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2024年1月の記事一覧

残照 《詩》

残照 《詩》

「残照」

深く歪み堕ちていく太陽の残照

明け方の空に浮かんだ薄い三日月

苛立ちの影が繰り返す
不規則な循環

淀みを含んだ

ある種の流れを暗部が包み隠す

其処にある秘密を知っているのは
僕と君だけだった

今 記憶や想い出が
ゆっくりと老いてゆく

静かなる一幕の幻影

マーマレード 《詩》

マーマレード 《詩》

「マーマレード」

薔薇の模様の透かし彫りのカーテン

揺れた気がした 閉ざされた窓

きっと気のせいだ

明かりの灯って無いシャンデリア

それは何処か悲しみに似ていた

夜の翼が見えない糸を作り

その細い無数の糸が
僕を縛り付けていた

此処はいったい何処なんだろう 

独り呟いた

忘れなさい 誰かがそう答えた

確かに聴き覚えのある女の声だった

ホットウィスキーに
スプーンですくった

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彩花 《詩》

彩花 《詩》

「彩花」

咲きたくて 

咲きたくて 

もう一度 綺麗に咲きたくて

貴方の首筋で 

胸元で 

その唇で 

小さな想いが静かな恋に変わり 

恋が愛に咲き変わる夜

僕の傍で 

心の中で咲き続けるひと

溶かし合い 

受け入れ合い 

この身を束ね 

ふたりの色彩で染まる花びら

もう一度 綺麗に咲きたくて

頭上の星 《詩》

頭上の星 《詩》

「頭上の星」

僕は何処まで行っても僕であり

彼は彼であり

彼女は彼女であり続ける

陰が陰であり 

陽は陽であり続ける様に

川は理由も無くただ流れている

動かない水が流れを持つ時  

始めて生きている意味を知る

想像力の範囲を超えた物語は

いとも簡単に圧殺され

暗闇の中で彼が僕に話しかける

戦場で眠る 
兵士の頭上にも星は輝くと

僕が僕で
あり続ける事に気が付いた時

彼も

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不実な雨と小さな同意 《詩》

不実な雨と小さな同意 《詩》

「不実な雨と小さな同意」

低く暗い雲が

空を覆い垂れ込めていた

憂鬱そうに傘をさして歩く人

彼女は僕の唇に人差し指を置いて
全てを閉じ込めた 

不実な恋人がそうする様に

彼女は静かに目を閉じて…

そう言った

僕は小さな声でうなずいた

空っぽの空間に

何かが
流れ込んで来るのを感じていた

些細な現実と不必要な寄り道と

その遠く先に見える降り出した雨

いくら探しても
見つから

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MISIA 《詩》

MISIA 《詩》

「MISIA」

夜に咲く白い花 

濡れた星明かり

月夜を渡る風の音 

正確に時を刻まない

狂った時計と

時の概念を必要としない
蒼くて細い三日月

非現実的で不思議な光を放つ星達が

花びらを照らす夜  

その花には輪郭が無く

影を持たない事を

僕は知っていた 

本当は怖いんだと君は小さく囁いた

逢えなかった夜を悔やんではいない

通り過ぎて行った赤いアウディ

夢に花 花に

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遺書 《詩》

遺書 《詩》

「遺書」

淡い色調の風景が淡々と
場面の転換も無く続く

切れ目なく流れる

エンドレスミュージックの様に

深い本心を語る彼女の穏やか声 

そして遺書

心に抱えた小さな地獄に感謝した

それを知らない人には
小さな幸せに気付けない

奇妙な空白に名前の無い風が吹く

覚醒の手掛かりを失った夢

深く椅子に腰掛け 

片足を切落とされた
幻覚の中で未来の夢を見ていた

古い手紙や日記 写真ア

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真白に輝く黒き羽根 《詩》

真白に輝く黒き羽根 《詩》

「真白に輝く黒き羽根」

僕は彼女の小さな唇の動きを
見逃さなかった

ほんの少し口元が動いた

気のせいじゃ無い

君は夢の中で眠り続けている

悪い夢を忘れる事が出来ないまま

白く鋭利な刃の様な三日月

霞んで消えそうな星屑

闇に包まれた漆黒の夜

時は巡り時間は流れる

今は静かに太陽が燃える時を待つ

やがて生まれた
朝が眩しい陽の光を連れ

君を照らす

黒き羽根は光を帯び真白に輝く

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葡萄酒の上に浮かんだ月 《詩》

葡萄酒の上に浮かんだ月 《詩》

「葡萄酒の上に浮かんだ月」

秘密に縛られた心

その箱の蓋を開ける事は

貴方自身を物語の一部に取り入れて

ある意味での犠牲者にしてしまい

共有していかなくてはならない

そう 俯いて囁いた

深い沈黙が意味を帯び

彼女の語り始めた言葉を
注意深く拾い集めた

限定された空間の空にしか無い
観覧車が廻る 

ゆっくりと静かに

僕は彼女と共に其れに乗っていた

大きな運命の輪に結びつけられ

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冬の月光 《詩》

冬の月光 《詩》

「冬の月光」

逢う事の無い陽の光 

こだまし誘われ

僕は言葉無く ただ影を踏む

瞬く時は夜半の風と名も無き剣

疵跡ひとつ残さぬままに

あの鐘を鳴らし夜を迎える

冬の月光 生き延びた言葉 

記憶に留め

そして 影を踏む

真の慈愛をと叫び 

また 影を踏む