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記事集・H

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私は蓮實重彥(蓮實重彦ではなく)の文章にうながされて書くことがよくあります。そうやって書いた連載記事や緩やかにつながる記事を集めました。
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うつす、ずれる

うつす、ずれる

 今回は「何も言わないでおく」の続きです。見出しのある各文章は連想でつないであります。緩やかなつながりはありますが、断章としてお読みください。

 断片集の形で書いているのは体力を考慮してのことです。一貫したものを書くのは骨が折れるので、無理しないように書きました。今後の記事のメモになればいいなあと考えています。

書く、描く
「書く」のはヒトだけ、ヒト以外の生き物や、ヒトの作った道具や器械や機械

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ルビと約物と字面

ルビと約物と字面


ルビを振る、ルビに振られる
 ルビとは、主に漢字の横や上に小さな振り仮名を付けることだったようですが、いま「主に」と書いたように、ルビを振られる対象は漢字に限りません。私なんかへそ曲がりなので、本来とか、もともとというのが苦手で、そこからはずれたことをしたくなります。

 ぶれるわけですね。何かに触れて、つまり軽くぶつかって、その反動を楽しみながらちょっとよける感じ。ずらすにも似ています。ようす

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見えない反復、見える反復(反復とずれ・02)

見えない反復、見える反復(反復とずれ・02)

 人において、反復と「ずれ」(差違)は別個に起こるものではないし、対立するものでもないのではないか。そんな話をします。ややこしそうに聞こえるかもしれませんが、歌や詩を例にして具体的に話すつもりです。

見えない反復、見える反復
 唱歌「故郷(ふるさと)」(作詞:高野辰之、作曲:岡野貞)です。

 この歌では、ある反復が起こっているのですが、それは聞き取れるでしょうか? つまり、反復をずれとして聞き

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「カフカ」ではないカフカ(反復とずれ・05)

「カフカ」ではないカフカ(反復とずれ・05)

 名前は複製として存在します。文字であれば、複製、拡散、保存が簡単にできるし、名前は最小の引用でもあります。だれでも、簡単に引用できるのです。

 でも、ほんとうにそうでしょうか? 今回は、反復と「ずれ」を、名前で考えてみます。

最強最小最短最軽の引用
 名前は最強で最小最短最軽の引用です。なかでも固有名詞、とくに人名は最強で最小最短最軽の引用なのです。

 固有名詞の中でも人名や作品名にそなわ

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ヒトは動物園にいない

ヒトは動物園にいない

 動物園にヒトはいません。いるにはいるけれど、常時檻や柵の中にはいません。それはヒトが自分たちを動物と見なしていないからでしょう――。 

 今回は、上で述べたことをめぐって思うことを書いてみます。


 動物園にヒトはいません。いるにはいるけれど、常時檻や柵の中にはいません。それはヒトが自分たちを動物と見なしていないからでしょう。

 上の文章をいじってみます。

     *

 動物園に人

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わける、はかる、わかる

わける、はかる、わかる

 本記事に収録した「同一視する「自由」、同一視する「不自由」」と「「鏡・時計・文字」という迷路」は、それぞれ加筆をして「鏡、時計、文字」というタイトルで新たな記事にしました。この二つの文章は以下のリンク先でお読みください。ご面倒をおかけします。申し訳ありません。(2024/02/27記)

     *

 今回の記事は、十部構成です。それぞれの文章は独立したものです。

 どの文章も愛着のあるも

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