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外国語教育_at my desk

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外国語教育について考えた・考えてる・考えるために書いた こと
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記事一覧

「アイマイミーマイン」って変すぎない?

「アイマイミーマイン」って変すぎない?

英語の人称代名詞の格変化を覚える際に,「アイマイミーマイン」(I, my, me, mine)という呪文を唱えたことのある人は多いだろう。
この呪文の続きは「ユーユアユーユアーズ」(you, your, you, yours),「ヒーヒズヒムヒズ」(he, his, him, his),「シーハーハーハーズ」(she, her, her, hers),「ゼイゼアゼムゼアーズ」(they, thei

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塩を量る授業

塩を量る授業

2月に訪問した札幌新陽高校で見た理科の授業。
生徒たちは塩を掬って、特定の重さピッタリに計量するという活動をしていた。
規定の数値に満たなければ塩を足して、超えてしまったら失敗。数値を超えないように地道に塩を足していく生徒もいれば、一発でピタリを狙って失敗を繰り返す生徒も。

教室はそのゲーム性ゆえにそこそこ盛り上がってはいたのだが、それを見ていた私には理科の授業としてこの時間に何の意味があるのか

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『英文法を哲学する』

『英文法を哲学する』

佐藤良明(2022)『英文法を哲学する』を拝読した。

今年読んだ英語関連本の中でもすこぶる面白かったので,もうすぐ出版から1年ほど経つようなタイミングではあるが簡単にまとめておきたい。
出来るだけ多くの英語教員に読んでもらいたい本なので,ギリギリ冬休みに間に合うように。

本書の基本スタンス-英語に乗る本書全体を通して佐藤は英語を日本語の枠組みから捉えることに否定的で,英語という言語に出会い,英

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学生からの質問「授業中に内職してる学生ってどうしますか?」

学生からの質問「授業中に内職してる学生ってどうしますか?」

教職の学生からふと雑談中に聞かれて、なんとなく自分の納得いく回答ができなかったなぁ、とモヤモヤしていたので改めてこの記事を書くことで自分の考えを整理してみようと思う。基本的に考えた順番に書き出していくので読みづらさはご勘弁いただきたい。

まず一つ、教職の学生たちが将来見ることになるであろう中高生と、私が今見ている大学生とでは、ちょっと考え方も変わってくるのかなというのは大前提にある気がする。
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佐藤・笠原(2022)『効果的英語授業の設計 ―理解・練習・繰り返しを重視して―』

佐藤・笠原(2022)『効果的英語授業の設計 ―理解・練習・繰り返しを重視して―』

はじめに前回、青木(1987)『いい授業の条件』について「期待していたよりずっと中身が軽い」と書いた記事を読んだ知人から、「めっちゃ昔の本だし大丈夫だと思うけど、こんなこと書いて怒られたりしないの?」と連絡をもらった。
私のnoteを読んだ上で、心配までしてくれる人がいるとは思わなかったので、ありがたい。
だが、(もしかしたら怒られることはあるかもしれないけど)怒られるようなことはしていないはずだ

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青木幹勇(1987)『いい授業の条件』国土社

青木幹勇(1987)『いい授業の条件』国土社

正直,期待していたよりずっと中身が軽い印象。いや,勝手に期待したこちらの問題でもあるのだけど,まえがきで「「いい授業」であるか,そうでない授業かは,いうまでもなく,子どもの側に立っての評価でなければなりません」と述べられている一方で,中身は筆者の主義の表明である部分が多い。筆者が確かに子どもたちの様子を見て「いい授業だ」と思えた経験から抽出した内容なのだろうが,どうしても説教臭く感じてしまう。

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TOEICは消えた方がいいのか?

TOEICは消えた方がいいのか?

この記事を見たときには何も言う気にもならなかったけど、勤務校の学生の多くがTOEICを軸として英語学習に励んでいるので、学生がこういう記事に何かを思うこともあるかもしれないと思い、自分なりに考えをまとめておくべきかなと思った。

まず大前提として、私自身はTOEICのための勉強をしたのはせいぜい大学1年生の一瞬ぐらいで、TOEICに限らず英検などあらゆる検定試験に興味も熱量もない。イギリス大学院留

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「異文化コミュニケーションの視点から考える英語教育」—鳥飼玖美子氏 特別講演

「異文化コミュニケーションの視点から考える英語教育」—鳥飼玖美子氏 特別講演

2021年度ELEC英語教育賞授与式に続いて行われた鳥飼玖美子氏の特別講演「異文化コミュニケーションの視点から考える英語教育」を視聴した。

全体を通して非常に聞きやすいし理解しやすい。これは鳥飼氏の著書等をそれなりにフォローしてきた上にかなり肯定的に捉えていることと無関係ではないだろうけど。

暗雲立ち込める「グローバリズム」「グローバル化」「グローバリズム」という言葉はもう聞き飽きるほど何年も

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英語学習はゲームなのだろうか?

英語学習はゲームなのだろうか?

平尾昌宏(2022)『人生はゲームなのだろうか?—<答えのなさそうな問題>に答える哲学』を読んだ。

この本をごく簡単に紹介した上で,「英語学習はゲームなのだろうか?」という問いに答えを出したい。

ゲームとは何か?ここでの「ゲーム」にはいわゆるスマホやゲーム機で遊ぶコンピュータゲームだけでなく,スポーツの試合やテーブルゲームも含む。

「目指すべき終わり」というのは,相手に勝利するとか,高いスコ

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【授業で洋楽】 Photograph / Ed Sheeran

【授業で洋楽】 Photograph / Ed Sheeran

オミクロン株の感染急拡大に伴って,勤務校は少し前からオンライン授業に切り替わった。
私の英語の授業の一番の「売り」は,長い英文を見ても目を背けなくなる(と信じたい)読解の授業だと思っている。

それがオンラインでは,まぁ正直厳しい。オンライン授業で一人で家で黙って教科書3~4ページ分の英文に立ち向かえるのであれば,もうその生徒には私の授業は必要ないとも言える。

というわけで,思い切って授業を根本

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共通テスト(英語・リーディング)について思うこと

共通テスト(英語・リーディング)について思うこと

テストの概要今年の共通テストは以下の6つの大問で構成された。
第1問 … 広告
第2問 … A. ビラ? B. 広告
第3問 … A. ブログ B. 雑誌
第4問 … ブログ
第5問 … 論説文とそれをまとめたノート
第6問 … A. 論説文とノート B. 記事とそこから作ったプレゼンの草稿

昨年と同じく発音や文法・語法などの知識を直接的に問う問題はなく,様々な媒体によって提示された文字情報を読

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現場で使える教育社会学

現場で使える教育社会学

今年度,初めての担任や初めての生徒指導部での経験から,(やはり初めて)生徒の「問題行動」の裏側にある様々な事情を真剣に考える機会を得た。
そして,これまで学校教育の中でも教科教育(特に英語教育)についてばかり考えてきた自分の教師としての「脆さ」を自覚し,教育社会学なる分野をより深く学ぶ必要性を痛感した。

そんな折にタイミングよく出版されたのが,中村・松岡(2021)『現場で使える教育社会学: 教

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ピア・フィードバック

ピア・フィードバック

こちらの本を読んだ。

この1年ぐらい,生徒主体の活動を中心に英語の授業(特にリーディング)を構成してきたつもりだが,その中で彼らにフィードバックを返すのは決まって私だった。

秋頃にやったライティングで初めて個々の成果物(または制作途中のもの)を全体にシェアして,「他の人のを読んで,自分のライティングの改善点があったら直してみよう」という形を取ったが,それも他の生徒から直接フィードバックを与えら

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中学英文法「意味順」ドリル

中学英文法「意味順」ドリル

今年9月、以下の二冊のドリルが発売された。

この本についての詳細は著者のお一人である奥住先生が色々と書いているし,YouTubeでの対談もさせていただいたのだが,ここでは一人の英語教師としてのこのドリルに対する考え方を書いていく。

教材の目的全ての教材に言えることだが,数ある教材の中からその教材を選ぶ「目的」の明確化は非常に重要だ。中学校・高校で「文法ワーク」「文法参考書」的な教材を使用すると

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