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複雑な世界の細部の遠さについて
大学生の時、統計力学の講義を初めて聞いて、なんていい加減なんだと思った。統計力学では、例えばある気体について考える。気体は無数の分子によって構成されていて、数グラムの気体は10の二十何乗というオーダー(0が20個以上ついているような桁数)の分子を含む。そんな膨大な数の分子について1つ1つ計算することは不可能に近いので、分子の集団全体がどのように振る舞うのかを考えて計算する。もちろん、これは天才的
もっとみるSmart Eye Camera、ブータンへ行く(5)
Smart Eye Cameraを置いて帰りたいと思った。もちろんそんなことはできない。省庁や眼科医の方々と一緒にプロジェクトを進めて行くのに、ある学校にだけ急にSECが置かれていては話がややこしくなる。各国にはそれぞれの医療にまつわる制度があり、僕達はちょっとややこしいそれらを無視することはできない。書類と会議の嵐を無視することはできない。
でもSECを置いて帰りたいと僕は思った。そこにはこ
Smart Eye Camera、ブータンへ行く(4)
「先生は未来に触れることができるからです」
映画「ブータン 山の教室 ( Lunana: A Yak in the Classroom )」の中で、「どうして先生になるのが夢なのか」と聞かれた子供はこう答える。僕は普段教育について考えることはあまりなく、正直なところ大文字の「教育」という言葉を少し疎ましくすら思っているのだが、このセリフは心の中を貫通した。
首都ティンプーに住む若い教師が、僻地
Everything.
広告くらいなんでも無いはずだった。
あれを買えだとか、これをしろだとか、魂胆は分かっているし、そんな手には乗らないと。
むしろ、社会を華やかに彩るという意味合いで、溢れかえる広告のことを好きだと思っていたこともある。今はどちらだとも言えない。広告を用いた企業による人々のマニピュレーションは強く社会をシェイプする。莫大な金銭と労力とクリエイティビティーが投入された、社会を覆い尽くす巨大なシステ
面倒くささというコンパスを使うこと
僕達は日々の生活で面倒くささを感じる。もうすっかり眠たくなった夜、心地よくまどろんでいるのに、洗面所へ行って歯を磨かなくてはならない、もうこのまま眠ってしまいたい。歯磨きなんて面倒だ、と思う。
面倒なことはやりたくないと思う。面倒なことなんてなくなればいいのにと思う。面倒くささはいつもネガティヴなもので、極端な場合、人から生きる気力を奪う。生きることに疲れた、楽しいことも、やりたいこともあるけ
無限の重ね合わせ状態とある光
洗濯バサミは戦闘機だった。畳の縁は道路だった。椅子は机は基地にも山にも何にでもなった。ミサイルが飛び交い、レーザー光線が発射され、爆発が起こる。人やロボットを模したおもちゃは話をし、考え、動き回って彼らの世界で彼らの物語を進めた。僕はその物語を眺めていたのだろうか、それとも僕自身がその物語だったのだろうか。
ある幻が醒めるということ。
ある幼さを失うということ。
何歳だったのかは覚えてい
KURUKUFIRLDS :03
今カルチャーを引っ張っているのは、音楽でもファッションでもなく、フードだ。
というようなことを「green bean to bar chocorate」の安達建之氏が言っていた( The Taste of Nature 世界で一番おいしいチョコレートの作り方 )。
確かにそうかもしれない。街には小綺麗なグラフィックデザインを伴ったコーヒースタンドやスイーツショップが、いくつでも増えていく。ま