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CHEESE🧀「子どもとの関わり方」研究会

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ただ今開催中の研究会(講座、勉強会)に関連した内容をアップします。ただ今第二期がスタートしました!ご参加頂いた方には、テーマと関連する重要事項もお伝えしています。それは有料エリア… もっと読む
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「個人」ができること(第二期:第8回④)

「個人」ができること(第二期:第8回④)

 虐待の連鎖にしても、組織や集団にしても、個人にしても、いずれも変わり得ることが救いです。ここでは、日々「子ども」に関わる「大人」として、私たち一人ひとりがカオス、システム、そしてフラクタルという視点を活用してどのように振る舞うことが重要かということに簡単に触れ、第9回に繋げます。

1.システムにおけるカオスとコスモスのフラクタルを変える異分子 様々な問題を抱える(抱え続けている)組織や社会に、

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傾向としての「フラクタル」(第二期:第8回③)

傾向としての「フラクタル」(第二期:第8回③)

 内外に「カオス」をもち、それを方向づける(秩序立てる)「コスモス」である「システム」は、それぞれ独自性をもち、個性的に存在し、機能しています。その「システム」のあり方は、一見捉えどころのないものに思われますが、その特徴や傾向を理解する際には「フラクタル」という発想が役立ちます。

1.「フラクタル」の意味 「フラクタル」とは、どれだけ分割しても全体と同様の自己相似的な形を言い、雪の結晶が代表的で

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カオス、システム、フラクタル(第二期:第8回①)

カオス、システム、フラクタル(第二期:第8回①)

1.前回の内容 虐待が伝達される可能性を1/3とする報告があり、仮にそうであれば、虐待は放っておいても世代を重ねる毎に減っていき、また、その1/3を支援対象とすればさらにその減少を加速させることができるはずです。現実に虐待が増えているのは、当然、それほどに単純に捉えることのできる問題ではないからです。
 「虐待の連鎖」に影響する要因として、前回は、家族がどのようにつくられて、家庭としてどのように機

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受け継がれてきた「精神」(第二期:第7回③)

受け継がれてきた「精神」(第二期:第7回③)

1.「心」の「要素」を捉える 特に日常語として「無意識」という言葉を使う場合、それは「意識」という言葉と区別している場合が多く、その限り、心がその2つからなる前提があります。心理学用語として「前意識」が入れば、構成要素は3つとなり、学派や理論が変われば「心」を構成する要素の名前やその数も変わることになります。

 第3回で紹介した「交流分析」も、NP、CP、A、FC、ACという5つの要素で「心」を

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連鎖を断ち切る個人の「力」と「あり方」(第二期:第7回②)

連鎖を断ち切る個人の「力」と「あり方」(第二期:第7回②)

 前節の試算は、単純計算をするために、前提として、どの両親にも子どもが1人であることと両親のマッチングをランダムとしています。しかし、当然、現実にはきょうだいもいるでしょうし、カップルは相性によってつくられます。またその他にも数多くの要因がこの問題に、しかも複雑に絡み合っています。

1.レジリエンス~ストレスを受け流すしなやかさ~ ここでは、その複雑に絡み合う要因のひとつとして考えられる「レジリ

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「虐待」の連鎖、「愛着」の継承(第二期:第7回①)

「虐待」の連鎖、「愛着」の継承(第二期:第7回①)

 これまで触れてきた、実際に脳を傷つけ、精神の発達や成長を歪め、人を部分的に殺す虐待やマルトリートメントは(ハラスメントを含めても良いかもしれませんが)、「連鎖」してしまうところにその特徴的で特筆すべき困難さがあります。それが受け継がれてしまう仕組みに迫るのが今回の内容となります。

1.虐待を受けた子は将来、虐待することになるのか? 被虐待児が将来、我が子を虐待するかは、1/3の確率との報告があ

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むき出しの脳に攻撃できるか(第二期:第6回④)

むき出しの脳に攻撃できるか(第二期:第6回④)

1.むき出しの脳に攻撃できるか 相手の言動に強い恐怖を抱くとき。相手から自分の存在が軽んじられて踏みにじられ、見捨てられていると感じるとき。
 その感覚は、ここまでで触れてきた実際に生じる「脳の病変」に繋がるような「痛み」とでも言えるような、脳からの「警鐘」かもしれません。「脳」が助けを求めているのかもしれません。

 そのリアルタイムで見ることができない脳の動きを、仮に目視できたとして、もし、自

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4つの精神疾患と脳(第二期:第6回③)

4つの精神疾患と脳(第二期:第6回③)

 『虐待が脳を変える』には虐待やマルトリートメントが脳に与える影響の他に、PTSD、うつ病、解離性障害、境界性パーソナリティ障害の脳研究も紹介されています。これらはその「結果」と理解することもでき、その視点も必要ですが、こういった状態であることがさらなる傷つきの「原因」となることを理解することも重要です。

 子どもの脳は、柔く、それでいて(だからこそ)、発展可能性をもちますが、虐待やマルトリート

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虐待・マルトリートメントと脳(第二期:第6回②)

虐待・マルトリートメントと脳(第二期:第6回②)

 少なくとも現代において「心」の在処とされる「脳」が、虐待やマルトリートメントによって「変わってしまう」ことが、脳研究から分かってきました。ここからは、それについて、小児科医で脳科学者でもある友田先生の著書『虐待が脳を変える』を参考に紹介します。より詳しくはそちらをご参照ください。

 脳は、人間の身体の中でも解明されていない部分の多い臓器であると言われています。脳はまず、「大脳」、「小脳」、「脳

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「心」と「脳」(第二期:第6回①)

「心」と「脳」(第二期:第6回①)

 虐待は非人道的な酷い行為という印象を当然に与えます。人権侵害であることも理解されています。しかし、虐待やマルトリートメントが、発達の途上にある子どもの「脳」を実際に変えてしまうことや、被害を受けた子どもがその脳で「世界」と関わっているということは認識されていない印象を受けます。

1.「心」を知る方法 「心がどこにあるか」という質問に、私たちは「脳」と答えるように思われます。心臓(ハート)という

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「性」、そして「生」(第二期:第5回④)

「性」、そして「生」(第二期:第5回④)

 「性」に関わる話題も非常にデリケートで、以前の「性同一性障害」が今では「性別違和」(DSM-5)という名称になっています。障害というラベルも外され、直すべき異常な状態そして差別の対象となってしまうものから多様性として認めるものへと認識が変わっています。LGBTも注目されるようになってきました。

1.さまざまな「性」のあり方 「性」には、生物学的な分類や機能(sex)の他に、社会的役割(gend

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うつ、不安、パーソナリティ(第二期:第5回③)

うつ、不安、パーソナリティ(第二期:第5回③)

 「うつ」に代表される気分に関わるもの、「パニック」や「PTSD」などの不安や恐怖が関与するもの、そして発達障害以前に注目されていた「パーソナリティ」の障害。
 私たちが出会う可能性のある「精神疾患」は数多くあります。ここでは、「気分」、「不安と恐怖」、「人格」ということについて触れます。

1.「気分」とその障害 「気分の波(浮き沈み)が激しい」と他者のことを形容することがありますが、そこまでで

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思春期に関連して(第二期:第5回②)

思春期に関連して(第二期:第5回②)

 そもそも、大人であることと子どもであることの違いは何でしょうか。生物として子どもを産み育てることができるようになることでしょうか。またはそれが法的に許される年齢のことでしょうか。では、子どもを産んで育てることができるとはどういうことでしょうか。ではなぜ虐待は起こるのでしょうか。

1.子どもでもなく、大人でもない存在 思春期の身体的な変化は、メンタルにも影響するホルモンが関与しているため、心理的

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虐待・マルトリートメントと精神疾患(第二期:第5回①)

虐待・マルトリートメントと精神疾患(第二期:第5回①)

 前回は「発達障害」、前々回は「愛着障害」について触れました。その中でも挙げた診断基準「DSM」に書かれているものを「精神疾患」と理解することが最も簡単な理解であるように思われます。第5回は、その他の精神疾患について、その概観と、虐待やマルトリートメントとの関連について考えていきます。

1.「精神疾患」とは

 精神疾患とは「正常な反応」の「長さと深さの異常」であるというのが要点です。気分の落ち

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