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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#岩波文庫

高峰譲吉文集 いかにして発明国民となるべきか (鈴木 淳(編))

高峰譲吉文集 いかにして発明国民となるべきか (鈴木 淳(編))

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつもの図書館の新着本リストの中で見つけた本です。

 高峰譲吉氏は、嘉永7年(1854年)生まれで、明治~大正期に活躍した化学者、実業家です。タカジアスターゼ、アドレナリンを発見したことで有名ですね。

 本書は、その高峰氏が自らの半生を振り返りつつ、研究・起業等への情熱を綴った文集です。
 研究者として、実業家としてアグレッシブに活躍

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老年について (キケロー)

老年について (キケロー)

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 久しぶりにいわゆる “古典” と言われるものを読んでみたくなりました。
 かといって、大著にトライする元気もないので、とにかく「薄めのもの」をと思い手にとったものです。

 ちょっと前に読んだ五木寛之さんの「折れない言葉」という本の中で、この本の一節が紹介されていたんですね。

 ご存じのとおり、著者のマルクス・トゥッリウス・キケロは共和

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山びこ学校 (無着 成恭 (編))

山びこ学校 (無着 成恭 (編))

(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)

 以前から気になっていた本です。

 戦後の教育に大きな影響を与えた著作だと評されていますし、当時の生活を知る民俗学的観点からも貴重な資料とも位置づけられているようです。
 本書に収録された詩や作文を書いたのは1950年ごろの中学生とのことですから、1935年ごろの生まれの私の父母とほぼ同年代ですね。

 自分の親や兄弟が出征し、自分たち自

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漫画 君たちはどう生きるか (吉野 源三郎)

漫画 君たちはどう生きるか (吉野 源三郎)

(注:本稿は、2019年に初投稿したものの再録です。
   この投稿以降しばらくはあっさりとした内容が続きます。)

 (注:2019年当時です)話題の本なので手に取ってみました。
 吉野源三郎氏の岩波文庫版の小説は10年以上前に読んで大いに感銘を受けた記憶がありますが、本書においても、やはりその中核はオリジナルからの引用部分ですね。

 もちろん吉野氏の原著に及ぶべくもなく、またその点は本書の著

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幕末遣外使節物語 ― 夷狄の国へ (尾佐竹 猛)

幕末遣外使節物語 ― 夷狄の国へ (尾佐竹 猛)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 会社帰りにときどき立ち寄る図書館の新着書の棚で目に付いた本です。

 採録されているのは、幕末、欧米に派遣された

の各使節団の記録です。

 そこには、訪問先にて、初めて日本人を見る当地の人々、初めて異国の人・風俗・文化に触れるサムライたち、それぞれの驚きの姿が鮮明に描かれています。

 それらの中には、当時の日本の社会慣習に対する懐疑を

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臨済録 (入矢 義高)

臨済録 (入矢 義高)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 中国唐の禅僧で臨済宗の開祖臨済義玄の言行を弟子慧然が記したものです。
 “語録”の中でも一定の評価を受けているものということで手に取ってみました。

 “語録”といっても「仏の教え」をベースにしたものですから、私のように最低限の仏教・禅宗の基礎的な素養すらない人間が読んでもやはり全く理解できませんでしたね。

 たとえば、“棒と喝のどちらが

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ブッダのことば ― スッタニパータ (中村 元)

ブッダのことば ― スッタニパータ (中村 元)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 仏教書のうちで最も古い聖典の訳ということで興味を持って読んでみました。

 一つ一つは短文ですが、注釈も含めるとなかなか読み応えがあります。
 短いフレーズといいながらほとんどが難解なのですが、中には稀に、スッと腹に落ちるフレーズもありました。

 たとえば、「賎しい人」について説いた章の中の一文。

 これは仏教がもたらしたインドにおける

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ある老学徒の手記 (鳥居 龍蔵)

ある老学徒の手記 (鳥居 龍蔵)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 著者の鳥居龍蔵氏は明治期の考古学者・民族学者です。
 小学校を中退し、その後独学で必要な語学や専門の人類学を学んだとのこと、そういった厳しい環境下においても国際的な業績をあげた在野の研究者の自伝です。

 鳥居氏の最初の強烈なエピソードは、尋常小学校を止め独習を始めるときです。そのあたり、鳥居氏はこう述懐しています。

 10歳に満たない年

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新訂 海舟座談 (巌本 善治 編)

新訂 海舟座談 (巌本 善治 編)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 かなり以前に「氷川清話」は読んだことがあるのですが、久しぶりの勝海舟関連の本です。

 勝海舟といえば、江戸末期、万延元年(1860年)に咸臨丸で渡米、帰国後は軍艦奉行に就任、その後、中核の幕臣として江戸城無血開城を実現。明治維新後は、参議・海軍卿・枢密顧問官を歴任し伯爵に叙せられた傑物です。

 本書は、晩年、明治28年(1895年)から

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月と六ペンス (モーム)

月と六ペンス (モーム)

(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)

 先に読んだひろさちや氏による「「善人」のやめ方」という本の中で、仏教の教えとサマセット・モームが著した小説の主題とを関連付けて自説を語っているくだりがありました。
 振り返るに、恥ずかしながら私は、モームの著作をキチンと読んだことがありません。というわけで、まずはと思い手にとった本です。

 読んでみると、確かに日本流にいうと「世間」との関

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恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (菊池 寛)

恩讐の彼方に・忠直卿行状記 他八篇 (菊池 寛)

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

 先に読んだ池内紀氏の「文学フシギ帖」で菊池寛氏の作品として「入れ札」が紹介されていたので、興味を抱き手に取ってみました。
 「恩讐の彼方に」などストーリーを知っているものもありますが、恥ずかしながら菊池寛氏の作品そのものを読むのは初めてです。

 本書に採録されているのは、「恩讐の彼方に」はもちろん、「忠直卿行状記」といった代表作に加え「三

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幸福論 (アラン)

幸福論 (アラン)

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

体の運動 昨年の未曾有の大惨事を契機に「幸せ」をテーマにしたいくつかの著作が小さなブームになりました。その影響も受けて、以前から一度読んでみなくてはと思っていた著作を、今回手に取ってみました。

 著者はフランスの哲学者エミール=オーギュスト・シャルティエ、「アラン」はそのペンネームです。

 本書は、フランス、ルーアンの「デペーシュ・ド・ル

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かもめ (チェーホフ)

かもめ (チェーホフ)

 偏食気味で良くないのですが、そもそも文学系の本を読むことは少ないですね。
 特に戯曲は、シェークスピアを除いてほとんど読んだことがありません。ここ1・2年ぐらいでは、アイスキュロスの「アガメムノーン」、泉鏡花の「夜叉ヶ池・天守物語」ぐらいです。ということで、恥ずかしながらチェーホフは初めてになります。

 この「かもめ」、後の「ワーニャ伯父さん」「三人姉妹」「桜の園」とともに四大戯曲と呼ばれたチ

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ガンディー 獄中からの手紙 (ガンディー)

ガンディー 獄中からの手紙 (ガンディー)

 本名は、モハンダス・カラムチャンド・ガンディー。
 言うまでもなくマハトマ・ガンディー(マハートマー=「偉大なる魂」)として知られるインド独立の父です。

 1930年、ガンディーはヤラヴァーダー中央刑務所に収監されていました。
 本書は、その期間中に、自らが設立した修道場で彼の教えを実践する弟子たちに宛てた書簡集です。
 実を言えば、今まで私は、ガンディーに関するまとまった著作を読んだことがな

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