廣瀬翼(つー)

大阪出身、東京在住。大学在学中にベトナムで留学希望者に日本語を教える。卒業後は食物アレルギー対応旅行→編プロでwebコンテンツを中心に編集・ライティング(会社員)。分野は美容業界、オーディオ、ビジネスなど。

廣瀬翼(つー)

大阪出身、東京在住。大学在学中にベトナムで留学希望者に日本語を教える。卒業後は食物アレルギー対応旅行→編プロでwebコンテンツを中心に編集・ライティング(会社員)。分野は美容業界、オーディオ、ビジネスなど。

マガジン

  • 彩 〜Photo〜

    あちらこちらで撮った写真たち。

  • 翼は翔ぶためについている 〜Article〜

    月1本程度を、気まぐれに更新します。エッセイ、イベントレポート、読書や映画の感想など。

  • 日日是好日 〜Diary〜

    日記のような、ある日の記録。

  • 喋喋喃喃 〜talking over coffee〜

    つぶやき以上、日記未満。 だいたい毎日更新するnoteをまとめたマガジン。更新時間は翌日のこともあり。他のマガジンを更新した日はおやすみ。

  • お知らせ 〜information〜

    stand.fm更新や、イベントなどのお知らせなどを更新します。

最近の記事

  • 固定された記事

祖母と約束

 丸い粒の電子音が車内に流れ、女性の声がまもなく次の駅に到着すると告げる。ゆっくりと瞼を上げ、頭をもたせていた窓の外を見ると、田んぼが広がっていた。新幹線が少しずつ減速し、田園の中に大きなイオンモールが見えてくる。  富山・高岡。最後に来たのは、2019年の年末。この2年で、世界は変わった。けれど窓の外に見える景色は、2年前のそれと何一つ変わっていなかった。  東京は数日前から急に冷え込んだ。雪国の北陸はもっと寒いだろう。そう思って持ってきたマフラーを、ベージュのトレンチ

    • 色彩 〜2023年2月 その1〜

      美容室帰り。表参道を歩いた。 交差点には 「THE BIG ISSUE」の販売員がいた。 ここで売っているのは、初めて見た。 最新号を一部購入。 販売員のお兄さんに 「スヌーピー好きなんですか?」と聞いたら、 「どうしてわかったんですか?」と言われた。 マフラーも帽子も 全てスヌーピーが付いていたのだから、 どうしてもこうしてもない。 「あ、そうですね」と笑ったお兄さんに 話しかけて良かったと思った。 お兄さんが立っているのと 対角にある建物には 高級ブランド「PR

      • きっと、恋をしていた

        「あなた、本当はいい人いるんじゃないの」  祖母の言葉に食べかけの豆苗を詰まらせそうになる。隣では妹がお茶をむせていた。 ・・・  その日、昼前に電話がかかってきた。 「あなた、今日は予定は?」 「特には。あれ、ママから検査入院って聞いてるけど、持っていくものとかある?」 「なら恵比寿に出てきてちょうだい。今日、退院したのよ。で、今、恵比寿のいつもの中華のお店にいるから。食べさせてあげるから、出てきなさい。着の身着のままで化粧もしなくていいから、早くね!」  一方的

        • 色彩 〜2023年1月 その2〜

        マガジン

        マガジンをすべて見る すべて見る
        • 彩 〜Photo〜
          廣瀬翼(つー)
        • 翼は翔ぶためについている 〜Article〜
          廣瀬翼(つー)
        • 日日是好日 〜Diary〜
          廣瀬翼(つー)
        • 喋喋喃喃 〜talking over coffee〜
          廣瀬翼(つー)
        • お知らせ 〜information〜
          廣瀬翼(つー)
        • 一瞬に弾ける 〜inprov〜
          廣瀬翼(つー)

        記事

        記事をすべて見る すべて見る

          色彩 〜2023年1月 その1〜

          浅草を歩いた。 1月末、キンとした空気を ほんわり和らげるような 陽射しのある日だった。 鳩は太陽のぽかぽかを 羽いっぱいにためているかのように ふくふくしていた。 目的地は、「梅と星」さん。 美味しい梅干しと 羽釜ご飯が食べられるという。 お店は 仲見世通りを浅草寺に向かっていく 途中で、一本入ったところにある。 白い旗に光が差して もっと白く輝いていた。 一組分待って、すぐに入れた。 カウンターには七福神の人形が 並んでいた。 目玉は「おともみくじ定食」。

          泣くことを忘れていた

           泣かない子だった。  涙の理由が分からなかった。  練習をしたのだ。泣かない練習を。  泣きそうになれば、自分をツネる。視線を外して気を逸らし、別のことを考える。そうやって泣かないようにした。  いつしか、泣かない自分が出来上がっていた。  『帰ってきたドラえもん』を観ても、泣かない。『のび太の結婚前夜』を観ても、泣かない。クラスでイジメ問題があって泣いている子を見ても、泣かない。ケガをしても、泣かない。  母は私を「冷たい」と言った。  たしかあれは、小学校1年か

          作家になりたかった私へ

          9歳の私へ 「20年を経て、今のあなたは小説集と、小説のような膨らみのあるエッセイ集をつくっています」  そう言ったら、驚くでしょうか。やっぱりそうかと思うでしょうか。  でもね、あなたが思っているのとは、ちょっと違うかもしれません。  まず、「小説集」のほうは、内容がきっと想像しているものと違うでしょう。読んだこともない雰囲気なんじゃないかな。私自身、正直いまでも少し驚いているんですよ。自分が恋やなんやのお話をつくることに携わっていくとは、思っていなかった。  でも

          鉛筆削り

           我が家には鉛筆削りがない。これまで、特に必要なかったからだ。  普段はシャープペンシルを使う。鉛筆を使うのは、マーク式の試験のときくらいで、それも長らく受けていなかった。  ところが最近、鉛筆を使うようになった。記事の編集・確認をするとき、シャープペンシルより鉛筆のほうが落ち着いて読めるのだ。なぜ、と聞かれたら、わからない。ただなんとなく、鉛筆がいい。もしかすると柔らかな鉛の書き心地が、文章に優しくあたれる心持ちを導いてくれているのかもしれない。  これまでは出社したとき

          小さな火を灯すように

          『メリー・ポピンズ』の楽曲『小さな火を灯せ』を初めて聞いたのは、2019年12月。新横浜の障害者スポーツ文化センター 横浜ラポールにある「ラポールシアター」で行われた、NPO法人 心魂プロジェクトのクリスマスフェスティバルでの一幕だった。  歌っているのは、小学生〜高校生の病児・障害児、きょうだい児、彼らと共に生きる子どもたち10人。車椅子に乗っている子や、酸素ボンベのカートを常に引っ張っている子もいる。  一年の半分は入院生活だという子。心臓病に合併症などさまざまあって常

          途絶え

           40日間。更新が翌日になることはあっても、とにかく1日1本分を投稿してきたnoteが、途絶えた。5月28日分の投稿が、翌29日の午前中にも間に合わなかった。  今日2本を夜に更新して本数を担保し、「続けている」ということもできる。どこかで本数調整はしたい。  だけど、やっぱり途絶えさせてしまったなぁという悔しさは拭えない。調子が悪いなと思う日も、とにかく何か更新してきたのに。  昨日は友人とバーベキューに行った。本当は行こうかどうか、かなり迷った。少し予定や対応が詰ま

          飴玉と死の予感

           飴玉を、飲み込んだ。  飲み込んだというより、ホールインワンというほうが近い。  直径3センチほどはあるべっこう飴。半球体で、梅干しが入っている。まだなめはじめたばかり。ほとんど、袋から出した途端のサイズのままだった。  寝っ転がりながら、梅の部分をなめようと思って舌で転がそうとしたら、スポンと喉の奥まで抜けてしまったのだ。そのまま、どこにも当たることもつっかえることもなく、自分の意思ではコントロールできない喉の奥に吸い込まれていく。  はっ……やばい、しんだ……  瞬

          「決める」って、決める。

          「決める」って ちょっぴり苦手だなって 思ってた。 不安だから「決める」を先延ばしにして だけど「決める」ができないから不安で ぐーるぐる。 どんどん「決める」ができなくなる。 でも一度「決める」ができたら その腹をくくれたら それまでが嘘のように霧が晴れて 視界が明るくなる。 先が見えるようになってくるって 最近知った。 ジェットコースターみたいだ。 乗り込むまではあらぬ不安やドキドキで 緊張して、どうしようどうしようと思って だけど順番がきて ちょっとの勇気を出

          天才にはなれないけれど

           夜はできる限り小説を編集する時間に当てている。  夜の編集はなかなか辛い。それなりのダメージを喰らう。小説の内容に、感情が乱高下。編集するよりも「分かる〜」とか、「ちょっと、なんでそうなるんよ」とか、「ああ、なんて健気なの、あなたは」とか考えてしまう。結果、1話を編集するのに相当な回数読み返すことになり、想定以上の時間がかかっている。  でも、やっぱりこの編集している時間が幸せだ。まだまだやることは山積みで、3歩進んで2歩下がるみたいな状態なのだけど、編集している間だけはそ

          蜘蛛

           目が合った。一瞬、時が止まった。  さて、どうしよう。話しかけようか、外へ案内しようか。悪い奴じゃないけれど、ベッドの近くにいられるのはなんだか嫌だ。少しお昼寝したいのに、そんなところにいるのを見かけたら、寝返り打つ時に下に移動していたらどうしようとか考えてしまうじゃないか。  と、悩んでいるうちに、あちらがプイとそっぽを向いた。カシカシと口を動かして、ちょこちょこと壁を動き続ける。どこを目指してるんだろう。あと、そんなにずっと壁にいて、体液片寄って気持ち悪くならんのやろか

          「優等生」って、言わないで。

           小学生のころから、よく「優等生」と言われてきた。実際、成績は悪くはなかったし、なぜかずっと先生に目をかけていただいていた。別に胡麻を擦ったり媚を売ったりしたわけではない。ただ、社宅住まいだったこともあってか、どうしたら大人に「いい子」と思ってもらえるのかを嗅覚レベルで知っていたのだろう。  だけど、「優等生」って褒め言葉じゃないよなと思う。本当にずば抜けて優秀な相手には、使わないでしょ。  先生のお気に入りだからか、表立って何か言われることはなかった。けれど、一部の女子

          相互の「ありがとう」が生まれる場所

           「ありがとう」は素敵な言葉。けれど、一方的に言うだけの関係は、辛くなる。「いつも自分は何かをしてもらってばっかりだ」と。どんな小さなことでもいい、人には「自分も誰かの役に立っている」という感覚が、心豊かに生きていくには必要なのだと思います。 「脊椎損傷で手足が動かなくなってから、『ありがとう』って言ってばかりだったんです。それが、分身ロボットカフェのパイロットとして働くようになって、『ありがとう』を言うばかりでなく、言ってもらえるようになった。お給料以上に、それが大きいで