【書評】老子の「あるがままでいい」は誤解されている! 『真説 老子』は必読の書!
ロッシーです。
『真説 老子』という本を読みました。
結論から申し上げると、これまで読んだ老子本で「イチオシ」です!
私は、昔から折に触れて老子を読んでいました。
中国古典が好きなので、論語、孫子の兵法、菜根譚、韓非子、荘子なども読みましたが、やはり老子に一番魅力を感じました。
自分の人生観にもかなり影響を受けていると思います。
老子を読むと、心が落ち着くんですよね。
「無理をしなくてもいい」「あるがままでいい」「足るを知る」といった内容は、仕事のストレスで疲れた心に沁みわたりますから。
ただ、「本当にそれでいいのか?」という思いもありました。
「無理をせず、あるがまま」でいたい。でも現実はなかなか・・・。
という人がほとんどなのではないでしょうか。
「すでに持っている」強者であれば、そういうことも可能かもしれません。
しかし、一般庶民は生活を維持し、家族を養うために無理をしなければならないわけですし、会社組織において「あるがまま」ではいられないという現実があるわけです。
「あなたはそのままでいいんだよ」
「無理しなくていいんだよ」
「頑張らなくていいよ」
これらの言説は、確かにとても聞こえがいいです。
でも、現実はそんなに甘くはありません。
給料が低くてもいい。
出世しなくてもいい。
お金がなくてもいい。
成功なんてしなくていい。
心の底からそう思えるのならそれでもいいのかもしれません。でも、なかなかそこまで達観できる人はいないと思います。
とはいいつつも、ときにはそういう「やさしい」言葉が欲しくなるのも事実です。ただ、それらの言葉は対症療法にはなっても、根本的な解決にはなりません。
普段の私達は、いわば論語的な価値観で動いていることがほとんどです。特に仕事ではそうです。つまり、「努力」「頑張る」「礼儀」によって立身出世をめざし世の中に貢献すべき、という価値観です。
でも、これはこれで確かにしんどい部分もある。だからこそ、それとは全く異なる価値観を提示してくれる老子の言葉は、清涼剤のように私達を癒やしてくれるのでしょう。
じゃあ、仕事では論語モードで、私生活では老子モードにすれば解決するのでしょうか?
誰もがそんなに器用なことはできません。それに、そのようなやり方では、老子が私生活にしか適用できない狭い思想になってしまいます。
老子のような偉大な書が、そんな矮小化されたものであるはずがない!
と思っている私としては、そのような納得のいかない思いを抱えていたわけです。
しかし、本書を読むことで、それが氷解しました。
本書は冒頭でこう言います。
「あるがままでいい」というのはウソだ!
「ええっ!!」
と驚きましたが、読み進めていくと納得のいくことばかりでした。
詳細は、ぜひ本書を読んでいただきたいのですが、本書では老子について
「処世・謀略の書であり、成功のためのリアリズムの書である」
という捉え方をしているのです。
これは、巷にある多くの老子本に共通する「あるがまま」的なスタンスとは対極的かもしれません。
でも、本書のように捉えたほうが、私自身が抱えていた老子に対する違和感が解決するのも確かで、私はその整合性のある説明に非常に腹落ちしました。
老子は単なる私生活にしか適用できない狭い思想ではなく、仕事にも、そして人生にも適用できる思想である、と捉え直すことができたのです。
老子は、「あるがままでいいんだ」「成功なんて意味ないよ」というスタンスをやさしく肯定する脱力系の本ではありません。
むしろ、成功をするためにどういう戦略、謀略、処世術があるのかをふんだんに述べているのが老子なのです。
しかし、論語のような直線的なスタンスで述べているわけではありません。
老子は、もっと曲線的というか老獪です。
あえて柔弱、無為自然のスタンスをとり、「愚」であることを装うことにより、「無事に」成功を目指すことが書かれています。
そして、成功した場合にはそこから退くことの重要性も書かれています。なぜなら、成功した立場に身を置き続けることは「死地」にとどまることになり、非常に危険なことだからです。
このように書くと、謀略的なものが嫌いな人は
「そんな老子の読み方は受け入れられない!」
と思うかもしれません。
もちろん、それはそれでいいと思います。人それぞれ老子の解釈があるわけですから。
でも、私は本書の立ち位置に非常に納得しました。
もともと、孫子と老子に類似性があることから考えても、老子というのは戦略の書と考えたほうが合理的だと感じていたからです。
老子は、なんだか深淵なことを書いてあるスピリチュアル的な本ではなく、もっと実生活において成功のために活用していく書なのだといえるでしょう。
「なんか成功を重視するなんて、老子らしくないなぁ」
と思うかもしれません。
でも、老子が成功を重視しているといっても、その成功自体がそもそも幻想だということは分かったうえで重視しているのです。
「幻想だから成功なんてどうでもいいよ」
という悟りきった態度をとるのではなく、幻想であっても、それを目指すことも是とするのです。
どんな物事だって、この世においては幻想です。
でもそれを言ったらオシマイです。
「幻想なのだけれども、あえて幻想ではないかの如く生きる。」
それが老子でいうところの聖人のありかたなのではないでしょうか。
完全に世間から隔絶した態度をとり、すべては虚しい、とニヒリズムに陥るのは、老子の目指すところではないと思うのです。
もし、これまでの「あるがままでOK」的な老子とは違う解釈に触れてみたい方は、ぜひ本書を読んで欲しいです。
私は本書を読んだことで、老子の捉え方が大きく変化しました。
もちろん、老子の解釈に絶対なんてありません。
でも、いろいろな老子の解釈に触れることは、あなたの世界を広げることになると思います。
本書を読了した今、ふたたび老子を読み返すのが楽しみでなりません。
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!
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