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「発達障害」について(第二期:第4回①)

1.「発達障害」とは

 関連する本によく書かれているように、発達障害という名称は「総称」です。この言葉が示す範囲は、文脈により様々ですが、的確に捉えようとするならば、診断基準として使われる「DSM-5」の「神経発達症群/神経発達障害群」という章に記載されているものとすることが現在の最も広範囲での理解と言えます。

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 もう少し狭い範囲で用いられるのが、最も多いように思われます。よく名前があがるASDADHDLDの3つです。前者のみを指す、または後者を含まない場合もある印象を受けます。文脈によりASDからADHD、LD、そしてDSMの1章を指し、「誤解」されたところまで広がる。それが発達障害という「現象」と言えます。

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2.愛着障害との関連

 その誤解のほとんど全てに当たるのが、前回触れた「愛着障害」であると考えられます。どちらも独特の認知(認識)をしやすく、対人関係にトラブルを生じやすいという点で似ており、これが誤解を生んでいるように思われます。最近では生物学的メカニズムにも共通点が多いことも分かってきたそうです。

 名称が違えば相違点があるのは当然で、両者はその原因論が異なります。発達障害は、「先天的」な脳機能障害とされ、生まれつき脳の働きが違うことが原因と考えられています。それに対し愛着障害は、前回の内容のとおり、環境からの影響で「後天的」な変化です。後に触れますが、脳も病変しています。

 ですから、実際に対人関係のトラブルやそのもととなる認知(認識)などに何らかの問題を抱えたケースを理解する際には、その原因が生育歴に見られるかどうかに留意します。生後に原因として特定できそうな出来事(トラウマや喪失)があれば、発達障害とは言えない可能性があります。虐待はその最たるものです。

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 また、発達障害は虐待やマルトリートメントのリスクであるため、両者は重複し得ます。前回記したとおり、診断は医療行為です。大切なのは、診断の名称やその有無ではなく、個々の人にどのように相対するかということです。いずれの場合も避けるべき重大な問題は、「うつ」をはじめとする二次障害です。

3.誤解することの最大の問題

 先天的で変わらないとされている発達障害とは対照的に、愛着障害では後天的な傷つきを癒すことができます。あるケースを発達障害と捉える最大のリスクは、変わらないとして手を尽くすのを怠ることです。その人の抱える問題が発達障害ではなく愛着障害の範疇であれば、それは重大な機会損失となります。

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