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#読書

深読み 村上春樹の『風の歌を聴け』

深読み 村上春樹の『風の歌を聴け』

毎年ノーベル文学賞候補に挙げられる作家 村上春樹。

そのデビュー作『風の歌を聴け』は、発表から40年以上たった今も、多くの読者を惹きつけてやまない。

Haruki Murakami (1949-)

僕は村上春樹の作品を『スプートニクの恋人』しか読んだことないが、やっぱり偉大な作家の処女作というのは、とても気になる。

ここ一週間ばかり、僕は『風の歌を聴け』のことばかり考えているほどだ。

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シン・日曜美術館『夏目漱石の坊っちゃん』⑪

シン・日曜美術館『夏目漱石の坊っちゃん』⑪

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1989年5月某日(日曜)午後
藪蔦屋 りうていの間

次に語られるのは、母親の死後6年目の出来事だ。

まず正月に父親が卒中で急死する。

母親が亡くなった時と同様に、漱石は坊っちゃんに父親の死を追悼するようなことを一切させなかった。

「おやじが卒中で亡くなった」の一言で終わりだ。

4月に坊っちゃんは私立の中学を卒業し、6月には兄が商業学校を卒業する。

おそらく官立の東京商

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シン・日曜美術館『夏目漱石の坊っちゃん』⑨

シン・日曜美術館『夏目漱石の坊っちゃん』⑨

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1989年5月某日(日曜)午後
藪蔦屋

次に語られるのは、清(キヨ)さんの度を過ぎた「坊っちゃんへの妄信的な愛」についてだな。

まずは、清が坊っちゃんだけに色々と物を買ってくれる件。

散々非人道的な行為を繰り返しているくせに自分を正義感の強い人間だと思い込んでいる坊っちゃんは、清が兄には何も買ってあげていないことを指摘し、自分だけが得をするのは公平ではないと清に訴える。

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友の会会員が選ぶ「今年の3冊」DAY.1

友の会会員が選ぶ「今年の3冊」DAY.1

みなさん、こんにちは!ALL REVIEWSの由井緑郎でございます。

昨日の「ALL REVIEWS 友の会ってなんでしたっけ?」という記事から引き続き、今日から「ALL REVIEWS 友の会会員が選ぶ『今年の3冊』」がはじまります!

この企画、「今年の3冊」といっても、「今年発売された本」を対象にしているわけではありません。
ALL REVIEWSは新刊ばかりを追うサイトではなく、「優れた

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読売新聞社書評委員会経験者の本当にお勧めしたい本

読売新聞社書評委員会経験者の本当にお勧めしたい本

はいどーも、ユーマです。

先日1月10日にAPU(立命館アジア太平洋大学)にて出口学長の呼びかけのもと、読売新聞社書評委員会経験者の7名の方に来学していただき、推薦図書について私たちAPUの学生に是非読んでほしい一冊と、お気に入りの一冊を紹介していただきました!!

本記事<Part.2>では前記事<Part.1>の続編といたしまして、皆さんのお気に入りの一冊(対象を選択しないのであればお勧めし

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チンパンジーに勝つ「ファクトフルネス」思考(植田かもめ)

チンパンジーに勝つ「ファクトフルネス」思考(植田かもめ)

植田かもめの「いま世界にいる本たち」第2回
"Factfulness(ファクトフルネス)" by Hans, Ola&Anna Rosling(ハンス、オーラ&アナ・ロスリング)
2018年4月出版

「ファクトフルネス」とは、十分な事実に基づく考えだけを支持すること。

著者のハンス・ロスリングによるこの造語は、過度にドラマチックな世界観を矯正して、ファクト・ベースで考える世界観を指す。

チン

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