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TANKA

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現代短歌。過去や現在や未来のことを文字にする。漫然とだらだら書きたくなかったので、「素材:キャンバスにアクリル絵具」のような括りを文字の表現にも設けたいと思った。
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2020年10月の記事一覧

現代短歌 《想えば想うほど》

現代短歌 《想えば想うほど》

膨らんだ風船のようなこの想い破裂で届けば後悔もなく

いつだって影が見えればその姿あなたでないと分かっていながら

背の高い茶髪の男(ひと)は来なかった?何処にでもいるそんな野郎は

澄んだ瞳(め)が美化されてゆく脳内でかけ離れてもいいの綺麗なら

現在のことでありつつセピア色いつの日のあなた何処にいるわたし

分からない丁度良いくらいどれくらい加減を知りたい掌の上

サラサラと風に飛ばされ舞い上

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現代短歌 《思うは自由》

現代短歌 《思うは自由》

夜を呼ぶ街の景色は様変わり私は帰る「よい子」ですもの

眠れないこんな時間もまた一興浮かぶ言葉と微睡み戯れ

この場所をいつか乗っ取るつもりなのお前なんかに誰が付いてくか

正気には戻っちゃいけない勝つまでは自分の納得する戦法で

蕁麻疹出てきて教える危険地帯気付かぬふりして渡り歩けば

色の無い日々を過ごすも悪くないあなたを想うだけで鮮やかに

幸せになりたいなんて言う奴はその偶像を追いかけて死

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現代短歌 《知らなくていいこと》

現代短歌 《知らなくていいこと》

出来るだけ馬鹿なままでいてほしいのねそうねわかった空っぽ演じる

考えりゃ一つも得は無いのにさ角立てぬよう従う愚かさ

話さないそうさ言わずに書くんだよ掴んだことは決して離さぬ

生意気だ?大人しく見える私に騙されたのはお前のほうだよ

聞けるだけ聞き出してみれば出てくるわどれだけこちらが舐められているか

好きだねえ知っていることひけらかすあたしは煽てて情報を盗む

いつまでも同じ手口でいけるか

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現代短歌 《気持ち離れず》

現代短歌 《気持ち離れず》

あなただけ置き去りのままの日捲りがプロジェクションされ季節変わりゆく

将来の展望絶望希望などそのどれも聞けぬ明日は何処に

真上には雲の切れ間が今ならばまだ間に合いますあの先を目指せ

高架下ガラス張りの外見つめてはあなたの姿思い浮かべて

ここでなら何を言っても平気だわ列車の通過掻き消す冗談

走りゆく想いを筆にのせ続け消えない過去は塗り潰せないが

アルバムを繰り返し開く今は無駄それでもあの

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現代短歌《表面、裏面》

現代短歌《表面、裏面》

救済を求めた逆立ち意味もなく巣食うお前は厄介者だよ

「美味しいね」顔見合わせて言う台詞ごめんほんとは味がしなくて

裏地はね所詮裏地で表には出しては着れないあなたなら着れる?

靴下の色柄に見る明るさと着込んで隠した空っぽのこころ

「かわいい」と「かわいらしい」の狭間こそ褒め言葉だけど越えられぬ溝

お気に入りレインブーツが履けるかな?水たまり写る憂鬱な瞳

「優しいね」そう言われても胸の内渦

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現代短歌《夢追い》

現代短歌《夢追い》

醒めてなお消えること無き生き様がむしろ本番あとは走るだけ

掴み取るその手はひとつじゃなくたって構わないだろ生きていればこそ

見上げれば夜空に輝く一等星その先の景色観せたいから来て

さかな釣り垂らして待つだけそれじゃ駄目工夫凝らした餌こそ決め手

私にはネジがいくつか足りないのだから飽きないどこまでも行ける

肩書きが分野が何だと言われてもいいえ私はそこにこだわる

手のひらに星屑集めてガラス

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現代短歌《日々こぼれ落ちる》

現代短歌《日々こぼれ落ちる》

夢でみた魚になって泳ぐ君水槽の狭さ気になりつつも

時が経ちあなたの色がくすんでも私が汚れりゃ相乗効果で

坂道は上って下って歩くだけ今どの地点か分かりはしないよ

目を閉じて探してもあなた見つからず何処に居るのか雨粒を覗く

宝石のような瞳に映るのはいつも遠くの見知らぬ景色で

「分かり合う」などというのは不自然だ寄り添い互いを理解するのみ

やさしさは何かと問えば分からないやさしくなくても惹き

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現代短歌《一括りにできない想い》

現代短歌《一括りにできない想い》

曖昧なあなたのこころどこにある置いてきたのね遥か遠くへ

あまりにも日常として染み付いたあなたへの想いこすっても消えず

洗剤で幾度も洗えど落ちぬシミ堕ちた証拠として残り続け

本気なの本気じゃないのそんなこと言い争える程若くもなく

何度でも書いては出せず引き出しに入れては溜まってゆく紙切れたち

本当はアナログじゃないデジタルの恋文と呼べる重さも無いメモ

透き通る飴色に魅せられるたび思い出す

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