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一次創作、短編小説やお絵かきをしています。 自サイト「もうふの民(たみ)」↓ htt…

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一次創作、短編小説やお絵かきをしています。 自サイト「もうふの民(たみ)」↓ https://sites.google.com/view/moum-na-teatime/  良かったら覗いてみてくださいね。

記事一覧

豆話/縁

 真っ直ぐ歩いたなら  いつのまにか帰り道  そのくらいまんまる  今立っている場所が  いつだってまんなか  それなのに思うこと  向こうの空の出来事が  海の向こ…

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3日前
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豆話/かくしごと

 君の見てきたものを知りたくて。知らない君を知りたいんだよ。  だけど君の隠し事は知らない。君に秘密があるかすら知らないんだから。  君が言いたくないなら最期ま…

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7日前
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豆話/紫陽花が白いのは

 白い紫陽花。色を失った後なのか、それともこれから色づくのか。もしかしたら初めから終わりまで真っ白なのかもしれない。    今年は雨がまだ降らない。来るはずの梅雨…

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11日前
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昔の自分と

 「若い頃の方が楽しかった」  「学生時代にまた戻りたい」  そう思える人がちょっとだけ羨ましくある。自分は歳を重ねた今の方が楽しいから。    学生時代、すごく…

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2週間前
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豆話/夢にくるまれて

 もう一つ、世界がある。それは夢の中。  覚えていたり、覚えていなかったり。  時折ふと思い出す風景。  初めて来た場所。  それが夢で見たあの場所に似ていて。 …

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2週間前
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短編小説/水たまり行きの切符

 雨が降りそうな気配がする。空気が湿ってきた。当たり前か、梅雨の季節だ。道端には、紫陽花が密やかに咲く。時折アガパンサスがにょきり、顔を覗かせる。まさに梅雨の景…

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3週間前
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豆話/明日を振り返って

 どうして今日にいるのに明日を振り返っているのだろう。  明日を恐れて眠れない。明日が来ない内から明日をみている。明日のことは明日にならないと決してわからない。…

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3週間前
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豆話/未知を道ゆく

 避けては通れない道。道は未知。  逃げ出したくなる。自分が居なくても何とかなる。遠くへ行ってしまいたい。  実行できるのにしないのはどうしてだろうか。やっぱり…

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4週間前
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ちょっと暗い話

 気持ちがすっきりしない。失敗してしまった。    もちろんフォローしてくれる、声を掛けてくれる人もいる。それでも今回の失敗は、日頃自分でも足りないと思っていた所…

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4週間前
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豆話/もうふの民

 毛布にくるまらないといけない。そうしないと安心できない。まわりの嫌なものから柔らかな毛布が守ってくれるはずだから。  時には頭巾のように、時にはケープのように…

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1か月前
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文学フリマ東京38 感想4

『TOKIMAKE』コスメアンソロジー   揚羽はな様、甘木零様、実石沙枝子様   じゅりあ様、菅浩江様、中野怜理様   花草セレ様、真下みこと様、まだりん様   松本あず…

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1か月前
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豆話/新緑に染まる

 木々がざわめく音がする。  さらさら流れる風。新緑の木々。その一本の根元に腰掛け目を閉じた。髪が静かに揺れる。風に乱れた髪を整えようと目を開ける。後ろ髪を触り…

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1か月前
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豆話/梅雨どきの花

 梅雨が来る。白い雲がだんだんと灰色に近づき雨粒を降らせる。じめつく空気が震え始めて空が泣き出す。  大きな花を片手に皆が外を歩く。色とりどりの一輪の花を片手に…

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1か月前
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豆話/波打ち際に描いた絵

 寒さの冬が遠ざかり、穏やかな春が訪れようとする時期だ。  貝も拾いたい。ひとつとして同じ色、形、大きさのない貝殻たち。貝殻を耳にあてたい。波の音がするからね、…

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1か月前
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文学フリマ東京38 感想3

『ナビカトリア物語』  ちしまももこ 様  ナビカトリアに行ってみたい、あわよくば住みたい!、一言でまずそう言いたいです。  とても優しい語りで物語が始まり綴ら…

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1か月前
3

豆話/良い闇の光

 光に会いたい。そんな日は眼鏡を外して夜の街を歩きに行く。歩き慣れた道。そうじゃないと道を踏み外してしまうから。  信号機だ。歩道から車道を眺める。赤色の光がは…

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1か月前
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豆話/縁

豆話/縁

 真っ直ぐ歩いたなら
 いつのまにか帰り道
 そのくらいまんまる
 今立っている場所が
 いつだってまんなか
 それなのに思うこと

 向こうの空の出来事が
 海の向こうの日常が
 なぜだか宙の彼方での
 遠い物語のようにきこえてる

 星がきいたら笑うのかな
 空がきいたら泣くのかな
 月がきいたら悲しむかな
 海がきいたら呆れるかな
 風がきいたら怒るのかな

 地球が丸いって知っているから

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豆話/かくしごと

豆話/かくしごと

 君の見てきたものを知りたくて。知らない君を知りたいんだよ。

 だけど君の隠し事は知らない。君に秘密があるかすら知らないんだから。

 君が言いたくないなら最期まで知らないから。それでいいから。

 なにもかも、知らなくていい君のこと。待つ必要なぞありはしない。話す理由はないから。

 君とともにあればそれでいいから。

 隠し事と書く仕事。書いていて気がつきました。だから言葉は日本語は楽しい。

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豆話/紫陽花が白いのは

豆話/紫陽花が白いのは

 白い紫陽花。色を失った後なのか、それともこれから色づくのか。もしかしたら初めから終わりまで真っ白なのかもしれない。
 
 今年は雨がまだ降らない。来るはずの梅雨が遅れている。夏か、と思うような日差しが肌を焼く。
 
 空の涙に触れて、紫陽花は彩られる。涙の色に生まれ変わる。青、紫、桃、赤、緑、色とりどり。
 
 けれども一向に降らない雨、待ちぼうけ。紫陽花は梅雨を待ち侘びる。それでも遠い梅雨の日

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昔の自分と

昔の自分と

 「若い頃の方が楽しかった」
 「学生時代にまた戻りたい」

 そう思える人がちょっとだけ羨ましくある。自分は歳を重ねた今の方が楽しいから。
 
 学生時代、すごく苦労したわけじゃない。でもそれなりに嫌な事はたくさんあって。思い出すのは良かった事よりも暗い思いばかり。楽しかった思い出なんて。

 今の方が言いたい事をしっかり話せるし、書ける、描ける。人と関われるのがずっと嬉しい

 思う事がある。

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豆話/夢にくるまれて

豆話/夢にくるまれて

 もう一つ、世界がある。それは夢の中。
 覚えていたり、覚えていなかったり。

 時折ふと思い出す風景。

 初めて来た場所。
 それが夢で見たあの場所に似ていて。
 ただの既視感では片付けられなくて。
 蝶の夢だなんて言われたとしても。

 夢の中、どこにでも行けるのに。自分の意思だけでは行かれない場所。だけど広がる景色は確かに懐かしい。色彩が踊る。夢の中の色を描こうと足掻く心。

 初めて会っ

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短編小説/水たまり行きの切符

短編小説/水たまり行きの切符

 雨が降りそうな気配がする。空気が湿ってきた。当たり前か、梅雨の季節だ。道端には、紫陽花が密やかに咲く。時折アガパンサスがにょきり、顔を覗かせる。まさに梅雨の景色だ。
 天気予報はやっぱり雨。どうやら今日の雨はしとしと、降るらしい。梅雨は不思議な時期だと思う。涼やかな雨が降りしきっていたと思ったら暑い暑い晴れ間が除く。雨の日はまるで晴れの日なんか無いみたいに空が曇るのに。晴れの日は雨の日が嘘みたい

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豆話/明日を振り返って

豆話/明日を振り返って

 どうして今日にいるのに明日を振り返っているのだろう。

 明日を恐れて眠れない。明日が来ない内から明日をみている。明日のことは明日にならないと決してわからない。

 それなのに今日、明日を恐れている。明日も恐ろしいに違いない、ろくな事がないと怯える。明日の結果までわかったように怖がる。

 明日のあの事が気にかかる、きっと大変だろう、辛いだろう。明日のあの事が気がかりだ、明日など来なければ。

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豆話/未知を道ゆく

豆話/未知を道ゆく

 避けては通れない道。道は未知。

 逃げ出したくなる。自分が居なくても何とかなる。遠くへ行ってしまいたい。

 実行できるのにしないのはどうしてだろうか。やっぱり今ここ、この時が大切だから。離れてしまったら戻ってこられない。

 晴れ間を見ては思う。何もかもを投げ出せたら。嫌なことも、不安も置いて、遥か彼方を目指せたら。太陽の昇る先へ、あるいは沈む先へ。そこまで行けたらどんなに暖かなんだろう。

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ちょっと暗い話

ちょっと暗い話

 気持ちがすっきりしない。失敗してしまった。
 
 もちろんフォローしてくれる、声を掛けてくれる人もいる。それでも今回の失敗は、日頃自分でも足りないと思っていた所が原因のひとつになったと思う。
 正しいからこそ突き刺さる言葉。叱責。自覚があるからこそ胸でずっとこだまする。反芻してしまう。一呼吸おいて冷静になれたはず。後悔しても遅いけれど。
 自分のために今日の失敗はして良かったのかもしれない。自分

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豆話/もうふの民

豆話/もうふの民

 毛布にくるまらないといけない。そうしないと安心できない。まわりの嫌なものから柔らかな毛布が守ってくれるはずだから。
 時には頭巾のように、時にはケープのように。身体の一部みたいに、毛布を身につける。
 側にないとうわの空。柔らかな感触を懐かしみ悲しみにくれる。落ち着かない、気もそぞろ。やり場のない手が宙を彷徨う。外の世界は刺激が強過ぎて。強い衝撃がそのまま自分にのしかかる。毛布にくるまれていない

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文学フリマ東京38 感想4

文学フリマ東京38 感想4

『TOKIMAKE』コスメアンソロジー
  揚羽はな様、甘木零様、実石沙枝子様
  じゅりあ様、菅浩江様、中野怜理様
  花草セレ様、真下みこと様、まだりん様
  松本あずさ様

 びっくりしました。とても良い意味でです。

 題名に惹かれて購入させていただきました。
トキメイク、と書いてあります。きっとメイク、お化粧の華やかさや喜び、ときめきについて書かれているのかなと予想していました。
 
 

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豆話/新緑に染まる

豆話/新緑に染まる

 木々がざわめく音がする。

 さらさら流れる風。新緑の木々。その一本の根元に腰掛け目を閉じた。髪が静かに揺れる。風に乱れた髪を整えようと目を開ける。後ろ髪を触りながら目線を上げた。頭上には木漏れ日。ウロコのように光が散りばめられている。陽の光も風に揺らめきまたたく。あたたかな光。眩しくて目を細めると、緩やかな眠気が訪れた。
 そのまま目を瞑る。目の裏にはまだ新緑が焼き付いている。瞼を透かして木漏

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豆話/梅雨どきの花

豆話/梅雨どきの花

 梅雨が来る。白い雲がだんだんと灰色に近づき雨粒を降らせる。じめつく空気が震え始めて空が泣き出す。

 大きな花を片手に皆が外を歩く。色とりどりの一輪の花を片手に。身を縮めながら、花の影に隠れて歩く。それはどんな花なのか。透明で見上げれば空をうつしている花。雨のゆううつも忘れさせてくれる彩り豊かな花々。灰色の雲よりもさらに深い黒色。それぞれがお気に入りの、はたまたそれぞれの目的にあった花を咲かせて

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豆話/波打ち際に描いた絵

豆話/波打ち際に描いた絵

 寒さの冬が遠ざかり、穏やかな春が訪れようとする時期だ。

 貝も拾いたい。ひとつとして同じ色、形、大きさのない貝殻たち。貝殻を耳にあてたい。波の音がするからね、よく聞いた話だ。小さな頃、自分の頭くらい大きな貝殻に耳を近づけた。ゴーっと水が流れるような音がしたっけ。あれは渦潮の音なのか。海流の音なのか。波の音なのか。きっと海の声なのだろう。貝殻に閉じ込められた海の声。海が懐かしくて鳴いている。

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文学フリマ東京38 感想3

文学フリマ東京38 感想3

『ナビカトリア物語』
 ちしまももこ 様

 ナビカトリアに行ってみたい、あわよくば住みたい!、一言でまずそう言いたいです。

 とても優しい語りで物語が始まり綴られています。敢えて終わりのない物語、すごく惹かれました。区切りのない物語が、流れゆくナビカトリアそのもののようで。島に住んでいる人々の悠久の穏やかさを表しているようで。
 
 小さなエリィと頑固なトーヤの2人がとってもキュートです。女将

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豆話/良い闇の光

豆話/良い闇の光

 光に会いたい。そんな日は眼鏡を外して夜の街を歩きに行く。歩き慣れた道。そうじゃないと道を踏み外してしまうから。
 信号機だ。歩道から車道を眺める。赤色の光がはじける。丸いはずの形はぼうっと光り、さらに丸く大きく見える。眩しい、と瞬きしたら青信号。停車していた自動車を見送る。たくさんの尾灯がゆらめき遠ざかる景色。
 背の高い街頭が頭上を照らす。白っぽい光がほわりと広がる。点々と存在するそれらは街中

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