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わたしの愛読書 スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』を紹介

 今回は、わたしの愛読書である『グレート・ギャツビー』(または『華麗なるギャツビー』)について紹介したいと思います。
モダン・ライブラリーが発表した「英語で書かれた20世紀最高の小説」で第2位に位置づけられ、米文学の最高峰と呼ばれる『グレート・ギャツビー』。
 フランシス・スコット・フィッツジェラルド(以下、フィッツジェラルド)の代表作であり、1925年に出版された大ベストセラーです。
「アメリカン・ドリームの崩壊」 と 「ロスト・ジェネレーションの悲劇」 を描破した名作として、高く評価されています。

F・スコット・フィッツジェラルドについて

 1896年に生まれ、1940年に死去したアメリカ合衆国の作家です。第一次世界大戦後の「狂騒の20年代」を代表する作家として知られ『グレート・ギャツビー』、『夜はやさし』、『美しく呪われし者』などの作品で有名です。 これ以外にも、短編小説や論文なども多数執筆しています。彼の作品の特徴は、アメリカ社会の華麗な側面と陰の部分を巧みに描くことです。

 また、後世の殆どの作家に影響を与え、20世紀アメリカ文学の最重要人物の一人として称賛されています。 作家としての活動以外にも、脚本家や映画プロデューサーとしても活躍しました。

あらすじ

 物語は、1920年代のアメリカ、ニューヨーク郊外のロングアイランドを舞台に展開します。
 主人公(語り手)のニック・キャラウェイは、中西部出身の若者で、夢を追いかけてニューヨークにやってきます。ニックは、謎めいた大富豪ジェイ・ギャツビーの隣に住むことになり、ギャツビーの華麗な生活に徐々に引き込まれていきます。
 やがて、ニックはギャツビーが昔からデイジィ・ブキャナンという女性に深い愛を抱いていることを知ります。
 しかし、デイジィはすでに裕福な実業家トム・ブキャナンと結婚しており、ギャツビーの愛は叶いそうにありません。
 ギャツビーは、自身の出生でデイジィと結ばれなかった過去を悔い、莫大な富を築き上げて彼女に近づきました。
 しかし、彼の切なる想いは、トムの嫉妬や誤解によって悲劇的な結末を迎えてしまいます。

主な登場人物

ジェイ・ギャツビー  主人公。謎めいた大富豪。莫大な富を築き、奢侈な生活を送るが、過去に深い秘密を抱えている
ニック・キャラウェイ 物語の語り手。中西部出身の若者。ギャツビーの隣に住むことになり、彼の秘密に迫っていく。トムの友人であるが、徐々にギャツビーに引き込まれる。ギャツビーを一番愛したであろう男
デイジィ・ブキャナン ギャツビーのかつての恋人であり、愛する女性。美しく魅力的な女性だが、虚栄心が強い
トム・ブキャナン トムの友人であり、デイジーの夫。裕福な実業家。傲慢で乱暴な性格。トムの不倫相手マートルを轢き殺したのは妻のデイジィだが、ギャツビーに全ての罪をなすり付ける
ジョージ・ウィルソン マートルの夫。トムに妻マートルを寝取られ、嘘を吹き込まれた挙げ句ギャツビーを射殺、自殺する。貧相で頭が悪い
マイヤー・ウルフシャイム ギャツビーと共にあくどい仕事に手を染め、富を築いた成金ユダヤ人。社交界からは悪評が立っている

作品の特徴

  • 華麗さと虚無感 作品は、1920年代のアメリカを象徴するような瀟洒なパーティーや洗練された社交界の様子を描き出す一方で、その裏にある虚無感や絶望感を表現する

  • アメリカン・ドリームの崩壊 主人公のギャツビーは、アメリカン・ドリームを体現したような人物として描かれていますが、彼の夢は結局は破滅を迎えます。作品は、アメリカン・ドリームの幻想と、その崩壊を描く

  • ロスト・ジェネレーションの悲劇 第一次世界大戦後の世代である「ロスト・ジェネレーション」の悲劇を描いています。ギャツビーをはじめとする登場人物たちは、戦争によるトラウマや幻滅感に苦しみ、生きがいを見失っている。デイジィを取り戻すことだけがギャツビーの生きがいである

  • 2つの象徴 原作における” a single green light”(緑色の光)は、巨万の富を築いたギャツビーが本当に手に入れたかったものを象徴し(光なので見ることは出来ても、掴み取ることはできない)、眼科の看板”the eyes of god ”(神の目)はギャツビーやデイジィ、トムら虚飾にまみれた社交界の人間を裁く神の象徴と考えられる

評価

『グレート・ギャツビー』は、出版当時から高い評価を得ており、時代を超えて多くの人々に読み継がれています。フィッツジェラルドの代表作であり、アメリカ文学の最高峰とも称される小説です。

 また、何度も映画化されており、特に有名なものではロバート・レッドフォードやレオナルド・ディカプリオがギャツビーを演じきったことで知られています。2013年のディカプリオ版は記憶に新しいのではないでしょうか?
映画は原作におおむね忠実ですが、ところどころ違っているので比較してみるのも面白いでしょう。

『グレート・ギャツビー』は、アメリカ文学史上最も重要な作家の一人であり、その作品は時代を超えて読み継がれています。

 ぜひ、あなたもニックの視点で華麗なギャツビーの人生を見届けてみませんか?

翻訳について

  • 村上春樹訳

『ノルウェイの森』で主人公のワタナベが愛読している描写が繰り返されていたり、訳者も『ザ・スコット・フィッツジェラルド・ブック』を上梓するほど、気に入っています。

  J.D.サリンジャー『チャッチャー・イン・ザ・ライ』の翻訳は、かなりのハルキ文体でしたが、こちらではフィッツジェラルドの格調高い文体になぞらえ忠実に翻訳されています。ハルキストでない方にもおすすめです。

  • 野崎孝訳 

 新潮文庫から出ている野崎訳が、日本で最も有名な翻訳だと言えるでしょう。こちらは硬質な文体に一貫しています。翻訳時、日本では知名度のなかったフィッツジェラルドを、この名訳によって広めた野崎孝の功績は大きいですね!

 野崎は文庫化に際し、かなりの改訂を行っています。海外文学を通読されている方には、まずはこちらからおすすめしたいです。

  • ペーパーバック

 装丁には作品の象徴である” a single green light”(緑色の光)と”the eyes of god ”(神の目)が配されており、最も有名なアメリカ文学の表紙なのでは無いでしょうか?

 こちらのペーパーバックは海外の学校教育にも採択されているほどで、フィッツジェラルドの格調高い文章を楽しみながら英語学習が出来ます。

世界最高峰と称される『グレート・ギャツビー』を読んで、あなたも” Great”になりませんか?

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