笠原 英二(単行本が文庫本に見える手を持つ男)
読んだ本の感想です。ネタバレとか意識せずに書くので、たぶんネタバレしてるとおもいます。それ以外の本にまつわる出来事も書きます。
小説なんて心の赴くままに自由に書けばいい、と言ったりしますが、それは才能のある人の場合。私のような凡人は、その道の先達の意見を大いに参考にします。読んだ書き方の本を紹介していきます。
飯田茂実さんの「一文物語集」に感銘を受けました。
日記を書いたり、思いついた情景描写だったり。 一つ一つは短め、だと思います。
5分から10分程度で読めます。 賞に応募してボツだったものをあげています。 「ああ、こういうのがダメな見本なんだ」と思いながら読んでください(笑)
著者 三島由紀夫(1925~1970) あらすじ 金閣寺に憧れ、将来の跡取り候補として金閣寺に入り、金閣寺を深く愛し、しかし愛し過ぎたのか、いつしか自身の手で「金閣寺を焼かねば」と思い至り……。 印象に残った人物 主人公「私」の母の縁者、倉井という男。蚊帳がないからと、私、母、そして父と三人の寝ている中に入り込んで寝た倉井は、「私」の母に手を出す。父は気づいているが、気づかないふりを「私」にもさせる。ふしだらな母、破廉恥な倉井、だらしのない父、そしてそんな大人たち
著者 スティーヴン・キング(1947~) 8月16日読み始め8月22日読了。 訳者 沼尻素子 あらすじ 全米から集められた少年100人が、名誉と賞金を得るためにロングウォークに挑む。ルールはシンプル。規定以上の速度で、休みなく歩く。それだけ。脱落者および逃亡者は即射殺。 印象に残った人物 レース開始早々、主人公ギャラティとブチューをかわした女性。なんだか鮮烈なエロさで、その後次々と死んでいく少年たちと「生(性)と死」の対比を、見事に演出している。 感想
著者 レフ・トルストイ(1828~1910) 7月27日読み始め8月14日読了。 訳者 藤沼貴 あらすじ 男性公爵ネフリュードフが、青春時代に恋をし、相思相愛ではあるものの半ば無理矢理に情を交わしてしまった下女カチューシャと、数年ぶりに再会。しかし、再開場所は裁判所。カチューシャは被告。ネフリュードフは陪審員。ほぼ無実なカチューシャを、誤って有罪にしてしまった陪審員たち。ネフリュードフは、彼女を救い出すために奮闘する中で、彼女への想いが蘇ってくるのだった。 印象
著者 ウィリアム・フォークナー(1897~1962) 7月17日読み始め7月27日読了。 訳者 加島祥造 あらすじ 医学生崩れのウィルボーンが人妻シャーロットと恋に落ちて、各地を転々とし、最後には望まぬ子を堕胎しようとして、シャーロットを殺してしまう「野生の棕櫚」。 ミシシッピ川の大洪水で、意図せず漂流することとなった背の高い囚人。彼は途中、妊婦を救助し、二人(のちに子供が生まれ三人)で生き延びる「オールド・マン」。 この二つの話が、交互に繰り広げられる。二つ
著者 夏目漱石(1867~1916) 7月11日読み始め7月15日読了。 あらすじ 「私」が、父の今際の際に立ち会うために帰郷しているその最中、「先生」から、分厚い手紙が届く、走り読みするとそれが遺書のようなものだということが分かる。矢も楯もたまらず、「私」は東京へ向かう列車に飛び乗り、そこでその手紙を読み返し、「私」は先生の重い過去を知ることになる。この作品では、その「先生」からの手紙が大半を占めている。 印象に残った人物 「私」の友人、K。愚直で一本気な性格。そ
著者 ガブリエル・ガルシア・マルケス(1927~2014) 6月4日読み始め6月15日読了。 訳者 鼓直 あらすじ 呪われているのか愛されているのか分からない一族ブエンディア家と、彼らが興した町マコンドの栄枯盛衰の物語。 印象に残った人物 ブエンディア家初代当主、ホセ・アルカディオ・ブエンディアの妻、ウルスラ。5代も6代も続くブエンディア家を、影になり日向になり支えてきた肝っ玉母ちゃん(以後、敬意をこめて「母ちゃん」と表記する)は、この物語の骨というか、脊髄
著者 ダニエル・デフォー(1660~1731) 5月29日読み始め6月4日読了。 訳者 鈴木恵 あらすじ 波乱に満ちあふれ過ぎた男、ロビンソン・クルーソーの物語。 印象に残った人物 蛮人のフライデー。ロビンソンに命を救われたことに多大なる感謝の意を示し、生涯ロビンソンのために生きることを誓い、事実そうした。「白鯨」のクィークェグに似た立ち位置で、驚異の身体能力をたびたび披露して、物語に特殊な躍動感を与えている。 感想 ロビンソン・クルーソーが無人島で生
著者 フィリップ・キンドレド・ディック(1928~1982) 5月24日読み始め5月28日読了。 訳者 浅倉久志 あらすじ 最終戦争後の世界。人間以外の生き物はほとんどが死滅した世界では、“本物の生き物を飼うこと”が最高のステータスとなっていた。主人公のリック・デッカードは元警察官で、今はアンドロイドを抹殺(破壊)して賞金を稼ぐバウンティハンター。彼は機械の羊を飼っているが、本物の生き物を飼うために、手ごわい最新式のアンドロイドを次々に葬っていく。 印象に残った
著者 アガサ・クリスティー(1890~1976) 5月19日読み始め5月24日読了。 訳者 羽田 詩津子 あらすじ 金持ちのアクロイドが殺された。その数日前には、恋仲との噂もあったフェラーズ夫人も殺されている。二つの事件の相関関係は? そして真の犯人は? 印象に残った人物 キャロライン。医師ジェームズ・シェパードの姉。噂話好き。人の話を聞かない。自分の推測は絶対正しいと思っている。狭い世界で生まれ育った女性にありがちな気質を全て詰め込んだ様な性格。本人は全く悪
著者 川端康成(1899~1972) 5月13日読み始め5月19日読了。 あらすじ ボケ始めた初老の男性、尾形信吾の目線で、家庭内のゴダゴダを描いた作品。 印象に残った人物 菊子。信吾の息子修一の嫁。嫁という立場をわきまえ、夫の浮気に耐え、出戻り娘の房子にも気をつかい、家庭内の潤滑油の役目をいかんなく発揮する健気な菊子がとても健気。義理の父である信吾にとてもよく懐き、時に涙まで見せる。それはそう、まるで思春期の頃の恋心を、読者(男性限定かな?)に抱かせる。読後、菊
2024年4月11日~5月12日 著者 ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ(1547~1616) 訳者 牛島 信明 あらすじ 気のふれた郷士が、自分は遍歴の騎士だと思い込むようになり、従士(同じ村の農夫)のパンチョと、スペインを旅する物語。 印象に残った人物 1.サンチョ・パンサ。ドン・キホーテの従士。念願かなってとある土地の領主となるも、仕事は忙しく、付きの主治医のせいで食事も満足にとれず、最後には戦(大がかりないたずら)でもみくちゃにされ、心底領主に嫌気
2024年4月11日から読み始める。 著者 ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ(1547~1616) 前篇1 (4月11~19日) 長ったらしい序章。 ドン・キホーテの旅立ち。 宿屋にて大暴れの末、騎士叙任。 商人たちに戦いを挑み、ボコボコに。 村に戻って彼の親族や村人から介抱。 眠っている間に村人たちが彼の書斎から騎士道物語の類の本を焚書。 サンチョを伴い、再出発。 風車に戦いを挑み、返り討ち。 ビスカヤ人との決闘。中断。二部へと続いて、作者口上から始まり、ビスカ
著者 アゴタ・クリストフ(1935~2011) 4月7日読み始め、4月10日読了。 あらすじ 悪童日記の続編。双子のうち、国境を越えたクラウスと、祖母の家に残ったリュカ。これは後者リュカの物語。 印象に残った人物 マティアス。まだ若い女性ヤスミーヌとその父親との間にできた子供。ヤスミーヌが妊娠中、それがバレないようコルセットをきつく締め続けたせいで、やや奇形気味。しかし頭脳は明晰。そして最後に……。 感想 たとえばの話でこの小説の空気感を伝えたいと思う。
著者 夏目漱石(1867~1916) 4月1日読み始め、4月7日読了。 あらすじ 東京の大学に通うため、熊本から上京した三四郎の、恋愛モヤモヤ物語。 印象に残った人物 里見 美穪子。この物語のヒロイン。冒頭に出てくる謎の淫乱女もインパクト大だが、やはり美禰子に軍配を上げる。彼女の存在が、この物語に大きな色艶を与えている。 感想 読んでいて思ったのは、「映像的だな」ということ。描写している情景がパッと目に浮かんでくる。印象に残った描写を引用する。美禰子がぬかる
著者 アゴタ・クリストフ(1935~2011) 3月30日読み始め3月31日読了。 訳者 堀 茂樹 あらすじ 第二次世界大戦、ドイツ占領下のハンガリーの国境の田舎町が舞台。ただし、作品中に具体的な地名は出て来ず、〈大きな町〉や〈小さな町〉と、抽象的に表現されている。 意地クソ悪い祖母の家に預けられた双子の物語。双子の“悪童”は、戦時下という狂った世界の中で、狂った大人たちに翻弄されつつも、それを受け入れ、そして乗り越え、たくましく(というかしぶとく)生きていく。
著者 安部公房(1924~1993) 3月27日読み始め、3月30日読了。 あらすじ 昆虫採集のためにとある砂丘に訪れた男。目当てのハンミョウを探しているうちに、男は砂の中に埋もれたような集落に迷い込む。 「泊っていきなさい」という村人の好意に甘えて、とある民家に上がると、そこには妙齢の女がいて……。 感想 男は女というエサを与えられる代わりに、砂堀りの労務を強いられる。砂堀りは、集落を水没ならぬ砂没から防ぐために大事な作業で、男が幽閉された民家は、その最前基地