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春は鎌倉

今回の鎌倉探訪のきっかけは海外からの友人の来日だった。正味五日間の東京滞在、一日くらいは都会を離れて、郊外の空気を吸ってもいいのではないか - そう思いついて予定に組み込んだのがそもそもの発端だが、私にとっても鎌倉を目的に訪れるのは、ほぼ20年ぶりだった。

そんなわけで、私自身も久しぶりの鎌倉をとても楽しみにしていた。蓋を開ければ、友人の滞在日程では最も好天の一日で、彼女も楽しんでくれたようだった。この思い出深い一日を振り返ってみたいと思う。

江ノ電

ここも20年ぶりの江ノ電鎌倉駅。日焼けを気にしてしまうほどの陽射しに目がくら
久しぶりの江ノ電の乗車に、子どものように心踊る
雲ひとつない晴天の鎌倉、長谷はせ

鎌倉の大仏 高徳院

まず向かったのは鎌倉の大仏、高徳院。友人の観光にかこつけて、久しくお会いしていない鎌倉の大仏様に、私もご挨拶したかったのかもしれない。大仏様は記憶より小さく感じたけれど、晴天のもと、晴れやかな気持ちでお会いできて、朝から心の平安を感じられたこの日。

雨の日も風の日もここに佇んでいる大仏様。お顔を拝見して心穏やかになれた気がした
横顔も穏やかで心和む
好天もあり午前中から人出の多い高徳院

ちなみに、友人の希望で大仏様の “胎内” にも今回初めて入ったが、見た目より狭く暗かった。が、夏はひんやりしてよいかもしれない。

長谷寺はせでら

次は徒歩で長谷寺はせでらへ。

立派な門構え
前日の凍える雨が、鎌倉では嘘のように晴天に
春咲きの椿が明るく太陽に映える
可愛らしいお地蔵さんたち。雨の日も風の日もここで笑顔で立っていることに頭が下がる思い
蕾が膨らみ始めた木蓮
お天気の良さに水面みなももキラキラと輝く

桜はつぼみ、しかし木蓮や椿は花をほころばせて、春のかぐわしい香りが感じられる庭園。太陽の光が眩しくも有り難い春である。私は20代の頃、紫陽花の季節によく鎌倉を訪れたものだったが、春は初めてだった。しかしながら、生命の息吹いぶきが感じられるこの季節とこの陽射し。なんて素晴らしい日だろう。鎌倉に来てよかった。そう感じた瞬間だった。

長谷寺の高台から由比ヶ浜を望む
下段に並んでいるのは、小さな水子のお地蔵さんたち

普段はロンドン在住の友人も、鎌倉をいたく気に入った様子だった。ロンドンは雨が多く、冬は長くて、そして寒い。まだまだこごえる寒さのの地から来た彼女は、の光を何度も浴びて、文字通りこの日光と暖かさに自分を "浸して" いた。

ゆるやかな春風と遠目に浮かぶ逗子

雲ひとつないこの日、長谷寺の高台から見下ろす由比ヶ浜も、文句ない美しさだった。快晴のこの日、高台からの湘南の海にはっと見惚みとれて、束の間風の音を聞きながらしばらくの間私はぼんやりと海を眺めていた。大袈裟かもしれない、けれどこの日はまるで奇跡のように美しくて、夢のように素晴らしい日だった。

この日は週末、しかも晴天、桜も開花し始めており、混雑必至と予想した私は、友人がヴィーガンということもあり、はなから鎌倉で食事をすることは諦め、何処かでピクニックがてら持参したものでランチを済ませる予定だった。

しかし、長谷寺の高台にレストランを見つけ、お寺はそこそこ人が入っているのに何故かそれほどの混雑でもないこのお店、聞けば待ち時間も15分ほど、そして彼らが提供しているのはヴィーガンメニュー。こんな晴れた日のピクニックも楽しいけれど、レストランにも入ってみたい。そんな好奇心から、結局ここでランチをすることになった私たち。

お寺の混雑の割にここはそれほどでもなく、レストラン内からの眺望も最高。リラックスしてランチをいただくことができた

長谷寺 お食事処 海光庵

海をゆったりと眺めながらヴィーガンメニューのランチをいただき、お腹も満たされ想像以上に満足できたランチタイム。

その後は別腹で、高台脇にあるお店でお団子とコーヒーを手に入れ、春の風と景色を楽しみながら外の席でおやつを頬張った私たち。"花より団子“ も楽しみ、すでにここまででパーフェクトな春の鎌倉の一日である。

御霊ごりょう神社

晴天のもとゆるりと歩きながら、次は成就院を目指している時だった。

私がGoogle Mapを片手に道案内をしていたのだが、友人がふと横道にれた。厳密に言えば、成就院に向かう方が "横道に逸れる" と言え得るほど友人が向かった方が広い道で、またその方面から人が流れてきていたから、そちらがまるで順路のように思われた。しかし私は念のため、友人に声を掛けた。成就院はそっちじゃないよ、と。

すると友人は "こっちから人が来るわ、こっちに何かあるんだよ" という。正に私も同じことを思っていた。Google Mapには何もない(ように見えた)その方角に、私たちは進んでみることにした。

友人が行ってみようと言った先に現れたのは…

すると…何とも小さい、まるで林の中に隠れているようなこぢんまりとした神社の鳥居が現れた。一見わかりにくいこの神社、しかしこの規模ながら境内には少なからぬ人。Google Mapでもかなり拡大して初めて小さく表示されるような神社で、私は小さく驚いた。それまでは私の案内通りに進む彼女が、地図も何も見ていないのに、この時は "こちらに行ってみよう" と提案したのだ。果たしてそこには "Google Mapを拡大しないと現れない" 小さな神社があった。

奥まった場所にあるこの神社はこぎれいで、そこにはまるで人を寄せ集めるかのように "よい気" が流れていて、狭い境内に多くの人が参拝していた。この旅で友人が神社に来るのは初めてだったので、お寺と神社の違いはわかるか尋ねると "わかるわ。それはちゃんと勉強してきたもの" と。私はうれしくなり、2人で行儀よく参拝の列に並び、静かにお参りを済ませた後、その小さな神社を後にした。

神社を出た後 "きっとあなた、あそこの神さまに呼ばれたのね" と私が言うと、"そうね" と彼女。こんな偶然も旅の醍醐味。そんな話をしながら、成就院、そして極楽寺に向かった。

成就院

小さなお寺。しかし何本かある桜は開花し、この高台からは由比ヶ浜を眺めることができる、とてもすてきなロケーション

極楽寺

成就院も極楽寺も、私はその名前が好きだ。

極楽寺で見つけた桜の蕾。今頃は満開を迎えているだろう

これは偶然なのかそうでないのか、全く知るよしもないのだけれど、縁起のいい名前の多いこの辺りのお寺を巡り、江ノ電の線路を渡り、そして由比ヶ浜の海へ出た。

由比ヶ浜

友人は海に来られるとは思っていなかったようで、さらには "いつでもビーチに行きたいと思うほど海が好き。いつも海を求めている" という。そんな彼女はビーチに着くと歓喜し裸足になって、砂を踏み締め海と風と好天と、そしてこの地球を味わっていた。

私は、花見用に購入したレジャーシートをその日持っていないことをひどく悔やんだ

その後私たちはまた予定を変更し、鎌倉駅まで歩き、人でごった返す御成通りを抜けて鶴岡八幡宮へ向かった。

御成通り

ここもまた、私にとってはほぼ20年ぶりの場所だった。横浜時代(私は20代の頃横浜に住んでいた)は思いつくと鎌倉に来て、御成通りを抜け鶴岡八幡宮に参ったものだった。あの頃も御成通りはそこそこ混んでいた気もするけれど、この日の混雑はコロナ前を彷彿とさせる人混み。以前もここまでだっただろうか。記憶は定かではない。

私にとっては懐かしの御成通り

けれど確かなことは、鎌倉は東京とは違う空気感で私たちを迎え入れてくれ、運良く週末の一日をとても楽しませてくれたということだった。

鶴岡八幡宮

日暮前に駆け込みで鶴岡八幡宮さんへ

帰国の前日、友人に何処が一番楽しかったか尋ねると、返ってきたのは "鎌倉かな…でも銀座もよかったわ" との答え。友人が楽しんでくれてうれしかった。そして私も便乗して、20年ぶりの鎌倉をたっぷり堪能した。旅は時々、偶然と勘に任せると面白いことが起こるということも本能でまた思い出した。いやしかし、あの偶然は鎌倉の神さまか仏様の仕業に違いない。それも含めてこのご縁に感謝して、近いうちにまた鎌倉の神さま達にお礼参りをしなければ、と思うこの頃である。

※ 挿入されている写真及び画像、動画コンテンツはすべて筆者によるものです。また、施設等の情報は、当記事執筆時点(2023年3月)のものとなります。

(Kamakura, 19 March 2023)

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