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散文詩

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#月

Good Luck 《詩》

Good Luck 《詩》

「Good Luck」

ソファーで猫が眠っている

アメリカンショートヘア

バルコニーから夜の海 

その上に琥珀色の月が輝いて

僕はワインの瓶を静かに開ける 

そんな風景を信号待ちの
サイドミラーの中に描いて

素敵な夜を想像していた

信号は青に変わり

僕はアクセルを踏み込む

時事的で複雑な
定義に溢れた街を走り抜ける

思想性は何処にあるの 

助手席の彼女はそう僕に聞く

多分

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神の月 《詩》

神の月 《詩》

「神の月」

起き忘れられた野心と色褪せた希望

空白に似た諦めが目に見える空を

無感覚に覆い尽くす

其処に浮かび上がる

薄い刃物の様な三日月は

失うべきものは何も無い 

命さえも そう静かに語る

何日も風の強い夜が続く

時々わけもなく涙が溢れた

だけどそんなに孤独じゃないよ

お前もそうだろう 
そう三日月に囁いた

俺は意識の枠の外側で

自分自身の神に触れる

お前達の神じゃ

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魔女狩りの詩 《詩》

魔女狩りの詩 《詩》

「魔女狩りの詩」

生きる事を目的として戦い続ける 

目には見えない

圧倒的な力を持つものが襲う

其れに相対する

救いに似た光を求めた

あらゆるものを  

ただ黙々と受け入れ

其処にあるものを

呑み込み全てを赦した

其の優しさに身を委ねた

僕等の時間が
それぞれの経路を辿り流れる

恐怖や希望

絶望の中に揺らぐ炎を見た

だが君は心の奥底で死を望んでいる

その流れがひとつに

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暗雲の隙間 《詩》

暗雲の隙間 《詩》

「暗雲の隙間」

雲が千切れる様に割れ

僅かな月明かりが射す

暗雲の隙間 

途切れ途切れの光が

僕の胸の中に隠された言葉を照らし

浮き彫りにしては消えてゆく

淡い青色の世界が訪れては消え去る

そして無音の漆黒が全てを包み込む

肉を削ぎ落とした骨格から発する

意識の放射が暗闇を貫く

其の凝縮された陰影を

網膜と脳裏に焼き付ける

僕は思考の切れ端を追い続ける

脳内の架空の白紙

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追憶の果て 《詩》

追憶の果て 《詩》

「追憶の果て」

細かい雨が降る 

雨は僕の目には映らず

人知れず
静かに音も無く地面を濡らしていた

其れは新しい季節の到来を 

意味している様に思えた

夢の無い深い眠りが

通り過ぎる足音が聴こえ

何かが僕の中で終わってしまった

そんな感覚を誤魔化し続けていた

もともとピースが
揃って無いパズルは

完成する事は無い 

わかっていた結末だった

雨に濡れた街に枯れた花を捧げ

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月の南 星の下 《詩》

月の南 星の下 《詩》

「月の南 星の下」

辛い時には幸せなふりをするの 

君の口癖

僕は瞳を閉じ耳を済ませ 

其処にあるはずのものを思い描いた 

ほんの少しの間だけ
手を握り合っていた

僕は世界に近づこうとしていた

近づきたかった 

その普通と呼ばれる世界に

僕は自分が自分自身であり

君は君自身である 

他の誰でも無い事に

不思議な安心感を覚えていた

彼等の創り出したものは いつも

僕や君を

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風と月と流星 《詩》

風と月と流星 《詩》

「風と月と流星」

消え残った星が

幾つか頭上に見える明け方

区切られた記憶の空に見えた断片 

あの夜 
流星が描いた線を思い出していた

束の間の儚い一瞬の煌めき

僕を呑み込み含んだその光は

限定された意識の窓に映し出された

命の微粒子で描かれた 

その光の線に

特別な絆と
強い親密感を感じ取っていた

白昼の街が備えた

祝祭的な色彩と太陽の明かりが

僕の中の非対称性を浮き彫

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細くて白い月 《詩》

細くて白い月 《詩》

「細くて白い月」

カーテンの僅かな隙間から

骨の様な細くて白い月が見えた

カフェオレとポテトサラダ 

スクランブルエッグとトースト

バターは付ける? 
それとも苺ジャム?

僕は煙草を咥えたまま 
バター そう答えた

彼女の部屋の

テラスからは川が見えた 

水面に映る歓楽街のネオンが見えた

朝は苦手だって そう彼女は言った

ユニットバスのトイレには

膣内を洗浄する

見た事も

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氷の月 《詩》

氷の月 《詩》

「氷の月」

事実と事実の

隙間を埋める幻想の様な夢

希望を込めた思考から来る妄想

それは罪な事なのだろうか

立体的でかつ
鮮明に浮かび上がる場面

些細な相違や乖離は
たいして重要では無い

複雑で複合的な心模様を紐解き

明確化する必要も無い

全ては自分自身の心の中にある 

変わり続ける多面体に反射する光を

追いかけ続けて息を切らした

氷で出来た月が溶け始める夢を見た

僕はた

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12月26日 《詩》

12月26日 《詩》

「12月26日」

部屋に飾った半分の月

夢中で探した自分自身の証

君と僕の答えなんて
聞くまでもない

同じ夜空を見上げて
同じ月に恋してた

わかるだろう

耳を澄ませてごらんよ

僕の声が遠くから届いたら
微笑んでくれよ

君の声が聴こえたら
僕は手を振るから

想い出を掻き集めて
十字を切った

失くした半分の月を
掴もうと手を伸ばした

夜明けはまた夜を呼び
夜は夜明けを連れて来る

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