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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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2021年12月の記事一覧

第222話:ペップトーク

第222話:ペップトーク

風という風をあつめてみたくなり海への丘を駆けのぼりゆく

何かの拍子でプラスの衝動みたいなものも、日々の中で、わけもわからないまま沸き起こってくることがあります。

何年か前、学校でペップトークについての講演があり、受験勉強でげんなりしている生徒たちがみんな元気をもらったことがありました。簡単に言えば、ポジティブな言葉を自分や人に語りかけようという話でした。ご興味があれば、こちらをご覧ください。

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第32話:命の摂理

第32話:命の摂理

退職者を祝う宴のたけなわ。

退職者の一人である老教師が
「皆さん、聞いて下さい」
と、突然席を立って大きな声で言った。

一同、静まりそちらに注目すると、

皆さん、私は長年かかって人間が癌に冒される仕組みを解明しました。
それをご披露したいと思います。

そう、老教師は言った。

物理を専門とする教師だった。
どちらかと言えば目立つところのない、
風変わりなところのある人で、
それゆえ一部の若

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第28話:正座

第28話:正座

これも愚話にすぎない。

日本には「正座」という文化?があって、いかにも「正しい座」としての地位に君臨している感がある。それは確かにそうではあるのだろうが、高校生時分までの僕らにとっては、悪いことをした「罰」として「正しさを強制させられる」苦い苦い思い出の位置に君臨していたような気がする。

正座の効用について寺の住職をしていた高校時代の倫理の先生に聞いてみたところ、彼は実際に机の上に座ってみせて

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消滅と再生

消滅と再生

一説によると
月の語源は「尽き」だと言われる。
月は現れて、
太って、やせて、
そして消えてしまう。

月が隠れることを
「月籠る」と言い
それが「つごもり」に転じた。
それが「みそか」と言われるのは
太陰暦でのひと月が
約「三十日」であったからだ。
「三十歳」を「みそじ」と言うように
「三十日」は「みそか」と読まれる。
「晦」という字も
月の消滅した暗さを表す。

一度消えても
月はまた現れる。

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第133話:焚き火

第133話:焚き火

もう昔々の話である。

ある時、新しいメールアドレスを作った。
脳に余裕のない僕は、たいてい自分のあだ名である「土竜」をアドレスに使うのだが、同じように脳に余裕のない人はたくさんいるようで、土竜も、土竜くんも、土竜さんも、土竜ちゃんも、土竜はんも、みんな既に使われてしまっていて、使えない。数字と組み合わせればいいのだが、それも味気ないので半分いい加減に「土竜が海を見ている」と打ち込んだら、さすがに

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第86話:サンタさん

第86話:サンタさん

[子育ての記憶と記録]

クリスマスが日本に定着したのはいつ頃だろう。街路樹がイルミネーションで飾られ、ここかしこにクリスマスソングが流れ、ケーキやプレゼントを買うために人々がごった返し、恋人たちは夜景の見えるレストランで食事をする・・。
いつの間にやらお正月なんかよりずっとハイカラで華やかで魅力的なお祭としてクリスマスは根付いた感がある。

僕の子供時分にはそういうクリスマスはなかった。御馳走が

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第51話:顔

第51話:顔

愚話である。

当然の話だが、人間の顔というのは年を取るに連れて次第に変化して行く。大概の場合、両者は一致して進んで行くものだが、中にはこの一致が微妙にズレて行く人がいて、顔が年齢の速度以上に老けて行く人、あるいは逆に、いわゆる童顔で顔が年齢について行かない人もいる。

大概の人は若く見られた方がいいと考えるだろう。

例えば、日本には吉永小百合という永遠なる美女がいて、いつまでも若々しい。涼しい

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第205話:マスクにマスクを重ねる

第205話:マスクにマスクを重ねる

最近こんな話ばかりしているような気がするが、人の顔が覚えられない。
いや、顔は分かるが名前と顔が一致しない現象が歳とともにひどくなっている。俳優とか歌手は勿論、卒業生がやって来てもわからない。その子の顔ははっきりわかるし、どんな性格だったかも、高校時代の様子や進学先、そうした付帯状況は分かるのに、何故か名前だけがまったく思い出せない。

これはせっかくやって来た卒業生にとっては幻滅に値することのよ

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第199話:高校生に語る言語論

第199話:高校生に語る言語論

※タイトルどおり、国語の授業で言語論に関する評論を読んだとき併せて生徒に話す内容をエッセイ風にまとめました。そのつもりでお読みください。

■1:ウォーリーを探せ
(コトバが世界を分節する)

僕らはモノやコトがまず先にあってそれにコトバが付けられると考えがちですが、そうではありません。
逆に人間はコトバによって外界を切り取る・切り分けることで、渾沌とした世界を認識しているのです。
ちょっとハテナ

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第221話:夜中に書いたラブレター

第221話:夜中に書いたラブレター

雑感です。

日曜の朝、「サンデーモーニング」を観ていたら、ジャーナリストの伊藤詩織氏に関するTwitterでの誹謗中傷を訴えた東京地裁の判決が採り上げられていた。

この裁判では、Re Tweet(リツイート)も不法行為としてその責任を負うという判断が示されたことで話題になっていたが、それを有罪とするのは妥当な判決だっただろうと思う。

それはそれとして、ちょっと驚いたのは、番組のコメントの中で

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