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きっと、恋をしていた
「あなた、本当はいい人いるんじゃないの」
祖母の言葉に食べかけの豆苗を詰まらせそうになる。隣では妹がお茶をむせていた。
・・・
その日、昼前に電話がかかってきた。
「あなた、今日は予定は?」
「特には。あれ、ママから検査入院って聞いてるけど、持っていくものとかある?」
「なら恵比寿に出てきてちょうだい。今日、退院したのよ。で、今、恵比寿のいつもの中華のお店にいるから。食べさせてあげるか
泣くことを忘れていた
泣かない子だった。
涙の理由が分からなかった。
練習をしたのだ。泣かない練習を。
泣きそうになれば、自分をツネる。視線を外して気を逸らし、別のことを考える。そうやって泣かないようにした。
いつしか、泣かない自分が出来上がっていた。
『帰ってきたドラえもん』を観ても、泣かない。『のび太の結婚前夜』を観ても、泣かない。クラスでイジメ問題があって泣いている子を見ても、泣かない。ケガをして
作家になりたかった私へ
9歳の私へ
「20年を経て、今のあなたは小説集と、小説のような膨らみのあるエッセイ集をつくっています」
そう言ったら、驚くでしょうか。やっぱりそうかと思うでしょうか。
でもね、あなたが思っているのとは、ちょっと違うかもしれません。
まず、「小説集」のほうは、内容がきっと想像しているものと違うでしょう。読んだこともない雰囲気なんじゃないかな。私自身、正直いまでも少し驚いているんですよ。
だから、会って話したい。――『会って、話すこと。』刊行記念 田中泰延×今野良介トークイベント@青山ブックセンター
もう11月に入ったというのに、小走りに歩くとじんわり汗をかくような暖かさ。「数週間前は冬が来たと思うほど冷え込んだのになぁ」なんてぼんやり考えながら青山の大通りを歩いていると、長方形を規則正しく積み上げて三角形をつくったような国連大学が見えてきました。その横の道を抜けて、奥のエスカレーターをトトトと軽く降りていきます。
弾む息と心を小さく整えて通り抜けた自動ドアの先は、青山ブックセンター。着込み
祈りと、返せずにいたお便り / #会って話すこと
まだ太陽が眩しかった、9月初旬。少しは緊急事態宣言という長いトンネルの出口の光が見えてきて、失った夏を取り戻そうと、外を眺め出した頃。
『会って、話すこと。』(ダイヤモンド社)について、「noteを書きましょうね」と、まだ本を手にする前から、著者本人と気軽に約束していました。
もちろん、9月14日の発売前に予約し、届いたその日のうちに最後まで読み切りました。
姉妹本の『読みたいことを、書けば
反応する勇気と、反応に敏感であることと
雑誌が好きだ。最近は、本屋にふらりと立ち寄ると、だいたい1冊雑誌を抱えて出てきている。
雑誌を買う楽しみは、福袋を買う感覚にも似ている。webメディアや本とは違った、街で穴場のお店を見つけるような記事との出会いが嬉しい。
好きな雑誌は、と聞かれて真っ先に思い浮かぶのは『ソトコト』。福祉やソーシャル分野に関心の高い人にとってはベタな一冊かもしれない。「ソーシャル&エコ」をテーマに、ポップで愛らし