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ファストフード (1分小説)

ハンバーガーを食べていた彼女の顔が、くもった。

「マズい?」

「すごく美味しいわ」

「じゃあ、ネジでも入ってたとか?」

ファストフード店では、あり得る話だ。

「入ってない」

レタスのパリパリ感、チーズの溶け具合、ソースの種類、肉厚、温度、バンズの質、店員の態度、衛生面。

思いつく限りを挙げてみたが、彼女は、すべて「違う」と答えた。

「じゃあ、何?」

彼女は、バンズをめくって中身を見せた。

ソース、チーズ、レタス、ビーフ、バンズ。

いたって普通。

「食べてみて」

手渡されたバーガーを、ちょっと眺めた。

変わったところは、何もない。

ひとくち食べてみると、肉汁が、口いっぱいに広がった。

アツアツの出来たて、100%のビーフはボリューミーで、他の具材やソースとの絡みもいい。最高にウマイ。

でも、僕は気づいてしまった。

「確かに、これは問題かも」

「でしょ?私は、定番のフィレサンドを注文したのよ。メニューを間違えたとしても、こんな商品はないし」

話し合いの結果、店側には伏せることにした。SNSにも載せない。

けっこうな騒ぎになるから。

僕たちは、何事もなかったかのように、ゲンタッキーフライドチキンを後にした。 
                      

※フィクションです。


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