見出し画像

沢山の思い出をモノクロのまま振り返る。

どうか、夢であってほしい。

今、僕は蛇のように曲がりくねった商店街を歩いている。そこは、もう僕が生まれた頃のような活気は見る影もなく、歩く僕に向けて瞼を下ろしては届かぬ思いを飛ばすだけであった。

しばらく歩くとひっそりと営業している店に出くわした。それは、昔おばあちゃんと散歩に行った際に買っていた饅頭屋さんだった。凄く懐かしい思いが胸に沸いて僕はそこで二つ饅頭を購入した。

僕は饅頭屋さんを後にして再び歩き始めた。
そして、ぶらぶらとシャッターの包まれた商店街をあてもなく彷徨いながら
僕は先ほど購入した黒あんの饅頭を袋から取り出した。

袋から取り出した饅頭は僕が小さいころから何も変わっていなかった。食べやすいサイズ感でそのくせ意外とずっしりとしている。本当に懐かしくて涙がこぼれそうになってしまった。

これを食べていた頃にはもう戻れない。今は、もう僕も大人になったし街も変化し続けている。こうして、散歩帰りに買っていた饅頭を一人で食べているのが何よりもの証拠だ。僕の思い出には未だにモノクロで描かれている物が沢山ある。

それから無心で商店街を歩いた。

辺りは次第に暗がりを見せていき、先ほど立ち寄った饅頭屋さんもシャッターが下りていた。それに続くようにぽつぽつとあった店たちも息を止めていった。僕の街の商店街に完璧な静寂が訪れてしまったのだ。

そいて、僕はまた一つ思い出した。昔このぐらいの時間に迷子になって両親に叱られたことを、そして叱られた後におばあちゃんが優しく慰めてくれたことを僕はまた涙を流しそうになった。僕は涙を浮かべた目で袋を見つめてはもう一つの白あんの饅頭に手を伸ばした。白あんはいつもおばあちゃんが食べていたやつだった。

そして僕は鮮明に描かれた商店街の朽ち果て方を横目にモノクロの饅頭をパクパクと貪りながら、もう作ることの出来ない思い出の重さを振り返っては静寂を切り裂くようにしておばあちゃんが待つ場所へと、僕は足を走らせていった。

毎日マックポテト食べたいです