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「ふたりの証拠」読書感想文

著者

アゴタ・クリストフ(1935~2011)
4月7日読み始め、4月10日読了。

あらすじ

 悪童日記の続編。双子のうち、国境を越えたクラウスと、祖母の家に残ったリュカ。これは後者リュカの物語。

印象に残った人物

マティアス。まだ若い女性ヤスミーヌとその父親との間にできた子供。ヤスミーヌが妊娠中、それがバレないようコルセットをきつく締め続けたせいで、やや奇形気味。しかし頭脳は明晰。そして最後に……。

感想

 たとえばの話でこの小説の空気感を伝えたいと思う。
 地球上には色々な人種や文化がある。アフリカやアマゾンで狩りをして生活する人もいれば、近代的な国で一日中デスクワークに勤しむ人もいる。暑かったり、寒かったり、日が短かったり、長かったり。危険な動物がウジャウジャいたり、そうでなかったり……。とまあ、例を挙げきれないくらいの人種や文化があり、そしてそこならではの常識があると思う。その世界中の常識の幅をセンチメートルで喩えるとして、現在の地球上ではどこへ行っても10センチ程度に収まると仮定した場合、この「ふたりの証拠」の世界は、10センチから1センチ飛び出た(あるいは引っ込んだ)常識が支配しているように感じた。
 これは、作品中ではそれほど強調されているわけではないが、監視社会ゆえの常識のゆがみなのかもしれない。そういう意味では、オーウェルの「1984」に代表されるディストピア小説の世界観に近いものがあるのかもしれない。

 衝撃的な出来事がいっぱい起きて、ページを次から次へとめくっていったけれど、箇条書きのような文体は、あまり好きではない。しかも展開が早いので、なんというか、新幹線の中で全速力で走っているような気分になる。
 「悪童日記」、「ふたりの証拠」、「第三の嘘」の三部作だが、三作目を続けて読むぞ!という気にはなれなかった(他にも読みたい小説がいっぱいあるからね)。
 

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