなんてないんだよなあ、軍隊は。これで、ソーニャと公認になっちまったのかい?と広瀬は思う。
 
 タラップを降りると営繕課の事務職の女性が待っていた。広瀬が慌てて握っていたソーニャの手を離した。ソーニャもポーチをイジってごまかしている。
 
「広瀬二尉でありますね。私は事務職の紺野と申します。東ロシア共和国軍のみなさまの日本入国の手続きのお手伝いをさせていただいてます。こちらの方が、ソーニャ准尉ですね。え~、何語がよろしいかしら?ロシア語は喋れないんですけど・・・」と紺野。

「紺野さん、日本語で結構ですよ」とソーニャ。「あら、お上手。日本人と変わらないわ」と紺野。「上官が日本人とのハーフのエレーナ少佐で、日本語は学校で習って彼女に直されました」

「あ、あのサドガシマ作戦のエレーナ少佐!おきれいな方ですよねえ。少佐、日系のハーフなんですか?テレビで見てました。え~、広瀬二尉、車で行きましょう。岸壁は長いので」とカローラの後部座席に二人を乗せた。

「ソーニャ准尉の出入国手続きは、米海軍佐世保基地のビザセンターで行います。佐渡ヶ島ではビザなど必要なかったでしょう?ソーニャ准尉のパスポートはロシア連邦のままですわね。まだ、東ロシア共和国の国家承認は下されていませんからね」

 後部座席から「あ!そうか!戦闘上陸だったから、ビザなんて関係なかったですものねえ」と広瀬。「おかしな状況ですわね、ウクライナのあの騒ぎでロシア人の印象は悪かったのに・・・あ、失礼。でも、そのロシアが分裂して、東ロシア共和国になって、日本と相互防衛協定を締結して、友軍になるなんて。それで、あんなに死傷者を出して、北朝鮮から佐渡ヶ島を防衛してくれるなんて、思ってもみませんでした。あの、卜井アナの実況ライブを見て、私、泣けて泣けて。お二人はあの戦闘に参加しておられたんですか?すみません、大阪のおばさんみたいに聞いちゃって」

「紺野さん、私、その卜井アナ、藤田アナと佐々木カメラマンの護衛をしていたんです。流れ弾が飛ぶので、三人を守るのが大変でした」「あ!あのチラッとカメラに映ったのがソーニャさん?お~、これはオフィスに帰ったら自慢できる話・・・機密とかじゃないですよね?」「いいえ、機密なんかじゃ全然ありません。それで、広瀬二尉は、二見町の市街戦闘に参加されておられました」「あのレールガンで北のホバークラフトをぶっ飛ばしていたあそこに?すごいなあ。平和国家日本であんなことが起きるとは、いやはや・・・あ、ビザセンターに着きました」

 紺野は、テキパキと英語で米軍の事務職と話して、外務省のビザ係に取り次いでくれた。なんの問題もなく、ソーニャのパスポートに入国スタンプが押された。二人はここで紺野と別れて市内に行くと思っていた。
 
「あの、車で市内まで送ります。それから、用事が済みましたら、これ、私のスマホの電話番号です」と名刺を広瀬に渡した。「連絡して下さい。お迎えに伺います」「いや、紺野さん、勤務中にそこまでしていただかなくても・・・」

「アニータ少尉が佐渡の鈴木三佐に連絡されて、市ヶ谷の防衛省から直々に佐世保基地に指令が飛んで、お二人の便宜を図るようにと指示を受けております。立派な任務なんです・・・あのぉ、立ち入った話ですが、お二人は自衛隊公認の間柄なんですか?基地のオフィスでどういうことだろう?とみんな首をかしげておりまして・・・」

「ええ?アニータさん、何を段取りしているんだろう?初めて知りました!」と広瀬。「広瀬二尉、私、恥ずかしい・・・」と両手で顔を覆うソーニャ。

「あら?ご存じなかったんですか・・・市ヶ谷からの直接指令なんてねえ・・・え~、スミマセン、どこに参りましょうか?」と米軍ゲートを出たところで紺野が尋ねた。

「ソーニャ准尉、どこにまいりますか?まず、食事にしましょうか?佐世保だから、寿司屋がいいかなあ?」「広瀬二尉、お任せします」「じゃあ、紺野さん、申し訳ありませんが、市内のどこか落ち着いた寿司屋にお願いしたいんですが」

「了解です!ちょっとお待ち下さいね・・・江戸前の寿司屋があります・・・すし処 元禄なら、個室ありかな?」とカーナビに接続して、電話した。「元禄さん?佐世保基地の紺野です・・・うん、お客様・・・個室空いてます?・・・二名様・・・お名前は広瀬様・・後、十分でついちゃうの・・・大丈夫?オッケー・・・じゃあ、広瀬二尉、お寿司屋さんで降ろします。広瀬で予約してあります。個室とりました」「うわぁ~、紺野さん、すごい!あっという間に!」「米軍とか、佐世保基地に来られる各国の軍の方たちで慣れてるんですよ」「へぇ~」

 ソーニャが広瀬のシャツの袖を引いて「広瀬二尉、今、紺野さん、運転しながらカーナビで電話してましたけど、あれ、どうやったんです?」「ああ、カーナビとスマホがBluetooth接続されていて、ハンズフリーで電話をかけたんですよ」「ロシアにはありません!日本ってすごいですねえ」「ソーニャ准尉は面白いなあ。そんなことを感心されるなんて」「ロシアはいろいろな点で遅れています。あ~、この国に住みたいなあ」
 
「あら?准尉、自衛隊公認で、二尉と結婚されるんじゃないんですの?」と紺野がズケズケ言う。ソーニャは真っ赤になって、広瀬の顔を見上げた。広瀬も真っ赤になった。「ハ、ハハハ、いや、そんな・・・ねえ?准尉・・・いやはや・・・」

「着きましたよ。ここ悪くないですから。おまかせを注文されるといいですよ。あ!お代は佐世保基地の紺野で付けておいて下さい」「そんなわけには・・・」「市ヶ谷からの指令ですもの。お気になさらずに。私は近所で買い物してますから、ごゆっくり。役得ですわ」と言って、窓から手をヒラヒラさせて、さっさと車を出してしまう。
 
「いやぁ、ビックリしたなあ・・・准尉、ごめんなさいね。こんなことになっているなんて知らなかった」と言いながら、暖簾をくぐった。続いてソーニャも店に入る。「広瀬二尉、ソーニャと呼んで下さい」「じゃあ、俺も名前で。薫、カオルです。変な名前でしょう?」「カオル、発音しやすいです」

 広瀬の名前を言うと、奥の座敷に通される。二人は対面で座った。「ソーニャ、畳部屋だけど、大丈夫?」「これが畳・・・」「これが座布団だ」「座布団・・・」「横座りかあぐらでかまわないですよ。脚が痛くなっちゃうから」「横座り・・・こ、こうですか?」と座ってみせた。「そうそう、その方が楽でしょう?」「ハイ、何か新鮮ですね。何もかも新鮮!」
 
 二人は紺野の言う通りおまかせにした。「お酒、飲んじゃおうか?」と広瀬が日本酒を頼んだ。「おいしいです!ワインみたい!」と喜ぶソーニャ。広瀬はあまりの可愛さにゾクゾクした。おいおい、こんな可愛い若い子とデートしてるなんて、信じられないと思う。
 
 ひと通り料理が出て、堪能した二人。店を出ると、広瀬が「ブラブラ、しようか?」とソーニャに聞く。「ハイ、カオルについてきます」とオズオズと広瀬の右手を握る。広瀬は血液が右手をドクドク流れる気がした。JR早岐駅の方に歩いた。

★婚約指輪、佐世保市内

 途中で宝飾店があった。広瀬はショーウィンドーを覗き込んだ。「カオル、どうしたの?あら、キレイな宝石ね」「ソーニャ、記念に指輪か何か買いたいんだけど?」「え?こ、婚約指輪ですか?」「え?こ、婚約指輪になるの?」
 
「だって、紺野さんが自衛隊公認とか言われてて・・・私、カオルと、け、結婚するの?カオル、私と結婚してくれるんですか?」「え?えええ?俺と結婚してくれるの?」「昨日の今日で、気が早いかも・・・」「いや!気が早くない!」チャンスはそうそうないもんだ、と広瀬は思った。

「ソーニャ、もう、結婚、決めちゃおう!お、俺と結婚して下さい!」「わ、私でいいんですか?!」「ソーニャがいいんです!」「よ、よろしくお願いいたします」
 
 宝飾店のおやじが、店先でなんかもめているカップルを眺めていた。「お客さん、お店にお入りなさい。何をお求めですか?」とドアから顔を出した。広瀬が「おやじさん、あの、その、こ、婚約指輪を下さい!」と言う。おやじは、なんだろうね?このごついゴリラみたいな男がこんな華奢な女の子と婚約するのかい?と思った。
 
 おやじが指輪をいろいろと見せる。広瀬が「おやじさん、この店で一番でかいダイアモンドリングを見せて!」と言う。ゴリラ、金持ちなのかね?とおやじは思った。「これはどうですかね?3Cの0.95カラットのダイヤ、プラチナリングだけど・・・」「給料三ヶ月分が相場でしたね?」「世間様はそう云うが、私は心だと思うよ・・・」「いや、デカいほうがいい!」
 
 それを聞いていたソーニャが「カオル、私、手も小さいし、大きなダイヤは・・・お心だけ受け取っておきます。それより、これはどうかしら?」と小さなダイヤが3個ついているプラチナリングを指差す。ペアになっていて、男性用は少しだけ大きなひと粒ダイヤのリングだった。小ぶりで細い。「ソーニャ、これ小さいよ」「私、これがいい。可愛い・・・」「う~ん・・・」
 
 おやじが「そうだよ、お客さん。こちとら商売で高いもの売りつければいいが、このペアのエンゲージメントリングは名の知られた細工師が作ったもんだよ。そんなに高くないが、これは一生もんだよ。金額が気になるなら、結婚指輪を豪勢にすればいいじゃないか?結婚しなさるんだろう?彼女さんもこれでいいと言ってるんだから」

「ソーニャ、これでいいの?」「これがいいです。カオルのプレゼントならなんでも受け入れます!」「わ、わかった!おやじさん、サイズ、大丈夫?」「ちょっと計らせて下さいね。彼女さんはピッタリだ。彼氏さんは・・・ちょっとサイズ調整しますよ。すぐできるから」

「ほら、できた」とおやじが超音波洗浄機から指輪を取り出して、フェルトの布で拭いて広瀬に手渡した。「彼氏さん、指輪を彼女さんにつけてあげなさいよ。永久の愛を誓います、なんちゃって。オホン」

「ソ、ソーニャ・・・あの、これ・・・」とぎこちない手付きでソーニャの指にはめた。「ソーニャ、うれしいです、カオル・・・」と涙ぐむ。

 あ、あれ?こんな展開で、いいんだろうか?もう?もう?婚約しちゃったの?と広瀬は思った。まあ、人生、こんな展開もありかもしれん。何故かニタニタ笑いのアニータ少尉と紺野さんの顔が浮かんだ。

 ソーニャも広瀬に指輪をつけた。私で良かったのかしら?こういうのでいいのかしら?でも、カオルは優しいし、頼りがいありそうだし・・・何故かニタニタ笑いのアニータ少尉と紺野さんの顔が浮かんだ。
 
 お勘定を済ませ店を出た。しばらく、市内を散策している内に午後遅くになった。「ソーニャ、キミの非番は何時までなの?」と彼女に聞く。「あのですね、アニータ少尉から・・・明日の朝まで帰ってくんな!と言われておりました・・・カオル、どうしましょう?」とボソボソとソーニャが言った。「え?つまり・・・??」「カオル、たぶん、その『つまり』なんじゃないかと・・・」

「そ、そうだよね、そうだ、そうだ!俺たち、婚約しちゃってるんだから、そうなんだよ!」「・・・そうなんですか?」「そうなんだ!ソーニャ、朝まで帰っちゃいけないんだよ!」「・・・」

 広瀬がスマホをポケットから取り出して、紺野に電話した。「紺野さん、あの・・・」「あ!宿泊ですねえ。アニータ少尉から聞きました!ハウステンボス、予約しておきました。今?どこですか?JR早岐駅前?2分です!」「・・・」

 二人は顔を見合わせた。ニタニタ笑いのアニータ少尉と紺野の顔が思い浮かんだ。

前回の話(1)
次回の話(3)


マガジン『エレーナ少佐のサドガシマ作戦』


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