紫苑の始まり

学生時代を思い出して始めた写真撮影、 動かなくなり始めた指で遊んでいるゲーム、 ふと目…

紫苑の始まり

学生時代を思い出して始めた写真撮影、 動かなくなり始めた指で遊んでいるゲーム、 ふと目にとまった論文へのコメント、 退職した大学教員が作る徒然なるブログです。

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記事一覧

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#9 知ること(知ることの原点:アフォーダンスについて)

知ること1.知ることの原点『学習する社会』#8では、ポラニー(1966)の暗黙知の議論における「環境にある諸要素の共時的包括性」と「時間順序で生起する出来事の中の経…

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中山道『垂井宿』の今 普通の民家に屋号札(?)が掛けられていました。

江戸と京都を結んだ五街道の一つ中山道の美濃16宿、その西から三番目の「垂井宿」を訪ねました。慶長5年(1600年)の関ケ原合戦では多くの軍が陣を引いた場所でもあり、…

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#8 知ること(知ることの原点:暗黙知の包括性)

知ること1.知ることの原点『学習する社会』#7において、ポラニーの暗黙知の議論における中核的な主張が「包括性の認知」と「近接項から遠隔項へという知ることの拡大」…

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#7 知ること(知ることの原点:暗黙知について)

知ること次男が手を使い始めた頃、ものを持つのに左手をよく使うようであった。左利き用の道具も多くなった昨今、無理に右利きに矯正することもないとは思ったが、右手で書…

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『味』について考える。決め手は何か?素材か、見た目か、表象か? 雑記#2

最近、料亭「賛否両論」オーナー兼料理人の笠原将弘さんのYouTube動画「笠原将弘の料理のほそ道」をよく見ていて、美味しそうだなと思ったときには作って、食べています。…

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#6 イノベーションから学習へ(「研究的」という立ち位置)

イノベーションから学習へサイモン(H.A.Simon、1991)は科学の究極の目的について「秩序なき複雑さの只中に意味のある単純さを見いだす」ことにあると述べているが、その…

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中馬街道「足助宿」の今 漆喰造りの町家が並び、印象的な看板の多い街並みでした。

この春、尾張・三河から信州を結んでいた中馬街道(伊那街道)の重要な中継地点だった「足助宿」に行ってきました。愛知県では初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選ば…

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#5 イノベーションから学習へ(「学習する社会」という視座について)

イノベーションから学習へ『学習する社会』#2から4まででは、「学習する社会」を当たり前の表現のように扱ってきたが、この表現は決して当たり前の表現ではない。『学習…

紫苑の始まり
2週間前
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社会科学研究の将来 #2 ~組織論・イノベーション論分野を中核として~

前回、実証を重視しすぎることによって、「実証」が半ば目的化していないかという危惧について書きました。実証を重視しすぎることが、「実証」を目的化してしまい、その結…

紫苑の始まり
2週間前
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ミックスナッツを作った。・・・好みのナッツを混ぜて袋につめただけですが。雑記#1

ミックスナッツにはビタミンEやビタミンB1、鉄分、カルシウムといった体が求める栄養素がたっぷりと含まれているといいます。良質な脂肪酸やビタミンEは心臓病予防や免…

紫苑の始まり
2週間前
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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#4 イノベーションから学習へ(社会変動について)

イノベーションから学習へ社会変動とは何か 『学習する社会』#3において、経営学や組織論における変化やイノベーション研究に「学習する社会」という見方が必要なことを…

紫苑の始まり
2週間前
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福井県は本当に恐竜王国だった。福井駅前を恐竜が闊歩している・・・

二人の孫を連れて、昨年夏にリニューアルした福井県立恐竜博物館(https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/)へ出かけました。博物館のある勝山市は恐竜愛にあふれていて、同…

紫苑の始まり
2週間前
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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#3 イノベーションから学習へ(イノベーションについて)

イノベーションから学習へイノベーションのような変化が経営学において研究対象とされたのは、それほど古いことではない。経営学の原点は、科学的管理法と官僚制の議論に求…

紫苑の始まり
2週間前
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論文レビュー #2 林徹「差異への対処: フォレットとバーナードの比較」を読んで

友人からの紹介で、林徹「差異への対処: フォレットとバーナードの比較」(経営学史学会編『現代資本主義のゆくえと経営』経営学史学会年報 第31輯、2024年5月、pp.103-…

紫苑の始まり
3週間前
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中山道「関ケ原宿」の今。おいしい醤油に出会いました。

江戸と京都を結んだ五街道の一つ中山道の美濃16宿、その西から二番目の「関ケ原宿」を訪ねました。天下分け目の戦いで有名なように戦国時代の史跡はもちろん、壬申の乱の…

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3週間前
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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#2 イノベーションから学習へ(「当たり前」について)

イノベーションから学習へ久しぶりに東京から次男が帰ってくるという。夜行バスが到着した早朝、地下鉄に乗ると連絡をしてきた。最寄り駅の前面道路はそれほど広くなく一方…

紫苑の始まり
3週間前
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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#9 知ること(知ることの原点:アフォーダンスについて)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#9 知ること(知ることの原点:アフォーダンスについて)

知ること1.知ることの原点『学習する社会』#8では、ポラニー(1966)の暗黙知の議論における「環境にある諸要素の共時的包括性」と「時間順序で生起する出来事の中の経時的包括性」について掘り下げた。そこでは、暗黙知の議論が知ろうとする能動的な志向によって、多様な諸要素から共時的包括性や経時的包括性を編集する知り方の議論であり、暗黙知が自律的な知であることを指摘した。その上で知ることが環境に制約されて

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中山道『垂井宿』の今 普通の民家に屋号札(?)が掛けられていました。

中山道『垂井宿』の今 普通の民家に屋号札(?)が掛けられていました。

江戸と京都を結んだ五街道の一つ中山道の美濃16宿、その西から三番目の「垂井宿」を訪ねました。慶長5年(1600年)の関ケ原合戦では多くの軍が陣を引いた場所でもあり、全国の鉱山・金属業の総本宮として古くから信仰を集めている南宮大社がある地でもあります。

商店も点在する街並み

東海道本線「垂井駅」の北西に垂井宿の街並みが広がっています。商店街と呼べるほどではないのですが、商店や理髪店などが点在する

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#8 知ること(知ることの原点:暗黙知の包括性)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#8 知ること(知ることの原点:暗黙知の包括性)

知ること1.知ることの原点『学習する社会』#7において、ポラニーの暗黙知の議論における中核的な主張が「包括性の認知」と「近接項から遠隔項へという知ることの拡大」であることを指摘した。今回は暗黙知の包括性について掘り下げてみよう。

(2)暗黙知の包括性

存在の包括性には共時的包括性と経時的包括性がある。共時的包括性は、ある時点における知る対象を諸部分それぞれと諸部分の関係から構成されている全体を

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#7 知ること(知ることの原点:暗黙知について)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#7 知ること(知ることの原点:暗黙知について)

知ること次男が手を使い始めた頃、ものを持つのに左手をよく使うようであった。左利き用の道具も多くなった昨今、無理に右利きに矯正することもないとは思ったが、右手で書いた字の方が綺麗だろうと右手でペンを持つように矯正した。箸は左手で、ペンは右手で持っていたので、次男はとっさに左右の判断をできるようになるのにずいぶんと時間がかかった。先日、確認してみたところ、大人になった今でもとっさに戸惑うことがまだある

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『味』について考える。決め手は何か?素材か、見た目か、表象か? 雑記#2

『味』について考える。決め手は何か?素材か、見た目か、表象か? 雑記#2

最近、料亭「賛否両論」オーナー兼料理人の笠原将弘さんのYouTube動画「笠原将弘の料理のほそ道」をよく見ていて、美味しそうだなと思ったときには作って、食べています。もちろん、私が作っているわけではありません。先日、「プロの味をおうちで再現!アレンジ無限大の【白和え】」(https://youtu.be/OcKNz6TGDrY)を見ました。冷蔵庫にちょうど豆腐がありましたので、その日の夕食には白和

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#6 イノベーションから学習へ(「研究的」という立ち位置)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#6 イノベーションから学習へ(「研究的」という立ち位置)

イノベーションから学習へサイモン(H.A.Simon、1991)は科学の究極の目的について「秩序なき複雑さの只中に意味のある単純さを見いだす」ことにあると述べているが、その単純さを見いだす方法は多様である。盛山(2011)が「実証主義か観念論か」というような様々な二元論対立(図表1)があり、どの二項対立も他のものとは完全に一致ししてはいないとしているように、複雑な世界を単純化するための方法論は多様

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中馬街道「足助宿」の今 漆喰造りの町家が並び、印象的な看板の多い街並みでした。

中馬街道「足助宿」の今 漆喰造りの町家が並び、印象的な看板の多い街並みでした。

この春、尾張・三河から信州を結んでいた中馬街道(伊那街道)の重要な中継地点だった「足助宿」に行ってきました。愛知県では初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選ばれただけあり、宿場町時代の面影を残した街並みが続いていました。

書店と和菓子屋

和菓子屋が何軒もありました。「両口屋」は草餅と柏餅のお土産を購入したお店です。おいしくいただきました。名古屋の老舗「両口屋是清」とは関係がないと言うことでし

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#5 イノベーションから学習へ(「学習する社会」という視座について)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#5 イノベーションから学習へ(「学習する社会」という視座について)

イノベーションから学習へ『学習する社会』#2から4まででは、「学習する社会」を当たり前の表現のように扱ってきたが、この表現は決して当たり前の表現ではない。『学習する社会』と冠したシリーズエッセイでは、「学習する社会」という視座でイノベーションや社会の変化を論考する予定であるが、このシリーズエッセイを進めるにあたって、今回は「学習する社会」という視座の概略を紹介しておきたい。

行為の変化と知識の変

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社会科学研究の将来 #2 ~組織論・イノベーション論分野を中核として~

社会科学研究の将来 #2 ~組織論・イノベーション論分野を中核として~

前回、実証を重視しすぎることによって、「実証」が半ば目的化していないかという危惧について書きました。実証を重視しすぎることが、「実証」を目的化してしまい、その結果、組織論やイノベーション論を中核とする社会科学の分野において理論形成につながる論考が軽視されているのではないかという危惧もあります。

結果としての理論の軽視

理論と実証の関係には、「理論」から導かれる「仮説」を検証(「実証」)する演繹

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ミックスナッツを作った。・・・好みのナッツを混ぜて袋につめただけですが。雑記#1

ミックスナッツを作った。・・・好みのナッツを混ぜて袋につめただけですが。雑記#1

ミックスナッツにはビタミンEやビタミンB1、鉄分、カルシウムといった体が求める栄養素がたっぷりと含まれているといいます。良質な脂肪酸やビタミンEは心臓病予防や免疫力増強に役立ち、食物繊維に富んでいるため、便秘の解消にも効果的だということです。ミックスナッツを食べた際の満腹感により、食事や間食などの摂取量を抑え、ダイエットにも利用できると言われています。健康に良いと聞き、何年も前からミックスナッツを

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#4 イノベーションから学習へ(社会変動について)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#4 イノベーションから学習へ(社会変動について)

イノベーションから学習へ社会変動とは何か

『学習する社会』#3において、経営学や組織論における変化やイノベーション研究に「学習する社会」という見方が必要なことを述べたが、社会の変化についての研究は他の社会科学分野でも進められてきた。特に社会学において、社会変動の研究は主要な研究分野の一つであった。社会学辞典には次のように記述されている。

社会変動論は社会構造の変動研究の中核であり、社会学の分野

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福井県は本当に恐竜王国だった。福井駅前を恐竜が闊歩している・・・

福井県は本当に恐竜王国だった。福井駅前を恐竜が闊歩している・・・

二人の孫を連れて、昨年夏にリニューアルした福井県立恐竜博物館(https://www.dinosaur.pref.fukui.jp/)へ出かけました。博物館のある勝山市は恐竜愛にあふれていて、同じエリアにある県庁所在地福井市も恐竜であふれていました。一泊二日の旅程で、一乗谷朝倉氏遺跡(https://fuku-iro.jp/feature/11)にも足を伸ばしてきました。
孫と一緒にアクティビティ

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#3 イノベーションから学習へ(イノベーションについて)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#3 イノベーションから学習へ(イノベーションについて)

イノベーションから学習へイノベーションのような変化が経営学において研究対象とされたのは、それほど古いことではない。経営学の原点は、科学的管理法と官僚制の議論に求められる。人々の行動を組織的に管理できると考え、組織的行動における安定性に言及している基礎的な考え方である。現在でも、安定性を追求することは重要である。未だに科学的管理法の中核である時間研究や動作研究が行われていない業界や会社は少なくない。

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論文レビュー #2 林徹「差異への対処: フォレットとバーナードの比較」を読んで

論文レビュー #2 林徹「差異への対処: フォレットとバーナードの比較」を読んで

友人からの紹介で、林徹「差異への対処: フォレットとバーナードの比較」(経営学史学会編『現代資本主義のゆくえと経営』経営学史学会年報 第31輯、2024年5月、pp.103-114)を読んだ。私なりのコメントを記しておきたい。なお、私はバーナードの著書『経営者の役割』は読んだことがあるが、フォレットの著書は読んだことがないので、学説史として内容に踏み込んだコメントではなく、この論文の記述内容に限定

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中山道「関ケ原宿」の今。おいしい醤油に出会いました。

中山道「関ケ原宿」の今。おいしい醤油に出会いました。

江戸と京都を結んだ五街道の一つ中山道の美濃16宿、その西から二番目の「関ケ原宿」を訪ねました。天下分け目の戦いで有名なように戦国時代の史跡はもちろん、壬申の乱の史跡などが随所にありました。ただ、今回は中山道沿いを歩きましたので、戦国時代の史跡はほぼ訪れませんでした。現在もなお交通の結節点で、国道21号線(旧中山道)と国道365号線(旧北国街道)の交差点を通過する車列は途切れることはありませんでした

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研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#2 イノベーションから学習へ(「当たり前」について)

研究的なシリーズエッセイ 『学習する社会』#2 イノベーションから学習へ(「当たり前」について)

イノベーションから学習へ久しぶりに東京から次男が帰ってくるという。夜行バスが到着した早朝、地下鉄に乗ると連絡をしてきた。最寄り駅の前面道路はそれほど広くなく一方通行で、通行方向に向かって右側に駅舎、左側にコンビニなどが並んでいる。そのため送迎の車は道路の右側に停車しているのが常であった。しかしその日の朝は道路の左側に停車している車があった。右側停車と左側停車が混在すると停車できる台数が少なくなるの

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