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豆話/夢にくるまれて


 もう一つ、世界がある。それは夢の中。
 覚えていたり、覚えていなかったり。

 時折ふと思い出す風景。

 初めて来た場所。
 それが夢で見たあの場所に似ていて。
 ただの既視感では片付けられなくて。
 蝶の夢だなんて言われたとしても。

 夢の中、どこにでも行けるのに。自分の意思だけでは行かれない場所。だけど広がる景色は確かに懐かしい。色彩が踊る。夢の中の色を描こうと足掻く心。

 初めて会った人。
 それが夢で出会った人かもしれなくて。
 ただの偶然とは言いたくなくて。
 夢を見過ぎているなんて呆れられたとしても。

 夢の中、ぼんやりとした視界。焦点がはっきり定まらない。だけど目の前に居るのは確かにあなた。声が聞こえる。耳に伝わる音ではない、直接心に響く心。

 世界はあなたの夢の数だけ存在している。

 夢の中で出会えたら、なんて。そう考えてしまう自分がいる。

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