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中沢新一著『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』などを読む

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中沢新一氏の著作『レンマ学』『精神の考古学』『構造の奥』『精霊の王』『アースダイバー神社編』などを読み解きます。
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#人文学

意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

意味分節理論とは(4) 中間的第三項を象徴するモノたち -中沢新一著『アースダイバー神社編』を読む

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中沢新一氏の『アースダイバー神社編』を引き続き読む。

(前回、前前回の続きですが、今回だけでお楽しみいただけるはずです)

『アースダイバー神社編』には、諏訪大社、大神神社、出雲大社、そして伊勢神宮といった極めて古い歴史を持つ神社が登場する。

中沢氏はこれらの神社に今日にまで伝わる神話や儀礼やシンボル(象徴)たちを媒にして

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創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

創造的分節システムとしての"耳"を発生させる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(7-2)

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中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目の後編である。(前編はこちら↓ですが、前回を読んでいなくても大丈夫です。)



(最初から読みたいという方はこちら↓からご覧ください。)

境界性『精霊の王』、単行本の208ページには、精霊の王=宿神は「境界性」を象徴する、とある。

境界性とはどういう

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"現実”の深層へ -中沢新一著『精霊の王』(と『アースダイバー 神社編』)を精読する(7-1)

"現実”の深層へ -中沢新一著『精霊の王』(と『アースダイバー 神社編』)を精読する(7-1)

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中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note、その7回目である。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても、今回の話だけでお楽しみいただけます。)



今回は第8章から最後までを一気に読んでみよう。・・・と思っていた所、2021年4月20日に中沢新一氏の新刊が発売されました。その名も『アースダイバー 神社編』

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人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

人間の世界が発生する場所にふれる -中沢新一著『精霊の王』を精読する(6)

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中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。第七章「『明宿集』の深淵」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)



『明宿集』というのは室町時代の能楽師 金春禅竹によって記された書である。善竹はかの世阿弥の娘婿でもあり、「芭蕉」など珠玉の能楽を生み出した人である。

翁とはその善竹が、

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鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

鼓のリズムから生じる波紋としての意味分節構造 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(5)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第六章「後戸に立つ食人王」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

後戸というのは聞き慣れない言葉かもしれない。また食人王、人を食べる王、などというのもどうにも不気味な感じのする言葉である。

こういう謎めいた、時に不気味な言葉で新たな意味分節を試みることが、既成の思考のプロセスを織り成している言葉たちの分節体系

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区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

区別・分節作用それ自体の象徴としての"精霊"へ -中沢新一著『精霊の王』を精読する(4)

中沢新一氏の著書『精霊の王』を精読する連続note。その第四章「ユーラシア的精霊」と第五章「縁したたる金春禅竹」を読む。

(前回はこちらですが、前回を読んでいなくても大丈夫です)

精霊の王というのはその名の通り「精霊」の「王」である。

精霊には古今東西色々なものが居り、人類によってさまざまな名で呼ばれてきた。精霊は多種多様でさまざまな名を持っている。

しかし、そうした精霊たちの間には、違い

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精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

精霊の王は人界と異界の媒介者である -中沢新一著『精霊の王』を精読する(3)

中沢新一氏の著書『精霊の王』。その第二章「奇跡の書」、第三章「堂々たる胎児」を読んでみる。

第一章「謎の宿神」では、宿神が蹴鞠の精霊、「鞠精」として姿を現した。それが第二章「奇跡の書」では、今度は宿神が能楽の「翁」として姿を現す。

幽玄の世界に入り込むと同時に、それを言葉によって理論化した金春禅竹。その善竹の筆による『明宿集』には「「翁」が宿神であり、宿神とは天体の中心である北極星であり、宇宙

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ソシュールからチョムスキーまで「相即相入」で、ことばの不思議を解明する -中沢新一著『レンマ学』を精読する(10)

ソシュールからチョムスキーまで「相即相入」で、ことばの不思議を解明する -中沢新一著『レンマ学』を精読する(10)

中沢新一氏の『レンマ学』を読む連続note、今回は276ページからの第十一章「レンマ派言語学」を読んでみる。

言語、ことば個人的に、この第十一章は『レンマ学』の中でも一番盛り上がるところである。

何がおもしろいかと言えば、言語ということ、それも「言葉が意味する」ということを、ソシュールからチョムスキーまでの一見相反することを主張しているかのように見える理論を華厳的に相即相入させて、レンマ学の”

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分別から相即相入へ ー吉本隆明『最後の親鸞』p120より

分別から相即相入へ ー吉本隆明『最後の親鸞』p120より

しばらく前から中沢新一氏の『レンマ学』を読んでいる。

『レンマ学』では、ロゴス的知性に対して、それを支える土台としてのレンマ的知性ということを考える。私たちの言葉や、言葉による意識的な思考はロゴス的な知性の働きである。それに対するレンマ的知性とはロゴス的知性の土台ともいうべきもので、ロゴス的知性はレンマ的知性の「変異体」である。

このレンマ的知性は、ロゴス的知性とは大きく異なった動き方をする。

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無意識-言語-脳をつなぐ「アーラヤ織」 ー中沢新一著『レンマ学』を精読する(8)

無意識-言語-脳をつなぐ「アーラヤ織」 ー中沢新一著『レンマ学』を精読する(8)

中沢新一氏の著書『レンマ学』を読む連続読書note、今回は第七章「対称性無意識」を読んでみる。

これまでのところで「生命」や「言語」が、レンマ学の概念の組み合わせを通して捉え直されてきた。そして第六章、第七章、第八章では「無意識」の概念がレンマ学の概念たちのペアからなる構造に写像され、新たにレンマ学的な対象として浮かび上がることになる。

無意識という概念の発見、あるいはフロイトによるその深化は

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「生命」と「言語」をレンマ学的に理解する ー中沢新一著『レンマ学』を精読する(7)

「生命」と「言語」をレンマ学的に理解する ー中沢新一著『レンマ学』を精読する(7)

中沢新一氏の著書『レンマ学』を読む連続読書noteである。

今回は107ページから、第五章「現代に甦るレンマ学」を読んでみよう。

レンマ学は、仏教の華厳の思想を考え方のモデルとして、人間の存在をロゴス的知性とレンマ的知性がハイブリッドになったシステムの運動として記述してみようという試みである。

私たちが日常いろいろと考えたり感じたりしているときの意識は「ロゴス的知性」の働きが前面に際立ってい

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レンマ×ロゴスのハイブリッドは「脳」から始まる −中沢新一著『レンマ学』を精読する(6)

レンマ×ロゴスのハイブリッドは「脳」から始まる −中沢新一著『レンマ学』を精読する(6)

中沢新一氏の『レンマ学』を読む連続noteも6回目である。

前回の記事はこちらであり、締めくくりに次のように書いた。

私たち人間が、区別と差別で煩悩に苛まれるのは「生滅心」の働きのせいなのだけれども、人間の心は実は生滅心だけでなく、生滅心と心真如との「和合」によって成り立っている。ここに人間が煩悩に苛まれつつそこから脱する道がある。

人間はロゴス的知性によって、ものごとを整然と分けることがで

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『ホモ・デウス』×『レンマ学』を読む−「知能」と「意識」と「知性」。進化するシンボル体系=意味発生装置の場所

『ホモ・デウス』×『レンマ学』を読む−「知能」と「意識」と「知性」。進化するシンボル体系=意味発生装置の場所

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『サピエンス全史』の著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は、この本を通じて一貫して、人類の歴史における「虚構」の力に注目をしている。サピエンスの歴史は、虚構の使い方の歴史と言い換えてもよいくらいである。

虚構の力というのは、私たちが、目の前に存在しないもののことを想像・創造し、それについて言葉でしゃべったり、イメージを描いたり=

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アーラヤ識とは? −中沢新一著『レンマ学』を精読する(5)

アーラヤ識とは? −中沢新一著『レンマ学』を精読する(5)

ひきつづき、中沢新一氏の『レンマ学』を読む。今回は88ページの「大乗起信論による補填」を紐解いてみよう。この節は「レンマ学」の構想の核心部分であると思われる。

今回のキーワードはアーラヤ識である。

アーラヤ識とは何だろうか?

アーラヤ識アーラヤ識とは、人間の心の構造、運動のパターンが形成される場である。アーラヤ識という言葉を用いて、人間の心の不思議に探りを入れることができるのである。

人間

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