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第221話:夜中に書いたラブレター

雑感です。

日曜の朝、「サンデーモーニング」を観ていたら、ジャーナリストの伊藤詩織氏に関するTwitterでの誹謗中傷を訴えた東京地裁の判決が採り上げられていた。

事件の概要
ジャーナリストの伊藤詩織氏が自らの性被害の告発
漫画家のはすみとしこ氏が「枕営業大失敗!!」と書き添えたイラストを投稿
男性2人がコメントを付けずにこの投稿をリツイート

判決
はすみとしこ氏の誹謗中傷行為について「伊藤さんが虚偽の性被害を訴えていると知らせるもので、社会的評価を低下させた」と指摘。
2人の男性のリツイート行為も「はすみ氏の投稿に賛同する表現として本人自身の発言だと理解するのが相当だ」と認めた。

この裁判では、Re Tweet(リツイート)も不法行為としてその責任を負うという判断が示されたことで話題になっていたが、それを有罪とするのは妥当な判決だっただろうと思う。


それはそれとして、ちょっと驚いたのは、番組のコメントの中で、Re Tweetする時にそれをチェックしてくれる「Re Thinkするアプリ」があるという言葉を聞いたからだった。
「へぇ〜、そんなのあるんだ」と。

Re Think=「再考する」ことはとても大切。
SNS上の発言で傷つけられる人が後を立たない現状は改善されなければならないし、誰かを傷つけないために発信する前にRe Thinkすることは当然すぎるほど当然のことだろう。
意図的な悪意は論外だが、「Re Thinkするアプリ」は何気なくしてしまうリツイートや、一時的な感情から発せられる言葉も防いでくれるかもしれない。だから、そのアプリに対して、あるいはそれを考え出した人を批判する気持ちは全くない。

でも、ちょっと待てよという感じ。

アプリにやってもらうことじゃないだろうという違和感?
人間のマナーってなんだという違和感?
技術が作り出す問題を新たな技術で補うイタチごっこの中に人間の不在が見えてしまう違和感?


土俵が少しズレるかもしれないが、羽生善治氏がNHKのインタビューの中で次のようなことを語っていた。

AIの機械学習で「敵対的生成ネットワーク」という技術があります。たとえば、二つのAIがあって、Aには偽札をつくらせ、もう一方のBには偽札を見破る警察官の役割を担わせます。
すると、Aはどこまでもひたすらに精巧な偽札をつくり、Bはそれを見破る技術をどんどん高めていきます。
こうして二つのAIは互いに高度な能力を獲得していきますが、はたして高めるべき能力なのかどうかの判断は、倫理観の問題になってきます。(中略)AIの登場によって、人間の本質的な部分への問いかけがもたらされているのではないかと感じますね。

NHKHP

わけのわからない堂々巡りの迷路の中にいるような違和感?

道具の「道具」に成り下がっていない?
本質はどこへ行った?と。

怒りは数秒我慢するだけで消えて行くと言う。
5分置いて一度読み返せば己の愚かさに気づけるだろう。

夜中に書いたラブレターを朝になって読み返す・・その猛烈な恥ずかしさを経験したことのある人には、一時の感情の高まりが、いかに「自分」と乖離した「自分」を存在させているかがわかるに違いない。

ふざけた話に聞こえるかもしれないが、やはり、若者はメールやLINEで語るのではなく、ラブレターを書く必要があるだろう。
相手の顔を思い浮かべ、自分の言葉がどう相手に受け取られるか、悩みながら言葉を選び、己の字の拙さを思い、幾度も消しては書き直す・・ポストに入れたらもう取り返せない・・自分の言葉を鍛え、自分の言葉に責任を感じる良い訓練になるに違いない。

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恋文を Re Think しているか、猫


■土竜のひとりごと:第221話


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