協働プロジェクトの運営方法 ~人を惹きつける「進行感」【いちばん身近な協働論】
今回は、協働プロジェクトがスタートした後の、運営方法について考えてみたいと思います。
「協働企画の作り方」については、以下の記事をご覧ください。
以前の記事↓
1、協働の「進行感」という喜び
関わる人たちの声に丁寧に耳を傾けて立ち上がった協働企画を、プロジェクトとして運営し、少しずつ育てていく時、そこには目には見えずとも、皆を惹きつける「進行感」が発生します。
「進行感」という概念は、以下の書籍で、全体が前に進んでいくことで発生するものであり、組織のエネルギー源ともなり、一員であることに誇りを持つことができるようなものだと説明されています。
▼参考文献
とにかく仕組み化 人の上に立ち続けるための思考法 [ 安藤広大 ]
協働プロジェクトによる進行感は、新たな価値が生み出されていく喜びに満ちています。
必ずしも予定調和的ではなく、予想しない展開に戸惑ったりワクワクしたりしながら、プロジェクトが前に進んでいきます。
2、協働プロジェクトの運営方法
では、協働プロジェクトが進行感を持ち、関わる人たちを惹きつけ、有意義な成果を結実させるには、どのように運営すれば良いのでしょうか?
一番重要なことは、日々の小さなコミュニケーションの積み重ねです。
1)心理的安全性のある場づくり、関係性づくり
ちょっとしたことでも心に留めたり、飲み込んでしまうことなく、「伝えてみよう!」と互いに思えるような場や関係性は、前提として重要です。
これがなければ、形式的に指示を遂行するということ以外には、やり取りが難しくなってしまいます。
例えば、協働は対等に進めるものであるとは言え、組織間のパワーバランスが存在して、言いたいことを言わないでおいた方が良いと判断されてしまう場合も多々あります。
「伝えても大丈夫なんだ!」という、安心感ある対話の気風を醸成していくことが必要となります。
対等に、気軽に、雑談も含めて話ができるような土壌を育んでいくからこそ、その中で相手に耳を傾けたり、こちらの意向を伝えたりすることができます。
プロジェクトの進め方について意見が出たり、現状の満足度や不満もキャッチすることができ、改善策を一緒に考えたりもできるのです。
現場で見出されるすべてが、協働プロジェクトの枝葉となって育ってゆく可能性のある、小さな芽となります。
2)きちんとキャッチして、検討する!
注意深く協働の現場と接し、意見や意向など、新たな芽が見えたら、それを見逃さず、小さなことでも、しっかりと議論の俎上に乗せます。
例えば、「プロジェクトで訪れた地域に興味を持ったので、その場所の活性化に取り組みたい」というポジティブな発展であったり、逆に「費用の問題が新たに発生して、見直しが必要になる」という課題であったり。
本当にいろいろな種類の声が聞こえてきます。
興味を持って耳を傾け、相手の発言の真意を見極め、必要ならばすり合わせを行い、現状の枠組みの中で今すぐ可能なことか、今後の課題とすべきことなのか、丁寧に検討します。
相手の主体性を鼓舞し、背中を押すこともあります。
3)次の企画に落とし込み、制度化する。
協働プロジェクトが進み、その中から何か新たな動きが生まれ、それらが少し育ってきた段階では、今後に向けて新たな枠組みについて考えていくことになります。
特に、当初想定した計画の外まで枝葉が育った時には、今までの枠組みをブラッシュアップした枠組みの提案を考えます。
例えば、ある参加主体が想定していた役割以上の活躍をした場合、今後はその活躍に見合った役割を最初から想定した枠組みにしたり、トライアル的に実施してみたことに十分な効果が得られれば、今後は正式に制度の中に位置づけたり。
制度化することによって、新しい動きが途絶えないように守り、継承していくことにも繋がります。
3、協働プロジェクトが育つ時の「障壁」
以上のように、協働プロジェクトは安心して意見が言い合える環境の中で、さまざまな新しい芽を出しながら、常に新たな形へと進化していきます。
▶予定調和と異なる動きが発生する時
しかしここで、大きな障壁が発生します。「予定調和」と異なる動きが生まれた時に、理解が得られるかということや、一旦現行の枠組みにいかに位置付けるかという課題です。
当初の計画にない動きというのは、取るに足らぬものとして、もしくは、煩わしいものとして、排斥されがちです。
それこそ当初の計画通り、形式的に物事を進める方が、調整も必要ないので楽だと考える人たちもいるでしょう。新しいことを検討して、もめごとが起こるリスクもあるでしょう。
しかし、現場のさまざまなひしめき合いの中から生まれる新たな芽は、とても重要で、今後大きく花が咲く可能性を秘めたものです。
協働プロジェクトの運営の過程で、それら「大切な何か」を切り捨てることなく、ワクワクした進行感で関わる人を惹きつけ続けるために、出来ることは何でしょうか?
4、プロジェクトの「進行感」を叶え続けるために…!
▶立場の異なる主体間の思いの翻訳、調整
協働に携わる各主体は、それぞれ立場が異なります。それゆえ、ある主体にとっては重要な関心ごとでも、別の主体にとってはそうではない、ということがあります。
立場の異なる主体間の思いを媒介し、翻訳しながら双方に伝え、調整することは、協働コーディネーターの重要な役割となります。
▶大きな成果につながる可能性を説明する
協働プロジェクト運営の中で見出された小さな芽が、どのように大きな成果につながる可能性があるのかを、言葉にして説明することは、重要なことです。
飽くまで「可能性」なので、その芽は育たない場合もありますが、育ったとしたら、こんな素敵な花が咲くだろうなと想像力を働かせます。
そして、「育ててみたら意味があるのではないか?」という説明を、丁寧にすることが必要です。
可能性を言葉で可視化して示すことで、確証のない未来への相手の不安を和らげるということです。
そして、もしも小さな芽が大きく育った時には、それが最初は小さな芽から始まったのだと、きちんとプロセスを言語化・可視化して、広く発信することも忘れてはいけないポイントです!
そうすることで、今後の重要な前例となるからです。
▶そして「イノベーション」へ!
以上のように、協働プロジェクトを運営する時には、丁寧なコミュニケーションを取り、心を通わせながら、可能性の萌芽を存分に楽しみたいものです。
そしてきっと、十分に育った時に「イノベーション」と呼ばれることになるのだと思います。
※このnoteでは、各地での協働の推進を目的に、協働や協働コーディネーターについての一般論や考察、個人での地域との関わりなどを発信しています。(行政の職務上知り得た個別具体的な事例については書けませんので、ご了承ください。)
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