一文物語「やる気の悪魔」 「さぁ、やるぞ」とデスクに向きあってみたものの、やる気は起きず、やりたいことリストを確認したら、やりたくないリストに早変わりしてしまい、心が整うまで待っていたら夜になって、「やる」という恐怖の悪魔が布団の中にまで襲ってきて、眠れない。
一文物語「初回無料の輪廻」 「初回無料」にうながされた魂が、毎回新しい肉体に入って、無料で人生を経験させられている。
一文物語「関係石けん」 日々、逃れることのできないフライパンの油のようなしつこい人間関係の汚れを落とす石けんがSNSでバズって、試しにそれで体やスマホを洗うと、誰とも関わりがなくなり、今は社会もSNSも洗浄されて静かになっている。
一文物語「大人にゆで卵」 人としてまだ卵だったわたしは、殻を破ることも中身をさらけ出すのも嫌い、硬い殻で身を守っていたが、柔軟性を持ち合わせた張りのある真っ白な大人な身へと、彼に茹で温められ殻をむかれている。