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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#最近の学び

宇宙飛行士は見た 宇宙に行ったらこうだった! (山崎 直子)

宇宙飛行士は見た 宇宙に行ったらこうだった! (山崎 直子)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 山崎直子さんご本人のTwitterへの投稿で知った本です。
 完全に児童向けのつくりですが、面白そうなので手に取ってみました。

 たくさんの質問に対する回答という形式なのですが、その質問が多種多様で恥ずかしながらこの本で初めて知った事柄も数多くありました。

 たとえば、その中からひとつ、「宇宙空間の温度」について。地球からの高度によっ

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教養としての「世界史」の読み方 (本村 凌二)

教養としての「世界史」の読み方 (本村 凌二)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 ありがちなタイトルですが、素直に釣られて手に取ってみました。

 時系列を辿るのではなく、「文明の誕生」「ローマの興亡」「民族の大移動」といったテーマごとに俯瞰的にトピック的史実の連関を論じていきます。

 さて、各論の中での気づきを紹介する前に、まずは著者本村凌二東京大学名誉教授の「歴史の捉え方」の基本スタンスについて開陳しているくだり

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嫌われた日本 (高島 秀之)

嫌われた日本 (高島 秀之)

 アメリカの雑誌「フォーチュン」は1930年代から40年代にかけて3回、日本特集号を発行しました。
 本書は、それら3つの特集記事を比較しつつ読み解くことで、戦時におけるジャーナリズムのひとつの姿を浮き彫りにしています。

 当時のフォーチュンの編集や執筆に加わっていたのは、ピーター・F・ドラッカー、ジョン・K・ガルブレイズ、ダニエル・ベル、アルビン・トフラーなどの錚々たるメンバでした。もちろん、

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吉田松陰と現代 (加藤 周一)

吉田松陰と現代 (加藤 周一)

 吉田松陰(よしだしょういん 1830~59)は、長州藩出身の幕末の思想家です。
 1839年、9歳にして藩校明倫館で山鹿流兵学を講義し、翌年には藩主に「武教全書」を講義するなど、早くから才能を認められていました。その後、江戸で佐久間象山の門下に入り密航失敗。投獄されますが、自宅謹慎中の1855年、長州の萩城下東郊に私塾を開きました。有名な松下村塾です。

 この塾で松陰が講じたのはわずか数年間で

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決断力 (羽生 善治)

決断力 (羽生 善治)

 著者の羽生善治(はぶよしはる)氏は、1970年生まれの将棋のプロ棋士です。1996年2月、谷川浩司王将を4勝無敗のストレートでやぶって王将位につき、25歳で史上初の7冠王(名人・王将・竜王・王位・棋聖・棋王・王座)という偉業を達成しました。

 私は、将棋は駒の動かし方ぐらいしか分からないのですが、勝負の世界で若くして王座についた羽生氏の「決断」についての本ということで手にとってみました。

 

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だまされる脳 (日本バーチャルリアリティ学会)

だまされる脳 (日本バーチャルリアリティ学会)

 バーチャルリアリティ(VR:Virtual Reality)をテーマにした「知覚心理学」の初心者向け入門書です。

 バーチャルリアリティとは、「コンピューター上に構築した環境の中で、視覚や聴覚を通じて、空間を移動したり状況の変化を体験したように感じること」で、仮想現実とも言います。
 体験者はさまざまな機器をつかって、仮想の対象をあたかも実在の対象であるかのように感じ、操作することができます。

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データの罠 (田村 秀)

データの罠 (田村 秀)

 この本の内容は、統計学に基づくサンプル調査の基礎を理解している人から見ると、あまりにも当たり前の指摘です。

 が、昨今のマスコミや行政等で実施され公表されている「世論調査」と銘打っているものの中に、「如何に、意識的もしくは無知によるノイズが混じっているか」という実情を、多くの具体例を示して明らかにしている点は評価できます。

 昨今のプライバシー意識の高まりや個人情報保護の動きは所与の前提とす

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手仕事の日本 (柳 宗悦)

手仕事の日本 (柳 宗悦)

実用の美 著者の柳宗悦(やなぎむねよし 1889~1961)は、東京生まれで民藝運動の提唱者として有名です。

 柳氏の説明によると、民藝は「民衆的工芸」の略語で一般の民衆が日常つかう実用品をさし、家具調度・衣服・食器・文房具などが含まれます。また、基本的に機械を使わない手作りの工芸品で、ひとりの芸術家による一品制作品ではなく、無名の工人の集団分業作業によって多量に生産され廉価で売られたものだとさ

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ゼロからわかる アインシュタインの発見 (山田 克哉)

ゼロからわかる アインシュタインの発見 (山田 克哉)

 以前、岩波文庫の「相対性理論」は読んでみたのですが、なるほどというのが1割程度、残りは(当然のごとく)よく分かりませんでした。

 今回は、タイトルに「ゼロからわかる」とある超入門書を読んでみました。
 超入門書と銘打っているだけあって、「どうしてそうなるのか」という根拠(ロジック)について、数式なしで、具体例をあげながら説明してくれています。とはいえ、物理学の素養のない人間(私)にとっては、や

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オシムの言葉 (木村 元彦)

オシムの言葉 (木村 元彦)

 私は小学校のころはサッカー小僧でした。今でもサッカーを見るのは大好きです。

 フォーメーションやシステムをあれこれ話題にする最近の戦術議論の中、「走る」というシンプルではありますがサッカーにおいて最も基本的な教えを厳しく実践するイビツァ・オシム氏は、以前から非常に気になる存在でした。

 これまでベストセラー系の本は、特にそれが旬の時には手を出さなかったのですが、この本は是非とも読んでみたいと

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般若心経 (玄侑 宗久)

般若心経 (玄侑 宗久)

般若波羅蜜多の響き 孔子や老子といった極めてポピュラーな思想家の著作は目にする機会が多いので、何となく「儒教思想」「老荘思想」とはこんなものかというイメージが浮びます。
 他方、東洋思想におけるひとつの大きな底流である「仏教」については、どうも「宗教」という色彩が強く、そういった先入観からなかなか触れる機会がありませんでした。

 このところ「武士道」「五輪書」あたりの流れから「禅」関連の本も読ん

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歴史を考えるヒント (網野 善彦)

歴史を考えるヒント (網野 善彦)

 網野善彦氏の著作は、このnoteでも以前「日本の歴史をよみなおす」をご紹介しました。
 そこでは、「百姓」という言葉の表わす実態がいわゆる「農民」ではないとの指摘から、江戸時代以前の日本が思いの外多面的な社会相を呈していたことを明らかにしていました。

 今回の本も、普段何気なく使っているいくつかの言葉の歴史的背景を辿ることによって、「多様な日本社会」の有様を平易に描き出しています。

(p14

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蓮如 (五木 寛之)

蓮如 (五木 寛之)

 「五木寛之氏」と「蓮如」と「岩波新書」という取り合わせが気になって読んでみました。

 五木寛之氏の本は、はるか昔、中学時代に「風に吹かれて」というエッセーをはじめ何冊か読みました。当時はちょっとした流行でした。

 さて、この本ですが、五木氏自らいわく「蓮如紹介パンフレット」とのことです。蓮如という不思議な魅力をもつ人物のアウトラインを、五木寛之流の関心と感性で辿っていきます。

 蓮如(14

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木のいのち木のこころ 天 (西岡 常一)

木のいのち木のこころ 天 (西岡 常一)

個性の木組み 著者の西岡常一氏は、世界最古の木造建築である法隆寺の修繕・解体の仕事を代々受け継いできた「法隆寺大工」の最後の棟梁となった人物です。

 その西岡氏が、法隆寺大工に代々伝わる「口伝」をもとに、その経験と叡智を記したのが本書です。

 西岡氏は、飛鳥の工人の叡智のひとつとして、「木の癖を見抜きそれぞれの違いを活かす木組み」を紹介しています。

(p4より引用) 私らが相手にするのは檜で

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