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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ…
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#聖書

『加藤常昭説教全集24 ペテロの第一の手紙・ヨハネの手紙一』(加藤常昭・教文館)

『加藤常昭説教全集24 ペテロの第一の手紙・ヨハネの手紙一』(加藤常昭・教文館)

加藤常昭先生の本は、振り返ってみると、ずいぶん読んでいる。代表作はもちろんのこと、聖書講話シリーズや、道シリーズなどもある。翻訳ものを含めると、個人別にして一番多く持っているだろう。だが、「説教全集」は、一冊も持っていなかった。なにしろ高いのだ。そして、きりがないからだ。
 
しかし、D教会で一年間説教を続けた2003年度のものが入った巻があるという。D教会のH牧師から聞いたので、「これは」と思っ

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かもしれない

かもしれない

私は、京都に住んでいるときには、自動車運転免許証の必要を感じなかった。そもそも、限られた石油を自分の欲望のために消費する自動車というものに、拒否反応を懐いていたのである。しかし、福岡に戻るという道が示されたとき、運転できるようにはなっておきたいと思うようになった。子どもたちを育てるためですあるが、いまはそのことを細かくお伝えする必要はない。
 
京都の自動車学校に入った。市の中心部に住んでいたので

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依存と信仰について

依存と信仰について

新教出版社『福音と世界』誌は、いつも新たなチャレンジを投げかけてくれる。お決まりの良い子でいるキリスト教雑誌もいい。心が洗われる。本誌は、心が洗われる効果は殆どない。だが、常に新たな視点をもたらしてくれる。知らないことを教えてくれる人が多いというのは、私にとり良い雑誌である。もちろん、それらは真摯な姿勢であり、多面的な調査や研究に基づいた記述であり、信頼のおけるもの、という理解に基づいての意見であ

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聖書愛読こよみ

聖書愛読こよみ

お気づきの方もいらっしゃるだろうと思う。私は1日おきに、聖書から「ショートメッセージ」を記しているが、これは日本聖書協会の、聖書「愛読こよみ」に基づいている。少なくとも2014年の秋から、毎日この聖書箇所を頼りに、聖書と祈りのひとときを過ごすようにしている。そこで与えられた聖書箇所を開き、B6ノート1頁に黙想を綴るのだ。
 
ローズンゲンという、ドイツで伝統の「日々の聖句」もあるが、「愛読こよみ」

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逆説と説教

逆説と説教

「逆説」として自分が発案して説を出すとき、世間の人が騙されているのに自分だけは真理を見出した、のような心理を含んでいることがある。
 
はたして逆説とは何か。こういうときに、昔は決まって「広辞苑」によると……と言っていた。広辞苑信仰があった世代に染みついた性であるのかもしれない。少なくとも、それだけを権威にして寄りかかろうとはしないほうがよいだろう。
 
因みに、旧い広辞苑では、「逆説」について、

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『天の国の種』(バーバラ・ブラウン・テイラー;平野克己・古本みさ訳;キリスト新聞社)

『天の国の種』(バーバラ・ブラウン・テイラー;平野克己・古本みさ訳;キリスト新聞社)

以前本書をメインに据えて触れたことがあるが、本の内容の紹介はしていなかった。本書に関して再読する機会があったとき、それで発覚した。以前読んでいたのに、このコーナーにまとめていなかったのだ。不覚である。遅ればせながら、ご紹介申し上げる。
 
最初に読んだときも、そのイメージ豊かなメッセージに驚愕した。それは明らかに聖書を逸脱している。だが、いま手許の私たちのいる世界での場面としては、まさにそういうこ

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受難週の道

受難週の道

いつの間にか受難週を迎えている。十字架への最後の1週間は、福音書でも記述の熱いところである。
 
福音書というスタイルは、文学的に捉えても独特である。イエスの生涯を描くようでありながら、最後の1週間にエッセンスが集約されているように見える。
 
もちろん、イエスが教えを語り、癒やしなどの業を行ったその歩みは、たっぷりと描かれる。イエスの弟子、そして信仰を継承する仲間に対して、イエスの教えたことやし

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説教と聖書

説教と聖書

礼拝説教を重んじるボーレンは、聖書朗読はどうしても必要であるわけではない、とその『説教学Ⅰ』でしきりに主張している。他方、聖書そのものが神の言葉であるから、その朗読こそが命である、と言う人もいる。ボーレンは、説教がその都度神の言葉となる、という方向で説教を見ている。それは、語る者がどうであれ、という辺りも考察しているから、必ずしも理想的な説教者を想定しているわけではないようだ。
 
それを読んでい

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『イエスの降誕物語 クリスマス説教集』(及川信・教文館)

『イエスの降誕物語 クリスマス説教集』(及川信・教文館)

日本基督教団の牧師である。その説教集が何冊か出版されている。私は好きだ。
 
神の言葉を自分における出来事として聴く。それを語る。また、安易にキリスト教を弁護しない。むしろ、キリスト教世界や教会の中に、とんでもない罠が潜んでいることを感じており、それを告げるのに憚らない。
 
私がもし牧師だったら、きっとこの人のように語るだろう。考えるだろう。だから好きだ。非常に共感できる、ということだ。
 

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『聖書的説教とは?』(渡辺善太・日本基督教団出版局)

『聖書的説教とは?』(渡辺善太・日本基督教団出版局)

加藤常昭先生のお薦めであった。1968年発行の本である。探すと入手可能だった。半世紀以上前の本である。届いた本は日焼けしていたが、線引きなどなく、気持ちよく読めた。
 
渡辺善太(ぜんだ)は、牧師も務めたことがあるが、印象としては説教者である。神学校で教えることも長かったと思う。とにかく「説教」について極めようと努めた方である。本書には、その説教への熱い思いがふんだんにこめられている。
 
自分の

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『書物としての新約聖書』(田川健三・勁草書房)

『書物としての新約聖書』(田川健三・勁草書房)

いつか読みたいと思っていた。ただ、手が出なかった。最近では8000円+税である。分量があることは厭わないが、先立つものがとにかくない。古書も決して安くはならない。価格がどうなのかを、ずっと見守っていた。ここでは明かすが、私はこの度、これを1400円で手に入れたのである。送料込みで1500円を少し超えるだけの価格提示に対して、少しばかりポイントを使ったのだ。それも、線一つ引かれていない、カバーと天に

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言葉にしてみること

言葉にしてみること

中学三年生も受験が近づいてきた。三角柱の体積を求める問題。図としては見取図がそこにあり、ABとACが4cm、ACも4cm、そして∠BACが90°と書いてある。多くの生徒にとっては簡単な問題だ。空間図形の問題を解くためには、見るべき平面を、真正面から書き直して考えるのが基本である。福岡県の公立高校の入試問題は、それを必要としている。それで底面の直角二等辺三角形の図を書いて、「底面積×高さ」の公式に当

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『八色ヨハネ先生』(三宅威仁・文芸社)

『八色ヨハネ先生』(三宅威仁・文芸社)

同志社大学神学部元教授・八色ヨハネ先生は去る十一月一日に、独り暮らしをしていた大阪市西成区のアパートで死亡しているのが発見された。享年八十八。
 
物語は、この2行から始まる。その扉に「本作はフィクションであり、登場人物や出来事は作者による創作である」と記されているが、「同志社大学神学部」は設定場面であるから、創作ではないということなのだろう。著者は、その同志社大学大学院神学部(研究科)教授である

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孤独ではない

孤独ではない

前回の100分de名著「古今和歌集」での、当該の和歌について、もう少し考えてみようかと思う。
 
月見ればちぢに物こそかなしけれわが身ひとつの秋にはあらねど (大江千里)
 
秋は私にだけやってくるわけではないけれど、自分だけに秋が来たような気がする。「物こそかなしけれ」の強調は、そこをこそ詠嘆の要とすべきところであるはずだ。それは正道である。
 
だが、司会者がこれを、自分だけではない、という方

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