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雑文ラジオポトフ

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今田の雑文です。
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2023年3月の記事一覧

ディズニーのマスクあります選手権

ディズニーのマスクあります選手権

シリーズ・現代川柳と短文 071
(写真でラジオポトフ川柳159)

 夏祭りの出店にお面を売っている店があった。きかんしゃトーマスやプリキュアといったわかりやすい面々(ダジャレ)が並ぶ中、ふと、目も耳も口もない真っ黒なお面が1枚飾られているのに気がついた。へえ、こういうキャラクターがいるのか。おもしろがって買って装着してみると、目の位置に穴が空いておらず、まったく視界が得られない。あわててお面を

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誰かいるほんとはみんな知っている

誰かいるほんとはみんな知っている

シリーズ・現代川柳と短文 070
(写真でラジオポトフ川柳158)

 文学作品で「霊感を得る」といえば「インスピレーションを得る」の意味だ。「人ならざる存在からのお告げ」といったニュアンスだろうか。たとえばどんな作品で使われていたか。さっそく「霊感を得る 小説」で検索すると、霊能力で大バトルを繰り広げるにぎやかな作品が大量にヒットした。

▼これまでの「現代川柳と短文」はこちらから

びっくりのリクライニング第二章

びっくりのリクライニング第二章

シリーズ・現代川柳と短文 069
(写真でラジオポトフ川柳157)

 座椅子の背もたれを倒しに倒していたら、いつからか完全に仰向けになっていた。天井にはわたしによく似た模様があり、そちらも仰向けに寝ているように見えた。床と天井がひっくり返り、わたしは模様を「見下ろしている」感覚になった。模様のほうは「見上げている」感覚になっただろう。

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空中におじさんだけが早く浮く

空中におじさんだけが早く浮く

シリーズ・現代川柳と短文 068
(写真でラジオポトフ川柳156)

 浮いているからおじさんだとか、地に足がついているから若者だとか、勝手な線引きをして決めつけるのはよくない。浮いている若者もいるし、地に足のついたおじさんもいる。両者が居酒屋で意気投合することもあるだろう。だから、自分の見方が決めつけたものになっていないか、定期的に確認してください。卒業おめでとう。そこまで言うと、校長は直立姿勢

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ひなたぐまボートでひかげぐまに会う

ひなたぐまボートでひかげぐまに会う

シリーズ・現代川柳と短文 067
(写真でラジオポトフ川柳155)

 ひなたぐまはひなたにいる熊だ。縁側に座り、老夫婦に出されたお茶を飲み、大福を食べ、のんびり過ごしている。寝床に戻るころにはすっかり陽が落ちている。湯呑みや皿が置かれたままの縁側に、今度はひかげぐまが座る。老夫婦は居間でテレビを観ている。「熊さん、次はいつ来るかなあ」「この時期は忙しいんじゃないかな。そのうち来るだろ」老夫婦の言

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夢で見た人を次の日殴るまで

夢で見た人を次の日殴るまで

シリーズ・現代川柳と短文 066
(写真でラジオポトフ川柳154)

 初めて人を殴る人、の身体はおもしろい。殴り慣れていないのである。逆に「人を殴り慣れている身体」もある。北野武の映画の登場人物がそうだ。殴ることだけでなく、拳銃の構え方や、あるいは暴力行為以外の日常的なふるまいにも、彼らは慣れている(ように見える)。つまり「お決まりの描写」の外し方を知っているということだろう。

▼これまでの「

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いいことがあったなかった消火栓

いいことがあったなかった消火栓

シリーズ・現代川柳と短文 065
(写真でラジオポトフ川柳153)

 消火栓からは大量の水が出る。それこそ湯水のごとく出る。はっきり湯水そのものである。火事を消すために必要だ。使いまくってほしい。やがて火事が消えた。よかった。ところで、鎮火に要した水の料金は誰が払うのだろう。そもそも料金は発生するのだろうか。というか「湯水」ってなんだ。意味が重複しているんじゃないか。

▼これまでの「現代川柳と

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ものすごい音が鳴ってたはずの場所

ものすごい音が鳴ってたはずの場所

シリーズ・現代川柳と短文 064
(写真でラジオポトフ川柳152)

 換気扇、飛行機、加湿器。注意して聞くとずっとなにかの音がしている。ときに、無音室を作るのはかんたんではないらしい。そしてしばらくそこにいると感覚がおかしくなるそうだ。へー。波の音、波の音、波の音。注意して聞かなくともさっきからずっと波の音がしている。豪華客船の一室。さながら動くリゾートホテル。開け放った窓から聞こえる波の音はど

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もういいよ配達亀にまかせよう

もういいよ配達亀にまかせよう

シリーズ・現代川柳と短文 063
(写真でラジオポトフ川柳151)

 漫画『るろうに剣心』に巨大な亀の甲羅型の盾を用いて戦うキャラクターがいた。魚沼宇水。原作では斎藤一の牙突で上半身を盾ごとちぎり飛ばされ壁に磔にされるという壮絶なラストを迎える宇水。アニメ版ではそのハードな描写は削られていた。真の宇水は隠されてしまったと言える。ぽっかりと空いた穴をわれわれはどうでもいい想像で埋めるしかない。あの

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鍵盤に血がしたたってファソラシド

鍵盤に血がしたたってファソラシド

シリーズ・現代川柳と短文 062
(写真でラジオポトフ川柳150)

 音楽と心霊表現は相性がいい。とくにピアノやパイプオルガンといったアコースティックな鍵盤楽器である。夜中、学校の音楽室から聴こえるピアノの音。怖い。これがバイオリンやフルートだとファニーな雰囲気になってしまうのはなぜだろうか。思うに、その楽器が鳴るのに「演奏者」が必要かどうかが大きい。たとえば、ピアノは鍵盤に血のしずくが落ちるだ

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雨どいの酒を飲んでは帰れない

雨どいの酒を飲んでは帰れない

シリーズ・現代川柳と短文 061
(写真でラジオポトフ川柳149)

 お酒、という言葉はいまではアルコール飲料全般を指すものだが、ときに日本酒を指して言うこともあるからややこしい。「お酒ある?」「はい、ビールにワインに焼酎、なんになさいます?」「お酒と言ったら日本酒に決まってるだろ!」と怒鳴られてしまう。決まっているのか。いや、仮に決まっていたとしても、なぜ怒鳴られるのだ。理不尽だ。「ビール瓶で

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ご飯って太るの? 夢はふくらむの?

ご飯って太るの? 夢はふくらむの?

シリーズ・現代川柳と短文 060
(写真でラジオポトフ川柳148)

 いわゆる「主食」について考えるとき、まず念頭に置かれがちなのは米とパンだ。しかし、より厳密に言うなら米と「麦」ではないだろうか。むろん厳密に言ったところでどうなるわけでもないし、わたしもべつに問題視してはいない。ただ、考えがあまりにパンから始まりすぎている気もする。思考の始点をどこに置くか。それはビジネスでも重要なことだ。と、

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クリスマス 髪は上から切っていく

クリスマス 髪は上から切っていく

シリーズ・現代川柳と短文 059
(写真でラジオポトフ川柳147)

 かつて通っていた美容室には店長と見習い美容師のふたりがいて、店長のほうがわたし好みの接客ををしてくれた。カット中、まったく話しかけてこないのだ。黙って一心不乱にハサミを動かすさまはまるで仏像を彫る仏師。やがて見習い美容師もカットを担当するようになったが、逆に彼はずっと話しかけてくるスタイルだった。がっかりした。仏師の無口っぷり

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からあげの意外な利用法200

からあげの意外な利用法200

シリーズ・現代川柳と短文 058
(写真でラジオポトフ川柳146)

 食べ物で遊んではいけない、という主張がある一方で、トマトを投げる祭がある。たしかあれはスペインの祭だ。スペインならなにをしてもいいということだろうか。いや、あるいは、トマトなら投げて遊んでもいいということだろうか。おそらくどちらもちがう。では、そこではなにが起きているのだろう。この問題を徹底的に考察していけば、あなたは宇宙飛行

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