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豆話/未知を道ゆく

 避けては通れない道。道は未知。

 逃げ出したくなる。自分が居なくても何とかなる。遠くへ行ってしまいたい。

 実行できるのにしないのはどうしてだろうか。やっぱり今ここ、この時が大切だから。離れてしまったら戻ってこられない。

 晴れ間を見ては思う。何もかもを投げ出せたら。嫌なことも、不安も置いて、遥か彼方を目指せたら。太陽の昇る先へ、あるいは沈む先へ。そこまで行けたらどんなに暖かなんだろう。

 雨降りの日に思う。悲しみを、怒りを、嘆きを、洗い流してくれたら。水をたたえてうるむ花々のように優しい色合いになれたら。水滴を弾く木々の音をずっと聴いていられたら。

 曇り空を見て思う。まるで落ち窪んで、穴の空いた心のようだと。あらゆる衝撃を受けてへこみきった傷ついた心の奥底。全てを灰にそめて、辛い出来事を塗りつぶしてくれたら。

 虹を見て思う。架け橋になってくれたら。明るく照らしてくれた光を思い出す。心に届いた言葉の光。虹の片側にあなたが居てくれたら、光があなたにも届いたら、恥ずかしげもなくそう思うんだ。

 やっぱり自分はこの道を離れないんだ。

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