押収品アーティスト (1分ショートショート)
今まで、数々の押収品を体育館に並べてきた。
ブラジャー100枚を、AカップからGカップへ。
バット50本は、グリップをクロスさせ、らせん状に積み上げて。
覚醒剤2キロを、小さなビニール袋に分け、等間隔に。
そして今日、自転車のサドル200個を、グラデーションに並べていた時、とうとう僕は教師に見つかってしまった。
「だって、警察官採用試験を受けたいのに、どの先生も推薦してくれないから……」
口をすぼめてみせた。
「教室や更衣室で、人の物を盗み、勝手に並べ、インスタグラムにアップする人間は、警察官にはなれないよ」
教師は、あきれている。
「盗んでなんかいません。撮影した後で、ちゃんと本人に返してますよ」
「一生、言っとけ。ところで、この覚醒剤は本物?」
僕のインスタ画面を見せてきた。
「いいえ。家庭科室の小麦粉を、小分けにしました。本物なら、末端価格1億3千万円です」
教師は、無言で画面をスクロール。
リコーダー100本、スクール水着150枚。
そして僕の最高傑作、ドミノ型に並べたエロDVD200枚。
「僕は、絶対、警察官になりますから」
【2年後】
押収された、色とりどりのドラッグ5000錠で作った、犯人の顔の点描画。
ドローンで撮影した映像を見て、先輩の警察官たちが、感嘆の声を上げた。
「これ、お前が並べたの?」
「芸術の域だよ」
「犯人は、50個ものコンドームに詰めて、飲み込んでいたらしいな」
僕は、天職に就けて、本当に良かったと思った。
「ええ。ちゃんと本人には返しましたよ」
(写真引用︰テレビ東京)
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