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CHEESE🧀「子どもとの関わり方」研究会

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ただ今開催中の研究会(講座、勉強会)に関連した内容をアップします。ただ今第二期がスタートしました!ご参加頂いた方には、テーマと関連する重要事項もお伝えしています。それは有料エリア…
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#子ども

むき出しの脳に攻撃できるか(第二期:第6回④)

むき出しの脳に攻撃できるか(第二期:第6回④)

1.むき出しの脳に攻撃できるか 相手の言動に強い恐怖を抱くとき。相手から自分の存在が軽んじられて踏みにじられ、見捨てられていると感じるとき。
 その感覚は、ここまでで触れてきた実際に生じる「脳の病変」に繋がるような「痛み」とでも言えるような、脳からの「警鐘」かもしれません。「脳」が助けを求めているのかもしれません。

 そのリアルタイムで見ることができない脳の動きを、仮に目視できたとして、もし、自

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4つの精神疾患と脳(第二期:第6回③)

4つの精神疾患と脳(第二期:第6回③)

 『虐待が脳を変える』には虐待やマルトリートメントが脳に与える影響の他に、PTSD、うつ病、解離性障害、境界性パーソナリティ障害の脳研究も紹介されています。これらはその「結果」と理解することもでき、その視点も必要ですが、こういった状態であることがさらなる傷つきの「原因」となることを理解することも重要です。

 子どもの脳は、柔く、それでいて(だからこそ)、発展可能性をもちますが、虐待やマルトリート

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虐待・マルトリートメントと脳(第二期:第6回②)

虐待・マルトリートメントと脳(第二期:第6回②)

 少なくとも現代において「心」の在処とされる「脳」が、虐待やマルトリートメントによって「変わってしまう」ことが、脳研究から分かってきました。ここからは、それについて、小児科医で脳科学者でもある友田先生の著書『虐待が脳を変える』を参考に紹介します。より詳しくはそちらをご参照ください。

 脳は、人間の身体の中でも解明されていない部分の多い臓器であると言われています。脳はまず、「大脳」、「小脳」、「脳

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「心」と「脳」(第二期:第6回①)

「心」と「脳」(第二期:第6回①)

 虐待は非人道的な酷い行為という印象を当然に与えます。人権侵害であることも理解されています。しかし、虐待やマルトリートメントが、発達の途上にある子どもの「脳」を実際に変えてしまうことや、被害を受けた子どもがその脳で「世界」と関わっているということは認識されていない印象を受けます。

1.「心」を知る方法 「心がどこにあるか」という質問に、私たちは「脳」と答えるように思われます。心臓(ハート)という

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「性」、そして「生」(第二期:第5回④)

「性」、そして「生」(第二期:第5回④)

 「性」に関わる話題も非常にデリケートで、以前の「性同一性障害」が今では「性別違和」(DSM-5)という名称になっています。障害というラベルも外され、直すべき異常な状態そして差別の対象となってしまうものから多様性として認めるものへと認識が変わっています。LGBTも注目されるようになってきました。

1.さまざまな「性」のあり方 「性」には、生物学的な分類や機能(sex)の他に、社会的役割(gend

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うつ、不安、パーソナリティ(第二期:第5回③)

うつ、不安、パーソナリティ(第二期:第5回③)

 「うつ」に代表される気分に関わるもの、「パニック」や「PTSD」などの不安や恐怖が関与するもの、そして発達障害以前に注目されていた「パーソナリティ」の障害。
 私たちが出会う可能性のある「精神疾患」は数多くあります。ここでは、「気分」、「不安と恐怖」、「人格」ということについて触れます。

1.「気分」とその障害 「気分の波(浮き沈み)が激しい」と他者のことを形容することがありますが、そこまでで

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思春期に関連して(第二期:第5回②)

思春期に関連して(第二期:第5回②)

 そもそも、大人であることと子どもであることの違いは何でしょうか。生物として子どもを産み育てることができるようになることでしょうか。またはそれが法的に許される年齢のことでしょうか。では、子どもを産んで育てることができるとはどういうことでしょうか。ではなぜ虐待は起こるのでしょうか。

1.子どもでもなく、大人でもない存在 思春期の身体的な変化は、メンタルにも影響するホルモンが関与しているため、心理的

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虐待・マルトリートメントと精神疾患(第二期:第5回①)

虐待・マルトリートメントと精神疾患(第二期:第5回①)

 前回は「発達障害」、前々回は「愛着障害」について触れました。その中でも挙げた診断基準「DSM」に書かれているものを「精神疾患」と理解することが最も簡単な理解であるように思われます。第5回は、その他の精神疾患について、その概観と、虐待やマルトリートメントとの関連について考えていきます。

1.「精神疾患」とは

 精神疾患とは「正常な反応」の「長さと深さの異常」であるというのが要点です。気分の落ち

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「個性」と「発達」、そして「可能性」(第二期:第4回④)

「個性」と「発達」、そして「可能性」(第二期:第4回④)

 社会変革の展望を描く際には、ダイバーシティやバリアフリー、ノーマリゼーション等の言葉も重要に思われますが、発達障害においてよく挙げられる「個性」という言葉の意味を掘り下げることがまず必要であると考えられます。

 では「個性」とは、また「個性を大切にする」とはどういうことでしょうか。

1.「個性」とは  「個性」とは、個人の独自な性質を言いますが、独自性は共通性があるからこそ生まれます。クレヨ

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「育てにくさ」と「育ちにくさ」(第二期:第4回③)

「育てにくさ」と「育ちにくさ」(第二期:第4回③)

 発達障害は遺伝の関与も指摘されていますが、コミュニケーションに問題を抱えやすいため、対人関係に失敗体験を蓄積していけば、思春期以降の交際から結婚に関わる時期に有利になるとは考えづらくなります。その面からもある意味で、結果的に、選定は行われているといえます。モテないという選定です。
 遺伝が関与するということは、親も同様の傾向を抱えている可能性が高いということで、当然、家庭の機能もその影響を受けま

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「生まれつき」という言葉
(第二期:第4回②)

「生まれつき」という言葉 (第二期:第4回②)

 発達障害や愛着障害にどのようにアプローチするか以前の問題として、発達障害に関連する「生まれつき」というキーワードについて考えていきます。生命観あるいは人間観というテーマに行き着く答えの出ないデリケートな内容かもしれませんが、人(特に子ども)に関わる以上、向き合うべきテーマです。

1.「命が生まれる」のはいつか? 「命が生まれる」のはいつでしょうか?
 誕生日と考えるのが一般的かもしれませんが、

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「愛着障害」と「愛着存在」(第二期:第3回④)

「愛着障害」と「愛着存在」(第二期:第3回④)

 「愛着障害」と言った場合、診断基準である「DSM-5」に記載のある反応性愛着障害と脱抑制型対人交流障害を指します。愛着障害に限らず精神疾患には診断基準があり、診断を行うのは医師ですが、医師でなくとも知ることは重要です。前後して様々な問題や葛藤があるからです。診断はこのプロセスの1つです。

1.「反応性」と「脱抑制」2つの愛着障害「無差別警戒状態」の「反応性愛着(アタッチメント)障害」
 反応性

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「発達障害」について(第二期:第4回①)

「発達障害」について(第二期:第4回①)

1.「発達障害」とは 関連する本によく書かれているように、発達障害という名称は「総称」です。この言葉が示す範囲は、文脈により様々ですが、的確に捉えようとするならば、診断基準として使われる「DSM-5」の「神経発達症群/神経発達障害群」という章に記載されているものとすることが現在の最も広範囲での理解と言えます。

 もう少し狭い範囲で用いられるのが、最も多いように思われます。よく名前があがるASDと

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愛着の発達や機能~虐待や家族関係との関連~
(第二期:第3回③)

愛着の発達や機能~虐待や家族関係との関連~ (第二期:第3回③)

1.虐待と関連して(②への補足) 被虐待児特有の症状を被虐待児症候群と呼びますが、これは異常な環境における正常な反応で、セリグマンの実験で犬が示した学習性無力感やハーロウの実験でサルが示した反応と同様です。
 また、虐待は連鎖すると言われますが、実験環境で育ったサルも親になり育児をすることに困難を示したそうです。

2.愛着の体験から発揮へ 愛着対象を安全基地とすると、子どもは徐々に探索の範囲を広

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